今回は、そえだ信さんの『掃除機探偵の推理と冒険』を紹介します。
第10回アガサ・クリスティー賞受賞の作品です。
手に取った経緯は表紙を見た時のインパクト。気になって気になって。
表紙のデザインもイラストや色合いが素敵で目を引くのですが
まさか、信じられるか? 自分の身体が掃除機ロボだなんて。
というおもしろ設定の謳い文句!
一條次郎さんの『ざんねんなスパイ』を連想しました。あの作品も、おもしろ設定の謳い文句で読む前からおもしろいという作品でした。(序盤から脱線)
この作品もその類でした。読む前から笑っちゃう。
目次
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あらすじ
ある事をきっかけに高性能掃除機ロボットに憑依してしまった主人公が、その身体のまま、離れた家族を守るために帰還する冒険劇。更に冒険(帰還)の最中に起こる事件を、その身体の性能を駆使して推理、間接的に解決していく事も並行して進む物語です。ジャンルはSF・ファンタジー要素のロードムービー(冒険小説)というか若干ミステリーも含まれるような……
複数のジャンルが織り込まれた小説って感じに思います。
感想
これは好みが分かれそうな内容でした。
素敵、おもしろいという人もいれば物足りない、引っかかるものがあるという人も同等に存在しそうです。
私個人としては、読後感が良くて素敵な終わり方だなとほっこりしました。
でも惜しいなと思うところがあって絶賛できるところまでの満足感はなかったです。(そえださん、すみません……)
単純に、私が読む前にハードル(期待値)を上げちゃったのもあります。それと私の勘違いによる違和感。
ミステリー小説かなと思って読み進めてしまったので、思っていたのと違う……というズレが出ちゃったのです。ミステリー要素もあるんですが冒険がメインでミステリーはサブって感じの構成だったんです。最終的には冒険していく姿も楽しく読んでいたので、楽しかったんですけれどね!ここは完全に私の思い込みによるズレなので私が悪いですm(__)m笑
私の思う「惜しい」の部分は2つありまして、1つは完全に好みの問題です。
文章や言葉が独特でした。私自身、全部の作家さんを読んでいるわけではないし、なんとも言えないのですが、文章が独特というか個性が強い文章で、そこが引っかかりました。でもこれに関しては、本当に読み手の好みによるし、そういった個性が逆に作家さんの強みであったりもするので、惜しいというか合わなかっただけです。もしかしたら今後、逆にこの文章がクセになって好きになる可能性だってあります。
2つ目は、前置きと進展ない状態が長くて挫折しかけました。
主人公が自分の置かれた現状に気付いて、更に試行錯誤して……の部分が長くて(構成上仕方ないけれど)話の進展や動きもそこまでないまま、小説の半分と少しまで来てしまいました。その時に、このまま読んでも特におもしろくないかもしれない……と中断しようか迷いました。
しかし。後半戦から(冒険が始まったあたりです)急に物語っぽくなってきたので一気読みしちゃいました。おもしろくて。
なんなら感動しました。冒険中に出てくる老夫婦すてき。主人公かっこいい。
今この小説を読んでいて挫折しそうになっている方! もう少しねばってください!
その先には素敵なドラマが待っていますから。もうちょっと読んでいてほしいです。
それでも諦めそうになったら解説を読んでみてください。少しは読むモチベーションが上がると思います。(じつは私もそうしました)
今から読もうと思っている方、まずは読んでください。読む価値はあります。
長くなりましたが結論を申しますと、最初は微妙だったけれど最後は楽しめました!
こんな人にオススメ
- 一條次郎さんの『ざんねんなスパイ』が好きな人
- 冒険のお話が好きな人
- 転生系のお話が好きな人
- 北海道の地理に詳しい人
最後に
終わりよければ全てよし。印象としては素敵な作品として残りました。
そえだ信さん、ちょうど今日新作が出るそうです。あらすじを見たところ、おもしろそうなので、そちらにも興味があります◎
(ちなみに『臼月トウコは援護【まも】りたい』です)