本好きの秘密基地

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私の命はあなたの命より軽い/近藤史恵

今回は近藤史恵さんの『私の命はあなたの命より軽い』を紹介します。

ずいぶん前に、表紙のゾワッとする美しさに惹かれて手に取ったこちら。

近藤史恵といえば、手軽に読みやすい系のミステリーの人という認識なのですが、こちらは重そうです。

でも、見た目に反してページ数は軽めなので、ちびちびと読んでいきました!

 

目次

 

あらすじ

もうすぐ出産を控えているというのに、夫が海外赴任へ。

急遽、里帰り出産になり、久しぶりに実家へ帰ると、仲良しだった家族の空気がおかしい

家族の間に一体何があったのか。

実際には本当に命は皆平等なのかを改めて考えさせられる、強烈ミステリー。

 

感想

300ページにも満たない、コンパクトで読みやすい内容の中に強烈な種明かしがどん、どどん、どどどん!

そして結末は、少しは光が差しそうな流れだったのに、最後の情景でぞわぞわぞわ…….

イヤミス好きには堪らないお話でした

同時に、同じ命なのに立場や状況によって重みが変わるという事について、今まで深く疑問に思わなかった事を恥じるくらい、考えさせられました。

わたしと美和との間にどんな違いがあるのだろう。十年ほどのねんれいのちがいとあ、相手と結婚しているということだけで、子供を宿したこと自体は同じだ。

なのに、わたしは親孝行な娘として扱われ、美和は親不孝だと罵られる。

本文P176より

言われてみればそうなんだよな。

命を宿す事はとても尊い事なのに、年齢や社会的地位、双方の間柄などが、この命は不適切だと、常識が言う

結婚している人でも、そうでない人でも、命を授かるという事象は同じなのに。

責任がどうのこうのって言われたらそれまでだけれど。

うむ。難しい……。

 

自分だけが知らない何かが、家族内で起きているという不穏と不気味さ

ちらほら、何かあったと窺える会話や空気が流れて、すっごく気になる。

もったいぶらずに、早う教えておくんなし!

焦らしに焦らされ、語られたその「何か」は、想像以上にインパクトあるとんでもない出来事たち

ああ、なんて刺激的な。

刺激的過ぎて、うっ……となったり、苦しくて、やるせない気持ちになったり。

でもそれが読み応えを生んでいるのです。

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とんでもなく濃い事件が明かされた後、なんだか幸せな時間が流れる展開に変わっていったので、なーんだ平和に暮らすんかい!って思ったのですが

(何がっかりしてるのよ、いいじゃなの平和で)

なんとなんと最後にとんでもなく意味深な場面……!!

これ絶対ドロドロ案件じゃん。

女が怖いって、そういうことか。

うん、これはたしかに怖い。

いくらいろいろ失って辛いアナタでも、さすがにそれはよくない。同情の気持ち返せ!(勝手に同情したのは私だ)

 

すごくおもしろく読んでいましたが、ひとつだけモヤっとしたことを挙げるとすれば

主人公、無謀すぎる。

妹を心配する気持ちはわかる。

でもアナタ、今の自分の状況を甘く見てないか?

自分だけの問題じゃないのよ?

アナタが今優先すべきは、お腹の子だと思うのよ!母親になるのだから!!そこは子を第一に考えて!!!泣

なんて、お節介にもそんなことを何度も感じ、モヤモヤしてしまったのでした。

 

最後に

読みやすくて、先が気になって止まらなくなり、種明かしは衝撃的で、それでは終わらず最後に違う種類の衝撃

思っていたよりもおもしろくて、大満足です◎

 

笑うマトリョーシカ/早見和真 ※ネタバレ要素あり

今回は早見和真さんの『笑うマトリョーシカを紹介します。

今期(2024夏ドラマ)ドラマ化されましたね!

ずっと温めていたのですが、ドラマ化を聞いて慌てて読み始めました。

原作を読んでから映像化作品を見たいのだ。

早見さんは『店長がバカすぎて』を読んだことがあって、そちらはコメディ系だったので、ミステリーな早見さんはどんな世界なのか楽しみです

ちなみにまだまだ冊か気になるものがある早見作品。

 

目次

 

あらすじ

周囲を惹きつける、話題の若き官房長官・清家一郎。

彼のインタビューをした道上は、清家に対して、ある違和感を感じる。

この男は、誰かに操られているのではないか。

清家一郎とは、一体どんな人物なのか。

”笑うマトリョーシカ”は誰なのか。

 

感想

いやぁ……、私の思考は完全に早見さんの思うツボでしたね。

早見さんの手のひらで転がりまくりました。

目がクラクラです。

ブレーン絶対こいつ!間違いない!!と自信満々に鼻息荒く読み進め、えぇ……!?となる。

一冊読むのに、このくだりを何度繰り広げたことか。(単純脳内による学習能力のなさ)

ドラマで清家を演じる嵐の櫻井翔くんが、この物語を「万華鏡のよう」と例えたことが、しっくりくる。

そして、なんて上品な例え方なのでしょう。

くるくる視点が変わって、くるくる見え方が変わる。

本当に模様がくるくると変わる万華鏡のような物語

これを刺激的でおもしろいと捉えるか、着いていけないと難しく捉えるか。私は前者ですが、人によって意見が分かれそうかなと思います。

頭脳系小説です。たぶん。

あ、でも前半は青春小説

正直その前半は退屈しちゃってダレちゃったのですが、第三部からは圧巻というか、もう目が離せなくなるくらい夢中になりました。

 

人間って多種多様な生き物ですが、このお話を読むと人間の心理って怖いなと感じます。

全員が登場人物みたいな人たちではないし、ほんの少数存在する程度なのはわかっているけれど……

マインドコントロールとか

コントロールしていると思ってたら逆にされていたとか

信頼されていると思っていたら表面上だけだったとか

容易い人物だと軽んじていたら足を掬われるとか

(やばいやばいネタバレになりそうだからここらで止まれ私!)

なんだか人間不信になりそうです。ホラーです。

でも、それだから人間っておもしろいのさ

蚊帳の外で、安全地帯で見ている分には。

とにかく、人間の心理の怖しい穴を見せてくれたお話でした。

そして冒頭の印象とは全然違う景色を見せられるのも鳥肌が立って楽しかったです

ゆっきーポイントを差し上げたい。(用途不明の謎ポイント)

 

作中に、深くグサっときたお言葉があります。

「僕には嫉妬こそが世界を狂わせるという持論があります。嫉妬が束縛を生んで、その束縛が憎しみを生み、憎しみが戦争を生むのだと若い頃から考えていました」

本文P213より

おぞましい負の連鎖。

本当にその通りで、ぞわぞわする名言でした。

嫉妬って身近な感情ですが、こんなにも怖しい連鎖に発展していく

こわいですね、嫉妬の破壊力

 

※ネタバレ区域・考察※

ここから先は、マトリョーシカ的複雑構造のまとめと考察を私なりに書いていきますので、自分で考えたい人は立ち入らないでくださいね!

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読んだ方は、いろんな謎が次々と入れ替わって混乱したことでしょう。

混乱なんてしなかったぜという強者は、優しい目で見ていってください。

 

清家を操っていたブレーン(笑うマトリョーシカ)は誰なのか

このお話一番の謎です。メインです。

はっきりと書かれていませんでしたが、ブレーン年表はおそらくこんな感じ。

幼少~高校時代:浩子(母)

高校時代   :鈴木

        ※鈴木自体が浩子に操られ、利用されていた。

大学時代~43歳:美和子(恋人)

        ※本名:亜里沙

43歳~    :不在?

 

エピローグの清家の独白から読み取ると、彼女らは清家を操っていた気になっていたのでしょうが、実際は清家が彼女らを操っていたというか利用していたっぽいです

そう、操っていたつもりが操られていた。

ホラーです。清家、こわいです。

こんな人物が日本の次期トップの位置に君臨しているなんて、もうこの国は終わった……と絶望せざるを得ないぞ。

ということはよ。最後に笑うマトリョーシカって、清家ってことかしら

 

作中に登場するマトリョーシカ一番外の人形と、一番内側の人形は、表情が違うけれど同じ姿だという描写がどこかに描かれていたのも思い出す。

やっぱり、そういうことなのではあるまいか。

一番外(表面)は清家。その中に浩子や鈴木、美和子と続いて、最後の人形は不気味に笑う(または怒っている)清家の真の姿

私はそう解釈しました。

 

歴代ブレーンはなぜ捨てられたのか。

これはエピローグで語られていましたな。

浩子・鈴木:恋人との仲を裂こうとした。

      それなのに自分たちは何年も愛欲に溺れていたから。

美和子  :武智と愛人関係にあったことを知った。

      清家を27歳で政治家にするためだけに武智を葬った。

 

この事柄に対して裏切りや軽んじられていると感じ、見くびるな!と怒っちゃった清家くん。

怒らせたら怖い清家くん。

 

誰がなんのために鈴木に卒論を送ったのか。

自分は絶対に捨てられないと思っていたのに捨てられてしまった美和子、改め亜里沙

納得いかないし、どうにかしたいと焦る亜里沙

そこで、もう誰でもいいから、このよくわからない現状を打破してほしくて、突き動かしてほしくて、鈴木に動いてもらおうと送ったのです

結果的には予期せぬ形で動きましたが。

 

不自然な交通事故の真犯人は誰なのか。

清家の父:おそらく浩子かな?

武智  :おそらく美和子(亜里沙)かな?

鈴木  :主犯は清家。実行犯はおそらく坂本、いや佐々木もラストに怪しい雰囲気がプンッとしたな。

 

鈴木の事故は、指示をしたという発言があったので確実に清家ですが、手を下した人物、他の事故に関することは、はっきりと言い切られていないので、想像が膨らみます。

 

最後に

考察しがいがあり、考えれば考えるほど怖ろしい人間の心理。

そして実際に政界でこんなことが起きていたらと思うとゾッとする、爪痕ガッツリ残されたお話でした◎

 

アンダーリポート/ブルー /佐藤正午

今回は佐藤正午さんの『アンダーリポート/ブルー』を紹介します。

伊坂幸太郎さんが解説を書いていると知って、あらすじもおもしろそうで、ずっと気になっていました。

まだ佐藤正午さんの世界観を掴めていないので、どんなお話なのか楽しみです!

 

目次

 

あらすじ

15年前、アパートの隣人が殺害されたが未だに犯人は謎のまま。

主人公は被害者の娘と再会したことで、その事件の真相を知りたくなり、調査にのめり込んでいく。

そして見えてきたのは、とても複雑で巧妙な犯行のしくみだった。

続編『ブルー』は後日談で、そこにはとんでもない展開が待ち受けていた。

 

感想

単調に語られていく静かな雰囲気だけれど、読み進めていくに連れてじわじわと事件の輪郭が見えてきて、変わらず淡々とした文章なのに心の臓がドキドキしました

雰囲気としては、前に読んだ『身の上話』に近いと感じました。

でもこのお話の方が構成が計算されている分、読みやすかったです

読みやすいというか、冒頭がラストにつながるような場面から始まるので、これから読み始める事のあらましに好奇心がくすぐられて、ドキドキワクワクさせてくれるからグイグイ読めるっていう感じです。

良い意味で焦らされている感じ。

え、何の話? 何があったの? 何が始まるの!? という期待感が膨らむ膨らむ。

佐藤正午さんよ、この構成のおかげで楽しかったです。ありがとうぞんじます。

 

語り手である主人公は、事件の立ち位置では第三者なのですが、これがただの第三者で終わらなかった顛末にゾクゾクしました

『アンダーリポート』も、その後日談である『ブルー』も、その後どうなったのかすごく気になるところで終わってしまうという、これまた焦らしがあるのですが、そのおかげで読後もゾワゾワしっぱなしでした。

『ブルー』なんてほんの少しで終わるのですが、『アンダーリポート』よりもガツンとくる衝撃展開で、終始、目をかっぴらいて読んでいました。

このお話から学ぶとしたら、物事に深入りしてはならぬということです。

そう、警告みたいな。

最初は第三者で済んでいたのに当事者になってしまう可能性がある怖さ

好奇心は時に自分の首をしめることになる。

好奇心旺盛で事件のにおいがすると無視できない私、他人事ではないのかもしれない……。

でもね、そのスリリングな要素がお話の魅力のひとつだからね!

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女性がたくさん出てくるお話で、やっぱり事件の中心人物も女性なのですが。

みなさん、それぞれに強か。

やらかしていることは良くないことだけれど、覚悟とか持論とかが、かっこいいじゃないの!

「犯罪はみんな、人と人とが出会ったところから始まる。そうじゃない? 犯罪をおかしてしまう不幸も、犯罪に巻き込まれる不幸も」

本文P207より

おお、た、たしかにそうだ……。悲しいことに出会いが犯罪を生むのが現実ですね……。

と、受け入れたくないけれど受け入れざるを得ない論に対して、後になんと主人公が感動的な解釈をしてみせます

「人は人と出会うことで幸福にも不幸にもなる。出会いがなければ、不幸に見舞われる確率は下がるかもしれないけど、幸福になれる確率もきっと同じように下がるに違いない」

本文P326より

光が差した!

人との出会いに怯えそうになっていましたが(すぐ真に受けるからな)

幸福と不幸は紙一重だぞ理論に感動しました。

さうさ、出会ったら100パー犯罪に繋がるというわけではないし、逆に出会って救われたりハッピーになることだってあるじゃないの!

今までそうだったじゃないの!私の人生!!(立ち直りの早さが自慢です)

 

このお話によく出てくる血の巡りが悪いという表現。

鈍いという意味だと思います

私も使ってみようかな。

あまりによく登場するから、お気に入りワードになってしまいました。

 

最後に

交わることのないはずの糸と糸が絡み合うような真実に、驚きと、こうして未解決事件が誕生するのかという感嘆と怖ろしさを感じました。

『ブルー』は特に恐怖しましたが、圧倒的裏切り展開が衝撃的でとても好みでした◎

 

夜の国のクーパー/伊坂幸太郎

今回は伊坂幸太郎さんの夜の国のクーパーを紹介しします。

伊坂さん好きなのですが、嬉しいことにたくさん作品がありまして、何から読もうかと迷ってしまいます。

その中でも今回は、表紙の可愛らしさと、帯の言葉に期待が膨らみ積読していたこちらを選びました!

 

目次

 

あらすじ

気が付いたときには、知らない地で、蔓で縛られていた。

そこに猫が「ちょっと話を聞いてほしいんだけど」と話しかけてきた。

猫が語ったのは、猫の住む国での戦争後の状況、ネズミとの対話、そして国に語り継がれるクーパーとクーパーの兵士のお話

そして見えてくる、その国の秘密についてのお話

 

感想

異国の戦後のお話

猫とネズミの世界のお話

クーパーなる怪物退治のお話

といった感じで、ファンタジーな内容がおもしろくて興味深く、わくわくしながら楽しんでいたの

だが

なんとなんと

そんなカラクリ(世界の秘密)が……!( ゚Д゚)

間違いなくファンタジーだった。でもミステリーでもあったのです。

たしかにちょこちょこと謎は置いてありましたよ。

クーパーの兵士が透明になるとか、誰かが乗っていた感じのある無人の馬とか、鉄国の兵士を殺めた犯人とか。

なんならクーパーの存在自体も謎。

でもファンタジー世界の特殊設定ってあるじゃないですか。なんでもありみたいな。

だからそんなに、気にはなるけれど、そんなにナゼナゼどういうことって深く思わなくて。

でもこの奇妙な謎は特殊設定でもなんでもなく、意図的に生まれたものだったという驚き。

そして納得。

そして、かっこいい。

 

基本的には猫の視点で進むお話なので、そこもおもしろいです。

猫の心理や思考、猫から見た人間の滑稽さ、ネズミとのあれこれ

描写が猫そのもので、かわいらしくもあり、気まぐれ具合も絶妙、冷静なところも、まさしく猫

いたずらでもなんでもなく、ネズミを襲ってしまうという本能のことを「太古からの指令」と呼ぶところも、お気に入りです。

そしてトムとジェリーのオマージュを感じる部分もあって、そんな遊び心も嬉しいです。

いやあ、もうとにかく終始、猫君たちが可愛すぎた。

猫好きにはたまらないのでは……!?

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さてさて、クーパーの兵士が透明になるという伝説は本当なのか

透明になった彼らはどこに行ってしまうのか

クーパーというのは、白い杉の怪物と言われているものなのですが、退治すると液体が飛び散って、それがかかると透明になってしまうという言い伝えです。

死ぬのではなくて、透明になる。

「透明になる」という表現としては、本当でした

でも思っていたのと違うっていう透明のなり方で、ああ、たしかに、透明になっているようなもんかあ……という感じです。(読んでみてね)

 

このお話で考えさせられたというか、深いなと思ったことがあります。

ファンタジーやミステリーという物語的楽しみ方も強いですが、メッセージ性も強い作品なのです。

提示された事実を信じるか信じないかは自分で判断せねばならない

誰かに指示を仰がないと動けないということは、時に危険で、自分の理性(意思や考え)で動く勇気が必要である

ということを、このお話から感じ取りました。

だって世界は広いじゃないの。偉い人ひとりの言葉が全て正しいとは限らないのよ

先入観や思い込みで、視野が狭くなってしまうじゃないの。

なかなかそういうのって抜けないけれど、思い出せるようにしておきたいものです。

 

最後に

ファンタジーとしても楽しいのに、どんでん返しにたまげました。

世界の秘密のお話、ぜひ読んでみてください◎