今回は赤川次郎さんの『殺人よ、こんにちは』を紹介します。
とてつもなく物騒なタイトルですが、中村佑介さんのイラストでポップな雰囲気の表紙で、読みたくなりまして。
ずいぶん昔の作品で、これまたずいぶん昔にドラマ化、コミック化もされたそうです。
目次
あらすじ
パパが死んだ。
13歳の主人公は、夏休み中に過ごす別荘で母から再婚相手を紹介されるが、その男が自分の父親になることが嫌だった。
その瞬間、彼女に殺意が芽生える。
同時に夏休みのバカンス中に出くわす物騒な事件に、周囲の人間が関係している可能性も出てくる。
事件の全貌、そして結末が衝撃的なサスペンスミステリー。
感想
13歳の少女が主人公だからか、物騒なタイトルとは裏腹に軽快で読みやすい。
テンポよく、そしてユーモアに進行しながら、でも事件は割と本格的でおもしろかったです。さすが赤川次郎さん。
事件の全貌が明らかになった後の主人公の行動には、良い意味でゾゾゾッとしました。
主人公、やりおるな。
13歳にしてはしっかりしていて、でも幼さもあって。
というのが、それまでの印象でした。
最後のシーンは幼さなんて吹き飛んでいる。
やっていることは怖ろしいけれど、淡々としていて、怖れも何もなくて、少女とは思えぬ貫禄です。
事件のことに気を取られて、そもそも彼女の殺意のことを忘れていたけれど、ここでその殺意が召喚されるとは……!
そんな彼女の、その後。続編の『殺人よ、さようなら』も気になります。
タイトルの『殺人よ、こんにちは』からお気づきの方もいるかもしれませんが、フランソワーズ・サガンの『悲しみよこんにちは』を基盤にしているという遊び心もおもしろいです。(読んだことないけれど)
物語の設定にも共通点があるみたいです。
そちらも名作だから、いつかは読みたいとは思っていましたが、その気持ちがさらに増しました。
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最初の事件である赤いワンピースの女の事件。
全く知らない人だから、犯人がこの中にいるとは思えないなと思う。
そうしたらじつは婚約者の知人だったと判明して、こやつが一番怪しいけれど、アリバイとか動機とかで、確証が持てない。
もう全然わからなかったです。お手上げです。
お話の雰囲気で、優しいふりして、全然優しくない。
そしてまさかの人物が繋がってきて、このお話は意外にも本格的なミステリーだったと思い知る。
そして事件の目的、目論見が生々しくて、怖ろしい。
親族間の闇がとてつもなくリアル。
親族(特にお金持ち家系)のドロドロ関係、陰謀、いとおそろしや。
そういえば主人公の殺意はどこへやらと思い出したころに、総括するように華麗な畳みかけ展開が繰り広げられて、良い意味でえげつない……!
主人公の最後のセリフがまた、ゾクゾク感を増幅させる。
とてつもない大仕事をしておいて涼しい顔の彼女が、魔性の女に見えました。
とはいえ
頭もきれるし、精神的に安定しているし、母親よりもしっかりしているし。
主人公のキャラが魅力的でした。
最後に
気軽に読めるページ数で、内容もとても読みやすい上にしっかりしたミステリーなので、小学生から忙しい大人まで、どんな方にもオススメできるお話でした◎