今回は原田マハさんの『異邦人』を紹介します。
第6回京都本大賞を受賞した作品です。
ドラマ化もされているそうです。
帯の「美しさ」は、これほどまでに人を狂わすのか。という言葉に惹かれて積読していました。
久々のマハさん、わくわくです!
目次
あらすじ
2011年の震災の影響で起きた原発事故の被害から逃れるために、妊娠中だった菜穂は京都へ一時避難することになった。
そこで無名の作家の作品に魅了される。
徐々に深刻化していく家族や夫との軋轢、そして血縁の真実、作品への情熱、京都という美の都への執着。
芸術を愛し、芸術に狂わされる、甘美な美術小説。
感想
絵という芸術に対する情熱が、やけどしそうなほどに熱く伝わってくる。
美術作品の持つ引力や魅力を改めて感じました。
菜穂が無名作家の作品にのめり込んで、狂うように、あの手この手で支援しようと、世に押し出していこうとする姿に、彼女の本気が見えるし、気持ちもわかるなと思う。
財力があったら、私もお気に入り作家さんを全面的に押し出したいし、援助したい。
夫の気持ちも、現実的に考えたらわからなくもないけれど、好きなものに惜しみなく投資する菜穂の方に気持ちが傾きました。
絵のことだけでなく、家族や血筋の要素も衝撃的な真実が明るみになっておもしろかったです。
志村照山と白根樹の、師弟関係以上の関係性。
その複雑な関係になった経緯が壮絶で、樹がどれほど自分を抑えてきたかを想像すると苦しいです。
その抑えたものを発散させて出来上がったものがきっと、彼女の素晴らしい絵なのでしょう。だから、他にない魅力が溢れ出ているのでしょう。
じつは菜穂も……という展開になり、ここも複雑なことになっていて、さらに菜穂と樹のデータを並べると浮かび上がる繋がり。
なるほど。だからお互いに惹かれ合ったのか。
2人の繋がりが見えてから、菜穂と産まれた娘、そして樹が並ぶ姿を想像すると、なんとも美しい光景。
夫には悪いが、この3人がもう一括りに家族に見えるのでした。
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読み始めは、表紙絵がなので、なんとなく海外が舞台かなと思っていたら、日本の古都である京都!
京都のお祭りや風習、四季の移ろいも読む中で感じる事ができて、京都の魅力も満載。
京都、やっぱり素敵だな~。行きたいな~。
「異邦人(いりびと)」というタイトルも、京都が舞台だからなのです。
よそ者をなかなか受け入れない感じ。
つまり、東京から来た菜穂や一樹は、京都人から見れば異邦人。
そして京都への「入り人(いりびと)」。
タイトルも奥深いです。
原田マハさんの作品は、今まで実在した作家をモチーフにしたものしか読んだことがなかったのですが(たぶん)、架空の無名作家のお話も同じく迫力があって、魅力的で、おもしろかったです。
マハさん大好きだと、改めて認めました。(別に認めてなかったわけではない)
ドラマのキャストも、白根樹がSUMIREさんと知って、ピッタリすぎて嬉しくなりました。是非とも観たいです。
最後に
芸術を愛する人たちの情熱がとても伝わって、こちらまで熱い気持ちになりました。
京都への旅のお供にもしたい一冊です◎