今回は天祢涼さんの『希望が死んだ夜に』を紹介します。
タイトルに悲哀の色が浮んでいて、でもどんなお話なのか気になる。
装丁もどこか魅力的です。
希望に満ちた季節に、あえて逆を行くお話を今回は読んでいきます!
目次
あらすじ
同級生殺害の容疑で現行犯逮捕された少女。
容疑は認めるものの、動機については黙秘を貫く。
2人の少女の間に何があったのか。
この事件は、本当に彼女が犯人なのか。
貧困家庭の子どもたちの過酷な現実が突き刺さる切ないミステリー。
感想
読み終わった後、語彙力を失うほどに圧倒されました。
ミステリーとしても、社会問題の深刻さとしても。
少女たちの力強い覚悟をこうして目にすると、私なんて生ぬるくて能天気に日々を過ごしているのだなと痛感してしまいます。
同時に、社会問題である貧困家庭の現実も思っている以上に深刻で、そんな中で生活をする子どもたちにとって、まさにこの国の社会現状は「希望が死んだ夜」でした。
好きなものや夢や目標が、貧困家庭であるが故に、どう足掻いても叶わなくて抜け出せない。
自分だけの力では、現状を変えられない無力さ。
国が、大人たちが、向き合わないから、そんな子どもたちは未来に希望が持てなくて、持てたとしてもことごとく奪われていく。
少女たちが貧困家庭でなかったら、この悲劇は起きなかった。
このお話だけでなく現実にも、貧困家庭でなかったら起きなかったはずの悲劇はたくさんある。
やるせなくて、もどかしい気持ちになりました。
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ミステリー要素の方の展開も壮絶でした。
真相の二転三転がすごかったです。
二転目が真相かと思いきや、なんと三転目があり、それがあまりにも予想外すぎて、考えもしなかった展開で一気読みでした。
なるほど、そういえばいくつか伏線回収されていなかったわ。
ここで回収されるためにあったのね……!
でも、とにかく胸が苦しくなる。
こんなオチある……?泣
どうせ死ぬんだからとか、そんなの、意味が違ってくるから、一緒じゃないよ……。
運命の悪戯にもほどがあるってくらい、残酷に感じました。(個人的見解)
少女が「自分が殺した」と言い張っていた理由が、強くてかっこよくて、愛が溢れ出ていて。
でも、この手段でしか真相と戦えなかったという事実は、苦しくて切なくて、悔しい。
少女ととことん向き合って、その結果思わぬ真実を見つけ出した蛍さんの存在もすごく大きかったです。
こういう人が捜査陣の中にいてくれたら、間違った解釈は起きない。
でも、現実なかなかそうもいかないのでしょうね。
ちなみにシリーズ化されているみたいなので、蛍さんの活躍はこれからも見ることができそうです。
読むの楽しみ!(いつになることやら)
最後に
よくある青春ミステリーかなと思って挑んだら、とんでもなく深い爪痕を残してくる読み応え抜群なお話でした◎