今回は恩田陸さんの『三月は深き紅の淵を』を紹介します。
恩田さんは『蜂蜜と遠雷』しか読んだことがありません。
恩田さんの書くミステリーってどんなだろうか。
去年購入して、せっかくならタイトルの3月に合わせて読もうと温めていたお話。
おかげで3月が待ち遠しかったです。ついに読むぞ~!
目次
あらすじ
『三月は深き紅の淵を』という謎の本を巡る、あらゆる世界線の不思議な4篇。
感想
構成がかなり不思議で、複雑で、惑わされながらも読了。
難しかったのですが、今となってはおもしろかったに尽きる。
物語も、構成や設定も。
どこへ連れて行かれるのかわからない。
自分の向かっているところが、どこなのかわからない。
そんな心許なさを感じるのですが、第四章に来て確信を得ました。
そういうことだったのか。やっぱり、そういうことだったのか……!
4部作からなる謎の『三月は深き紅の淵を』
まとまりがないようでいて、でもちゃんと全部まぎれもなく『三月は深き紅の淵を』でした。
これはすごい。すごい読書体験をしてしまったな。
読後はとにかく漠然とそう思いました。
第一・二部は、幻の本を探し求めたり、その本について語っていく感じが森見登美彦さんの『熱帯』みたいだな〜と思ったのですが、着地点は違う。
第一部と第二部も、着地点が違う。
第三部は、関係ない事件のお話じゃんって思ったら、最後にゾッとするほど華麗に、『三月は深き紅の淵を』に着地。
第四部は、意外な視点で始まって、かと思えば物語の中……という、ころころ変わる場面展開に困惑しました。(自分史上最高の迷子案件)
忙しなく振り回されて、お話の向かう先を見失いそうでも、最後はしっかり『三月は深き紅の淵を』の入口に立たされているのだから、すごい。
気を失って、目が覚めた時にはスタート地点に戻されているみたいな。
『第一章 待っている人々』
『三月は深き紅の淵を』という謎に包まれた本を探すお話です。
会長率いる老人チーム、いたずら心のレベルが高すぎて参りました。
謎の本の真相が二転三転する。
たしかに冒頭で課長が「だまされちゃいかん」って言ってたわ。
謎の本の行方とかダイイングメッセージに気を取られて、その忠告を忘れていました。
騙されている可能性を考えずに全部間に受けてしまって、でもそのおかげで楽しめました。
鮫島の推理もなかなかおもしろくて、驚きの着地点だったんだけどな。違ったか……。
それを難なく論破していく会長は気持ちよさそうでした。読んでいても気持ちいいのだから。
そういえば、この謎の本の第一部が『黒と茶の幻想』というタイトルで、これって実際に恩田さんが出版している本のタイトルなんですよね。驚きと嬉しみ。
(このお話の後に出版されています)
『第二章 出雲夜想曲』
第一章と同じように謎の本について推理するのですが、真逆の結末なのです。
だからもう混乱よ。どっちが本当なのって。
いや、どちらも本当なのです。世界線が違うのだから。
それにしても、主人公が感じていた違和感の原因がはっきりし始めた辺りからの、じわじわと鳥肌が立つ感覚が楽しかったです。(ホラーじゃないよ)
探し求めていたものがこんなに近くにあったとは。
< スポンサーリンク >
『第三章 虹と雲と鳥と』
この中で一番おもしろかったです。
ゾクゾクで怖ろしいのですが、終始謎めいていて、とんでもない爆弾が待ち構えていて、ラストは切なくて哀愁漂う。
ずっとずっと魅力的でした。
2人の美少女に何があったのか。
どちらが嘘をついていたのか。
どちらが悪女だったのか。
事件の原因はむごいけれど、切なくて美しい真実。
この章で謎の本がはっきりと登場することはありませんでしたが、これが『三月は深き紅の淵を』が生まれた経緯なのか……と感慨深くなるのでした。
『第四章 回転木馬』
さあ、これが問題の章です。
既に読んでいる方の感想を見たところ、この章が難しかったという意見が多数寄せられております。(私的統計)
私も苦戦しました。
恩田陸さんのエッセイなのかしら……と思われる部分
理瀬という少女の奇妙な物語
この2つが交互に同時進行で進んでいくという、一風変わった構成がその要因です。
恩田さんらしき人が日常で感じたことをつらつら語っていたかと思うと、急にファンタジー系物語が始まり、それがプツンと途切れて、恩田さんが何事もなかったかのように再登場し、また唐突に……を繰り返すのです。
全く関係のなさそうなこの2つなのですが、最後はなんと上手い具合に癒着しているように終わるのです。
なんか……、不思議。
ちなみに、ここに登場する理瀬は「理瀬シリーズ」というものがありまして、他作品にも登場していきます。
ということなので、私はこのお話を機に「理瀬シリーズ」を読んでいこうと思います。
おもしろそうです。
最後に
正直、未知の領域で難しい。でも珍しい構成ですごいので一度は読んでほしい。(私は多分何度も読むであろう)
読書経験値がかなりレベルアップした気持ちになるお話でした◎
< スポンサーリンク >