本好きの秘密基地

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君のクイズ/小川哲 ※ネタバレ要素あり

今回は小川哲さんの『君のクイズ』を紹介します。

帯に伊坂さんや新川帆立さんなどが推薦コメントを寄せているのを見て、ずっと気になっていました。

さらに王様のブランチやananなどのいろんなメディアでも取り上げられているのだとか。

本屋大賞にノミネートされたので、もうこれは我慢できない!(買うの我慢していた)

という形で、手に取りました。

いろんなかたが絶賛しているこちら、期待値が高めです。

 

目次

 

あらすじ

クイズ番組「Qー1グランプリ」で決勝に進んだ主人公。

接戦だったが、対戦相手が最終問題で問題が読まれる前にボタンを押して正解し、チャンピオンとなる不可解な事態が起きた。

彼はなぜ問題を1文字も聞かずに正解することができたのか。

 

感想

クイズやクイズ番組に対する印象がだいぶ変わりました。

クイズ番組がテレビで流れているところをたまに目にしますが、こんなに奥深いものだったとは

単純に、問題を聞いて、わかってからボタンを押して答えているのだと思っていました。

問題文の中にある確定ポイントが出た瞬間に押す。

はっきりとした答えが出ていなくても、わかりそうだったら押す。押してから頭の選択肢を一つに絞って解答する。

相手に押させない。

問題が読み上げられてからボタンを押すまでの、ほんの一瞬で、これらのことを考えて、頭の中で巡らせ処理し、反射的にボタンを押す。

コンマ数秒の世界で、彼らは確定ポイントを相手より早く特定し、押し勝つ。

私には無理だ。(とろい性格なのです)

クイズプレイヤーの戦い方をここで知って、彼らのクイズのストイックさに、クイズは立派な競技と認めざるをえないです(認めたくなかったわけじゃない)

そして主人公は何をするにも日常でちょっとした疑問があると、頭の中でそれをクイズにして流し、ボタンを押して答えるという妄想をしています。

この人は自分に、何を伝えようとしているでしょう?

この人はバイキングで何を取りに行くのでしょう?

こうしてみると、日常はクイズで溢れているなと思います。今この空間にも大小さまざまなクイズが漂っているということです。

疑問に思うことはクイズなのです

クイズに親近感が湧きます。

クイズに正解するということは、その正解と何らかの形で関わってきたことの証だ。

本文P144より

生活する中で目にしたもの、考えたもの、好きなもの。それと関わってきているから、そのクイズに正解できるのですね。小さなことにももっと目を向けようと思います。

 

クイズオタクである主人公が、自分はなぜクイズを楽しんでいるのかと考えた時に出た解答がこちらです!

クイズに正解することが、そのまま僕の人生を肯定することに繋がっていたからだ。

本文P159より

人生で関わったものを解答するとピンポンと肯定してくれる。解答と一緒に、その解答と関わって生きてきた人生そのものもピンポンと言われている気がする。自己肯定感が高まりそうです。

 

お話の中でいくつものクイズが出てくるのですが、私の知らないことばかりでした

迦陵頻伽(かりょうびんが)なんて初めて聞いたし、伊集院光さんの「深夜の馬鹿力も知りませんでした。

乳離れは「ちばなれ」と読むことに衝撃を受けたり。(読み間違い気をつけよ……)

どれも興味を惹くもので、雑学や知識が読んでいるうちに身に付いたり、気になったりしておもしろいです

でも豊富な知識だけではクイズは勝てない。それをいかに相手より早く頭の中で検索できるかが大事なのだそうです。

クイズとは、クイズの強さを競うものだ。クイズの強さとは相手に先んじて正答を積みあげる強さだ。

本文P91より

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※ここから先は「問題文を1文字も聞かずに正答を放つことができたのはなぜか」という謎についてのネタバレ要素が含まれます。謎を楽しみに取っておきたい方はスルーしてください。

 

Qー1グランプリ最終問題で、問題が読まれる前に正答を繰り出した彼。

なぜ問題文を1文字も聞かずに、正解を答えることができたのか

これがこのお話の主題であり、最大の謎です。

ヤラセ説しか考えられなかった私。

でも主人公が少しずつ、彼の出演する過去のクイズ番組やQ-1グランプリの録画を見返して、彼を研究していくうちにヒントが見えていきます

その時点でも、やっぱりヤラセ説しか考えられない私。

そしてその謎が解けた時(え、これ謎解けるの!?)

クイズ番組の敏腕総合演出家の計らいに、からくりに、びっくりしながらも、なるほど腑に落ちたという感心の気持ちが出ました。

うまいこと舵をきっていたのね。コントロールしていたのね。

 

そしてその演出家の計らいに気づいていた天才な彼は、演出家が絶対ある問題をどこかのタイミングで出してくると予測していた。

最終問題まで来て、ここで出題されるだろうと読んでいたから、問い読みの口の動きを凝視した

思った通りの一文字目の口の動きに確信し、ゼロ文字押しを決行した。

というのが、不可解な状況を生んだこのお話の謎の真相だったのです。

だとしても、主人公には答えられないようなローカルな問題だったのに、なぜわざわざヤラセと誤解されるようなタイミングで押したのか

それは、彼の次の事業を成功させるために知名度や爪痕を残すのが目的だったからだそうです。要はビジネス戦略。

正解が仮に外れても、ゼロ文字押しという斬新な行動によって目立つ

正解してもしなくても成功なのです。

主人公よりも更に上を行く、クイズの読み方

クイズって単純じゃない。深い。深すぎる。

 

最後に

クイズミステリーという新感覚のお話でした。

クイズプレイヤーの凄さがとても伝わる作品でした◎

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