1999年、第13回メフィスト賞受賞のデビュー作です。
あらゆるミステリーファンからオススメとしてよく挙がるこのお話。(私的統計)
帯にも古典にして、大傑作!とあるし
えっ、まだ読んだことない!?と煽られると尚更気になります。(負けん気)
出版からかなり経過しているにも関わらず、根強い人気を誇る『ハサミ男』。
その魅力に迫ります。(ドキュメンタリーか)
目次
あらすじ
世間を騒がせている殺人鬼「ハサミ男」。
ハサミ男は次のターゲットに狙いを定め、タイミングを図っていたが、何者かに先を越され、遺体の第一発見者になってしまった。
この模倣犯は一体誰なのか。
感想
ラストの衝撃展開がすごいという評判は目にしていましたが……
いやいやいや、ちょっと待ってくれ!
今までずっと語っていたハサミ男って……!?
じゃあ今までの、あれやこれやも私は間違ったまま、勘違いで読み進めていたってこと!?(しばらくの混乱にお付き合いください)
ひえ〜、騙された。まんまと騙された!
私の中で冤罪が発生してしまいました。
でもこのびっくり展開が最高なのです。
どんなに眠くても目が覚めます。
急な反転に戸惑います。
戸惑いや衝撃に伴いまして、しばし真相との辻褄が合うかどうかを探しに、2度読みの旅に出てしまいます。
これを見抜けた人はいるのだろうか。
謎解きとしては、かなりハイレベルな真相です。
まず、あらすじから既におもしろいです。
事件自体は残虐で怖ろしいのですが、ターゲットを横取りされて、更にはその遺体の第一発見者になってしまう。
なにこれギャグなの? コントなの?
ハサミ男、おっちょこちょいなの?
もう2人も殺めているのだから3人目だろうと罪の重さは変わらないのですが、模倣犯に濡れ衣を着せられちゃうハサミ男。
なんたることよ。(おもしろくて仕方がない)
殺人鬼なのに、愛着が湧いてしまうこの展開。
応援しちゃいたくなるこの展開。
殺人鬼として姿をくらませ続けているくらい頭脳完璧人間に見えるのに、〇〇を毎回失敗し続けるというギャップにも惹かれてしまいます。
失敗続きなのに、めげずにあらゆる方法で挑戦し続ける執着は、ある意味では犯行と同様の完璧主義者感が出ているのですが。
不思議ですよね。忌むべき殺人鬼が魅力的に見えてしまうなんて。
ハサミ男が模倣犯を特定しようと動いていた理由も、模倣されたことで怒ったわけでもなく、横取りされて怒ったわけでもない。
たんなる好奇心みたいな感じだったようで。
そういう人間的心理が単純でないところも、掴みどころがなくて魅力的なのかもしれません。
お話の内容だけでかなり盛り上がってしまっていますが、殊能さんの文章テクニックもおもしろいです。
全体的に死が常に漂っている内容で暗いのに、ところどころコミカルで、ユーモアのある文章なのです。
そしてたまにロマンが漂う。
重々しい内容を、ギャグっぽくコミカルに進めてくれるおかげで、トラウマになることなく(?)最後まで楽しませてもらいました。
まだ『ハサミ男』について語っている途中ですが、他の殊能さんの作品を読みたい気持ちがせり上がってきています。
このお話、あえて大事な説明を伏せておくことで読者の勘違いを誘発させる方法を駆使しています。
ハサミ男と会話している存在の正体は、途中で気づくものの、最初は本当にハサミ男の〇〇なのかなと勘違いしますし、ハサミ男の正体も完全に先入観フィルターが邪魔をしてミスリードにはまってしまったり。
考えたらその可能性もあった!
だけどじゃあ、そうなるとあの場面はどういうこと……?
勘違いしながら読んでいたので、わかった上で振り返りたくなるのです。
ちなみに真犯人(ニセハサミ男)は、一瞬疑った人物だったので、心の準備はできていましたが、それでも鳥肌が立ちます。
一瞬疑ったと言っても、引っかかるところや疑わしいところがあったわけではなく、「この人が真犯人だったら、話的におもしろい展開だよな~ありえなくもないな~」と感じただけです。
刑事さんたちが「この行動が疑わしいと思ったんだ」と推理披露してやっと、たしかにと思ったわけです。だから、言わば勘ですね、私のは。
※ここから先はネタバレ区域です!
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まずなんと言ってもハサミ男の正体が一番、衝撃的どんでん返しでした!
今までハサミ男だと思っていた人は、もう一人の遺体発見者だったとは。
風貌の描写や「男」というあだ名の先入観で、見事に騙されました。
未だにあの反転した瞬間の衝撃と興奮が醒めません。
白豚のように醜く太った体つき。薄くなりかけた髪の毛。
って、君そのものじゃん……? と訝しげに思って、なんだかこれは予想外なことが起こる予感がしました。
そしてハサミ男が発した「確か、ヒダカさんだったかな」
えええ! 待って待って!
目の前にいるのヒダカなの!? じゃあ君(ハサミ男)誰だよ!!
そこでハッとする。
その言葉の前にハサミ男が言った「あなたは公園でわたしといっしょに死体を見つけた人ですね」という言葉が指すのは……!
私は今まで彼らの立ち位置を逆にして認識していたということに、ここで気づいて驚愕しました。
ここからはもう一気読みでした。止まらない。
模倣犯はもうね、ちょっとそうかなって思っていたので、じわじわとおもしろさを噛みしめながら真相を読みました。
ファストフード店で一緒にいた人。一番怪しかったですもんね。
それがマルサイだったというのは、先ほども書きましたように「そうだったらすごい展開だな」という勘が当たって、嬉しくもあり、でも想像すると鳥肌が立ちます。
刑事さんたちが、彼にばれないように密かに聞き込みをしたその方法は、まじでナイス。
ハサミ男と会話をしていた「医師」の正体。
先ほども触れましたが、精神科医だと思っていたんです。序盤は。
多重人格や幻覚なんだろうな~と思い始めたら、今度は、語り手だった「わたし」じゃなくて「医師」の方が主人格という、ややこしい感じになってきて……。
最後にはまた新たな人格が出てきたっぽくて。
最後まで謎めいた設定でした。
最後にまた懲りずにターゲットをロックオンするハサミ男。
まだまだハサミ男伝説は終わらないという締め方に鳥肌が立ちました。
(さっきから鳥肌立ちまくりですね)
最後に
これはたしかにやばい大傑作です。
みなさんもぜひ、このやばさを体感してください◎
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