本好きの秘密基地

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猫のお告げは樹の下で/青山美智子 ※後半少しネタバレ含みます

今回は、青山美智子さんの『猫のお告げは樹の下で』を紹介します。

未来屋小説大賞入賞の作品です。

青山美智子さんの『木曜日にはココアを』を読んでから1作目にして好きになりました。ひとめぼれ。(再読したらこちらも記事にしますのでお楽しみに)

話の構成のおもしろさと、短い話の中に感動や教訓を教えてくれたり、でもきれい事を並べている感じもなくて、すんなり心に入り込む作品を書く人なんです。押しつけがましくない。待ってました、こういう作品書いてくれる人!

 

目次

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あらすじ

ある神社に訪れた悩みを抱える人たちが、そこで不思議な猫に出会い、悩みを解決してくれるようなヒント(葉っぱに書かれたお告げ)を授かり、日々を乗り越えていく連作短編集です。

 

感想、考察

前作に引き続きおもしろい構成でした。全話ではないですが、前の話に少しだけ出てきたモブキャラが次は主人公。その逆も。各話にちょこちょこ出てくるんです。あ、この人さっきの! って。

モブキャラにも人生がありますからね。1話ずつスポットライトを変えていく感じ

 

そして今回は個人的に『木曜日にはココアを』よりも感動する話が多かったです。

短い話なのに何度か鼻の奥がじーんってしました。ぎりぎり涙は出ていませんが、うるうるする一歩手前でした……!

私もこの猫ちゃんに会いたい。そしてお告げをもらいたい……!

 

※ここから先はちょっとネタバレが出てきますので、知りたくない方はご注意ください!

 

[一枚目]ニシムキ

恋する乙女は大体通る道ですね。

それよりも私はおばさんが素敵だなと思いました。素敵な感性の持ち主。

おばさんの持論が素敵だし、西向き部屋の良さの気づきも感性があるからなんだろうな。西の空かあ……。想像しただけでもう綺麗。

おばさんの「私はね、この空を買ったの」ってセリフ、まじかっこいいし感動しました。(話が逸れるけれど私も寒がりなので、西向きのお部屋にしようかな)

想い人を忘れられない主人公に対して

「誰かを好きになるって、その人が自分に混ざるってことだもの」

本文P30より

わかる。なんか自然と相手と同じものに興味を持ったり、仕草が似てきたりしますよね。その人の事を観察するから影響受けるのかな。

第一話から急にグッとくるお話でした。これは絶対に読んだ方がいい。

 

[二枚目]チケット

最初は微妙かなと思ったが、でも終盤から目頭が熱くなりました。これも短いのに感動しました!

主人公、最初は亭主関白頑固オヤジ系っぽくてイラってしました。内心はどうにかしたい。不器用ながらに考えを改めて歩み寄っていこうとする姿にほっこりしました。

最終的に娘と一緒になってはしゃぐのかわいすぎるよ、お父さん!

「会ったこともないくせに」なんて言ってごめんな。お父さんもそうだった。忘れてた。お母さんのおなかにおまえがいるって知ってから、おまえに会うのがすごくすごく楽しみだったよ。大好きだって思ったよ。会ったこともないくせにな。

本文P79より

お父さーーーーーーん!泣

もう全世界のお父さんに読んで欲しい。アイドルなんて……って思っている人にも。

お母さんも良い役しているんです。助演女優賞贈りたいです。(演じてない)

 

[三枚目]ポイント

主人公の気持ちわかります。

「ポイント」っていろんな意味があるんですね。私は「重要」の意味が浮んだのですが。主人公が思っていた「ポイントカード」でもなく「今の自分の現在地」の事を指していたらしい。目的地(進路とかやりたい事)じゃなくて、まずは今の自分を知る事が大事だと猫さんは教えたかったのかもしれないです。

 

[四枚目]タネマキ

これも二枚目と同じ感じです。個人的に一番感動したかもしれません。

この主人公も亭主関白系頑固オヤジ系。その性格のせいで大事なものを失ったり失いかけたり。でも息子のお嫁さんが良い人!

じつはお嫁さんは……っていう驚き展開もおもしろかったです。

ここでの教訓は言葉にして伝える事、コミュニケーションの大切さ

言葉にしないと本当の気持ちは伝わらないし、勘違いが起きてこじれたり。わかっていてもなかなか難しいね。

「種って本来は、勝手に飛んでいって親の知らないところで勝手に咲くもんでしょう。あたしだけじゃない、きっとあの店に来てた子どもも大人も、今ごろどこかで好きなように花を咲かせてるよ」

本文P177より

猫さんのお告げは、植物の種蒔きじゃなくて今まで無意識に蒔いた希望や夢の種がすぐ側(お嫁さんの中)で芽吹く意味だったのかな。他のもおじいさんの知らない所できっと。

 

[五枚目]マンナカ

自分の好きな物を悪く言われたくなくて、傷つけられないために隅っこで居心地の良さを感じる主人公くん。ちょっとわかる。自己主張苦手さんあるある

お告げは真ん中に行けという。でも怖くて行けない。

自分のいるところが真ん中。自分が本当に思う事が真ん中。自分の中の真ん中。それが、この世界の、真ん中だ。

本文P226より

自分が真ん中と思えば、そこが自分の世界の真ん中。もっと自分の好きな物に、考えに自信を持ちなさいという事なんだと私は感じました。

猫さんは自分らしくいなさい、自分を貫き通しなさいと言いたかったのかな。

 

[六枚目]スペース

何事もこれが大事です。私もそう。

「わたしたちは生きているかぎり、他者からの邪気をキャッチしたり、ネガティブな感情を抱えてしまう。そのつど、あなたの中のスペースをきれいにすればいいんです」

本文P273より

体や心に余裕がないと上手くいかないし閃きもない。だってスペース(余裕)がなければそこに新しく入ってくるはずのものが入らないから。神様も入ってこれない。

 

[七枚目]タマタマ

スガキヤ懐かしい。私もよく部活終わりに行ってました。安くて美味しいんだもん。(他県の方には何故か不評)

クロベエの話、素敵でした。

エネルギーの荒魂、平和や献身の和魂。この二つの使い分けが人生を変えたりする。どちらも大事。

主人公は、お告げ前は荒魂(派手な活躍)を使って、それに疲れている時にお告げを貰う。その後は和魂(匿名でひっそり、必要としてくれる人にだけ仕事をする)を使う。

再会や偶然の出会いという「たまたま」に助けられ、二つの「タマ」を使いわけるというお告げだったのかな。そう解釈しております。

 

ここだけの話

この7話に出てきた人たちのその後を宮司さん視点で語られます。

どの人たちもキラキラした日々を過ごしていてほっこりしました。

そして宮司さんの語り口調が優しいから、こちらまで優しい気持ちになれます。

宮司さんが受け取ったお告げも素敵。

なんか頭の中にBUMP OF CHICKEN『プレゼント』って曲のフレーズが浮びました。

 

最後に

短編集という事もありましたが、短い中にいろんな感動がたくさんで記事が長くなってしまいました。それでも最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

青山美智子さんの他作品もマイペースながら読んでいきたいです◎

写真:浅むし茶『やぶきた』、上生菓子『手毬花』をお供に