今回は殊能将之さんの『鏡の中は日曜日』を紹介します。
第2回本格ミステリ大賞候補作です。
『ハサミ男』が衝撃的で、殊能さんの他作品も読んでみたく、まずは私の好きな北見隆さんの表紙であるこの作品を!
後になって知りましたが、こちらシリーズものだったらしく、でもまあ良い。どこから読んでもわかるでしょ。
目次
あらすじ
14年前に起きた既に解決済みの梵貝荘事件を再調査してほしいと頼まれた探偵の石動戯作。
調査の最中、石動は殺された。
でも石動はここに生きている。
14年前の推理は本当に間違っているのか。
冒頭のアルツハイマーの人物は誰なのか。
そして石動が殺されたことになった経緯とは。
続編『樒/榁』も収録。
感想
またしても! またしてもスカッと騙されたぜ!!
『ハサミ男』で学習しなかったのか私はあああああ!笑
大興奮です。こんな騙され方されたらもう、嬉しい悲鳴が止みません。
笑っちゃうよ。こんなの、笑っちゃう。
そしてユーモアたっぷりでおもしろい文章もご健在。
殊能将之さんの虜になったことを、ここに宣言する。
殊能将之さんが亡くなられていることが、とにかく悔やまれますが、まだ未読作品はあるから希望は潰えていません。うん。
まず、第一章「鏡の中は日曜日」の異様さに不安感と好奇心が掻き立てられます。
え、なになに。一体これは何。
読み進めて徐々に感づく。
主人公はアルツハイマー病なのだと。
アルツハイマー病の人の世界なのだと。
鏡の中から何者かが、過去の事件を思い出せと語りかけてくるシーンなんかは、さらに魅惑的な謎に誘われているようで、じらさないで教えておくれ〜とウズウズしてしまいます。
そして思い出したかは置いといて。(置いとくんかい)
なんと、とんでもない新たな事件起こしちゃうのよ。(なかなかのすごい悲鳴ものです)
待ってくれよ。第一章にして、あなたもう殺されちゃうの?!
新しい。冒頭の方で主役級が殺されちゃうなんて、今までにない。
こっから先まだまだお話ありそうだけれど、どうなるの?!
第二章では、名探偵石動戯作に例の梵貝荘事件の再調査依頼があり、事件の詳細が現在と過去を交互に行き来することで見えていきます。
動機おもしろいけれど、これ、間違った推理なんでしょう……?(再調査依頼ってことは、そういうことでしょう?)
そしてついに、石動が殺されて……!?
はい、第三章は驚きの連続です。
私のあの興奮状態は、この章の全てが原因です。
ここのことに関してはネタバレ区域にて!
『樒/榁』
『鏡の中は日曜日』の続編にあたる短編です。
「しきみ/むろ」と読みます。どちらも植物の名前です。
お察しの方もおられると思いますが、木へんを取ると「密室」。そう、密室もののお話です。(遊び心最高)
個人的には『鏡の中は日曜日』が強烈だったので、この2篇はライトな読み応えでした。
でも、レベルはすごい。
その手があったか~と、またまた虚を突かれた気分。
そして水城と石動の交錯もおもしろいです。嬉しい気持ちになります。
※ネタバレ区域※
ここからはネタバレが盛大にありますので、未読の方は、読んだらまた来てね!
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おあずけにしておりました『鏡の中は日曜日』の第三章。
まず最初のドッキリがこちら。
石動生きてるの!? どういうこと!?
じゃあ殺されたの誰よ。なぜ石動が殺された錯覚が起きちゃっているのよ。
……身元は鮎井だと!? ますますなぜ!?!?
種明かしはこうでした。
梵貝荘事件関係者に話を聞くべく、全員に石動の名刺を送っていた。
その送られてきた名刺を、身元隠しのために鮎井が勝手に使用したため、加害者側は鮎井を石動だと思い込んだ。
なるほど、そんなからくりが……。
そして2つ目のドッキリがこちら。
奥さん、水城なの!? (智子じゃなくて!?)
いや待てよ。水城って男なんじゃないの……?
水城優臣、ではなく本名は水城優姫だったという。女を取って優臣、というわけか。
またもやられました。
鮎井がややこしくするから! こんなことに!!
ちなみにアルツハイマー病の方は、瑞門先生かと思っていたら、次男の誠伸の方でした。
だから「若いのに」って言われていたのね。腑に落ちた。
14年前の推理の方はおそらく正解ですね。
常軌を逸した動機。
もはや言葉遊びによって犠牲になったという、被害者のツイてなさ……。
『樒/榁』の「樒」編の密室トリックには唖然。
ただの事故じゃん!
というか被害者、運悪すぎじゃん。欲張ろうとするからよ!笑
寝てたら盗んだ斧が落ちてきちゃったって。
亡くなったからこんなこと言うの不謹慎だけれど、人騒がせな。
「榁」編は、意外も意外な目的で作られた密室で、こちらも人騒がせな事件。
自分の失態をカモフラージュするために、あたかも密室を破った時に破損したと見せかけるために。
まあ、誰にも危害が及ばなくて良かったよ。
最後に
殊能将之さんのすごさは『ハサミ男』だけではない。
こちらも負けず劣らずのおもしろい傑作でした◎
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