今回は深木章子さんの『消えた断章』を紹介します。
消えた断章。タイトルから察するに、文章の断片が消えたらしいです。
語感がなんか好きだな、表紙デザインもなんか好きだな。
というふわふわした動機で手に取りました。表紙買いです。
はじめましての作家さんなので、情報ゼロの状態のままウキウキで読み始めました!
目次
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あらすじ
10年前に叔父に誘拐された少女には当時の記憶が断片的に欠落していた。事件後には母の自殺。現在になって、警察が同年に起きた別の誘拐事件に動きがあったことから、関連性があると見て、その誘拐事件と母の自殺について再捜査し始めた。
事件当事者として聴取を受けた彼女は、別事件で誘拐された少年の写真を見て、面識がないはずのその少年を殺したかもしれないという記憶が断片的に思い出された。
3つの事件の繋がりはあるのか。彼女の失われた断片的な記憶はなんなのか。
感想
事件の真相が明らかになる度に推理が二転三転するので、話に着いていくのに必死でした。油断していたら置いていかれる。
最初の推理は完全に白紙になって、いちから新たな推理が立てられるの繰り返し。
正直、置いていかれました。迷子になりました。
あれ、結局この人はなんでそうなったんだっけ……? を何度繰り返したことか。
第一の推理、第二の推理、第三の推理……と自分なりに書き出さないと訳が分からなくなる複雑系推理ミステリーかなと感じました。
一筋縄ではいかない系、振り回される系が好きな人におすすめです!
このお話で好きだった点を挙げていくと
一つ目は主人公とおじいちゃんの関係性と二人の雰囲気に癒される。
主人公が「じいじ」と呼んでいるところが、そう思わせられる要因かなと。この関係はすごくいい。かわいい。
※この作品は『交換殺人はいかが?』の続編(十年後)だそうです。既に二人の関係性は他作品で出来上がっていたというわけです。
二つ目は度々発覚する新事実が毎度すごい。衝撃的新事実。
せっかく立てた推理を根本的にひっくり返しちゃう新事実たちの連続で、だから油断ならないのです! 目が覚めるぞ。
事件の複雑化はこれが原因なのです。複雑化するのは頭が着いてこられないこともあってたいへんですが、おもしろいから許す。(何様)
三つ目は最終章の「消えた断章」が明らかになる自白文。
ここさえ読めば、たとえ推理や真相に迷子になって置いていかれていようが真実がわかります。これが事件の真相のすべて。一番重要な場面。
この自白文のおかげで、結局なんだったのかがはっきりわかりました。そして誤解していた部分も解けました。
最終章、わかりやすくて一番読み応えがありました。これがなかったら、私はきっと何事だったのかわからないまま呆然としていたでしょう。(個人の意見です)
しかし、謎のまま終わった部分もあるので、そこがモヤっとします。
第二の誘拐被害者、他二人の本当の死因はなんだったのか。主人公の推理通りの結末なのでしょうか。そうだとしたら、かわいそうだなあ……。
異例ずくめの誘拐なので、謎のままの部分があってもおかしくはないけれど。
↓※ここから下はネタバレがありますので、未読の方は目を背けてください!
結論、同年に起きた二つの誘拐事件、母の自殺説は関係ないように思えて、じつは繋がっていた。そしてその事件は、ある別の未発覚事件を隠ぺいするためのカモフラージュに過ぎなかった。
カモフラージュだもん、そりゃあ異例ずくめの複雑で不思議な誘拐事件にもなりますよね。
イヤミスっぽい終わり方でしたが、ちょっと感動する結末(真相)でした。愛は最強だな。
最後に
かなり頭を使うお話でしたが、読後感は予想に反して儚くも感動するものでした。
深木さんの他作品も積読しているので、そちらも楽しみです◎