今回は柚木麻子さんの『ナイルパーチの女子会』を紹介します。
私の好きな読書ブログ「読子の本棚」の本田読子さんの記事にチラッと紹介されていて、惹かれました。購入即決。(端的に紹介しても魅力が伝わる読子さんの文章力がすごいのです!)
同著者の『BUTTER』を積読しているのですが、それも後回しにしてしまうくらいに読みたさMAXです。
何年振りかに読む柚木さん作品。どんな世界が繰り広げられているのでしょうか!
目次
< スポンサーリンク >
あらすじ
キャリアウーマンの栄利子が愛読しているブログ。それを書いている主婦ブロガーと偶然出会い、仲良くなる。
しかし栄利子の言動がエスカレートしていき、2人の関係は破滅へと突き進んでいく。
女の友情や見栄、嫉妬がリアルに描かれ、自分自身の人間関係についても振り返りたくなる物語。
感想
女の友情って複雑な物事や事情が絡み合うと、本当に面倒で鬱陶しくて怖いのよ……。
女の友情に限らず、男でも誰でも人間関係は。
わかる~と、ところどころ共感する部分もあったり、こわっ! て思ったり。
これは思わず自分のことも振り返られずにはいられない。
私も無意識にこんなことやあんなことをしていないかしら……って。急に今までの人間関係を振り返ってみたくなります。
人との距離感ね。これは本当に重要だなと改めて思いますね。
グイグイ行き過ぎてもダメだし、行かな過ぎたら何も生まれないし。
程よい距離感ってどんな感じなの。今まで私、どのくらいの距離感で接していたっけ?
意識するとわからなくなっちゃう。良くないドツボにはまりそなので、そんな思考からは早い段階から抜け出さねば。(思考の渦からエスケープ!)
はい。気を取り直して続けます!
さて、人との距離感がバグっているお話という前情報を得てしても
こわいこわいこわい!!笑
何が怖いってもう全体的に。主に登場する女性は様々な意味で怖いし、何が地雷になってこんなことになっちゃうみたいなハラハラ感も怖かったです。(ホラーじゃないです)
序盤までは栄利子の心情も理解できたり、共感する部分もありました。
私も、どちらかというと平和主義なので相手の顔色窺いしちゃうから。相手が不機嫌なのを察してしまったら、自分のせいか……? って心配になるのはわかります。
でも、急にスイッチが入ったように心配性が加速して、異常にしつこく連絡したり、相手の行動チェック&予測して待ち伏せする辺りからは、明らかに一線を越えていてハラハラしました。それは相手が怯えて当然だ。(ダメダメダメ! ストップ栄利子ぉ!)
最初のレスポンスをちゃんとしなかったり、何でもかんでもブログにアップしちゃう無警戒な翔子にも落ち度はあるけれど、でもね……。
人によって受け取り方も様々だから、人間関係まじムズイ。
そんな風に人間関係に臆病になりそうな時に響いた名言がこちら!
女同士に限らず、人間関係って一色じゃないじゃない。いろいろなものを含みながら、変化しながら続いていくものじゃない。
百点満点の友情なんてどこの世界にもないわけよ。
本文P139より
もろくない人間関係なんてこの世界にあんのかよ。
どんな関係も形を変えたり、嫌ったり嫌われたり、距離を測ったり、手入れしながら、辛抱強く続けていくしかねえんだよ。
本文P345より
人間の心は変化するのは当然。だから比例して、関係も変化していくのが当然。
そう言われると腑に落ちて、安心しました。(ぐっすり安眠できそうです)
中盤は思い込み、依存、執着、支配の渦中で心が穏やかじゃない。
2人とは逆の同性友達の多い子が、まさかの狂気をさらけ出し始めたのも鳥肌が立ちました。ここが本当の女の怖い部分。強すぎる。無敵。
唐突に訪れたきっかけで、2人の親友という名の服従関係が解消されるのですが、栄利子がそんなことになっていたなんて想像もしていなくて(あえてどういう状況か伏せます)執着すると自分を見失うという事実にもゾクゾク。
2人の関係が解消されても終わりじゃないのです。
なんならここからまた違う事態がそれぞれに起こるのです。パンチすごくて引き込まれました。
翔子が立場逆転しちゃっていたところはリアル。その時の心理状態によって誰でも栄利子のようになり得るということです。(気をつけよ)
でもその事態たちを通して、それぞれ目を覚まして人生やり直そうと前向きになる。
てっきりドロドロのまま幕を閉じると思っていたので、希望的な幕閉じに良い意味で裏切られました。気持ちいい!
女が張り合っていつまで経っても共存出来ないのは、私達がそうなりたいからなってるんじゃなくて、社会に基準を押し付けられて、ことあるごとに競うように仕向けられているからなんだと思う
本文P270より
ナイルパーチ(外来種)のような彼女たちが、これからは何かの犠牲にもならず、周囲と程よい距離感で共生できますように。
最後に
人間関係(人との距離感)について振り返る良い機会になりました。
そして女の心情をリアルに描写する柚木さんの『BUTTER』への楽しみ度(内容は重いけれど)が増しました◎