本好きの秘密基地

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恋と禁忌の述語論理(プレデイケット)/井上真偽  ※後半ネタバレ注意

今回は、井上真偽さんの『恋と禁忌の述語論理(プレデイケット)』を紹介します。

井上真偽さんといえば、ドラマ化もされている『探偵が早すぎる』ですね!ドラマがおもしろかったので、他作品も読んでみたくなったのです。

最初は『その可能性はすでに考えた』という井上真偽さんの第二作目が話題となっていたので、そちらを購入していたんですが、それを読む前にこの作品の存在を知ったので、せっかくならデビュー作から読んでみようかとなったわけです。はい、こちらが井上真偽さんのデビュー作です(前置き長い)

ちなみに第51回メフィスト賞受賞の作品です。

 

目次

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あらすじ

探偵たちによって推理、解決された難解事件に間違いがないかを『数理論理学』を用いて検証するという、今までにない推理小説です。

普通なら、推理をして終わりだけれど、この作品は更にそれを検証、証明する。ダブルチェック的な感じです。これは新感覚ミステリー!

ちなみに連続中編小説ですかね。

難易度

なぜデビュー作なのに、他作品たちと比べて話題にならなかったのか。解説にもありましたが、もう完全にこれ。数理論理学という一般人には理解が難しい理系オブ理系の手段が原因です。

序盤で、数理論理学とは~、論理式、論理記号は~、命題、公理……

理系の教科書かよ!

理系苦手な私はこの時点で読了ができない気がしていました。

が、しかし! これから読もうとしている方、安心してください。

まず難しい論理学や式の説明は流し読みしても、ちゃんと物語の内容は理解できるし楽しめました。理解できないまま読み進めても支障はありませんので諦めちゃってください。(作者さんに失礼)

私はゆっくり何度も読み返して、メモとペン片手に、その場は一応理解できました。ど文系の私が一応理解できるくらいには丁寧に説明してくれています。

なんなら数理論理学おもしろいかも?! と思いました。この私が。

なぞなぞを解いているような感覚。若干ことば遊びにも似ている。完全理系内容なのに、どこか文系にも通づるものがある。そして理解できた自分がかっこよく思える。

この作品は理系大好きさんにはもちろん、理系苦手な人にも新しい扉が開けるのでおすすめです。とにかく諦めるな! 最後まで読んでくれ!

 

さらにこの数理論理学という難しい手を使う登場人物に対して、主人公も私たちと同じくらいのレベルでしか理解できないのが救いです。

作品に置いていかれる不安を抱くのは一瞬。

すぐに主人公が「意味がわからない」「理解ができない」「呪文を聞いているようだ」といった心の声を聞かせてくれるので

この子もわからないんだ!嬉 となります。

大体こういう理系絡みの話って皆が天才で、読み手が置いてけぼりになる。でもこれは主人公が凡人。最高!

 

感想

※ここからは若干ネタバレ要素含みます。

 

さすが井上真偽さん。『探偵が早すぎる』(ドラマの方)でも感じた言葉のチョイス、言い回し、ことば遊びの3拍子がデビュー作から既に健在でした。

読んでいて思わず吹き出してしまいます。笑いのツボ押しまくってきます。(私の笑いのツボは浅め)

そのおかげで、数理論理学というお堅い内容も頭に入りやすいです。

推理はもちろんのこと、それも!? というものまで覆しまくります。

あとあと、いろんな豆知識がちらほら散りばめられていて、それもおもしろかったです。世の中意外と知らない事ばかり。

それと、登場人物の名前が珍しいの多くて読めない時がある。

それとそれと、相沢沙呼さんのメディウム』『インヴァート』の出てくる城塚翡翠がちらつきます。(本作に関係はありません)

 

レッスンⅠ『スターアニスと命題論理』

話的には短めなんですけれど、数理論理学の説明が長めにあるせか一番苦戦した難しい話でした。

ここで挫折する人が続出しそうです。でも、わからなくても事件の真相はわかるので根気強く読んでほしいですね。ここさえ乗り越えれば、他の話に出てくるのは比較的わかりやすい論理です。

事件の覆り方、証明されるまで私は予想できませんでした。言われてみればたしかに……。というコメントしかでませんでした。

最後、結局どういう判断を下したのかはお預けで、違うところでモヤモヤでした。(違う章で解決)

「動機などという観点は必要ない」

本文P49より

ミステリーにおいて動機は大きいと思っていた私は唖然。でもかっこいい。

 

レッスンⅡ『クロスノットと述語論理』

出ました。タイトルにあった述語論理。作品の中で一番わかりやすい論理でした。

この場面の主人公の言葉の表現、一番爆笑しました。おかげで意味が更にわかりやすくなりました。

帝王ひばりちゃん、爆誕からの帝国崩壊。短い天下だった。

本文P210・211より

 

先輩の推理から出てきた犯人が、私の予測していた人物と違う(え、そっち?!)

先輩の推理に納得。(なるほど。たしかに! )

先輩の推理を覆した硯さんの検証&真犯人(やっぱこの人なんじゃん! でも犯行のトリックは全然違う。見抜けん。)

全体的に一番わかりやすくておもしろい話でした◎

 

レッスンⅢ『トリプレッツと様相論理』

長かったです。推理が堂々巡りで、ああでもないこうでもない。

最後までわからなかったです。にしても、このトリックを思いついた犯人も硯さんも頭良すぎる。パズルみたいなトリックでした。

トリプレッツという真実も、思い浮かばなかったです。でもトリプレッツ自体はトリックに関係なし。動機としては出てきましたが。

硯さん、すぐにわかっていた。頭どうなってるの。

 

進級試験『恋と禁忌の……?』

短かったのに中身が濃厚でした。

まさかの、今までの話、設定、全てが伏線。この作品で一番のどんでん返しでした。これはさすがに見抜けません。

でもおもしろかったです。あれもこれも裏では全部そういう事だったのか!

先ほども言いましたが、これこそメディウムっぽい。

 

一件落着かと思いきや! 更なる謎が。

え、もう話終わるよね? 今ここで謎出てきちゃって、あと2ページで終われる?

結局謎のままでした。

本当の所どうなのか気になります。なんらかの目的で森帖くんに近づいた赤の他人なのかな。続編がほしいです。硯さんの再登板、強く希望します

 

最後に

めちゃくちゃ頭を使ったけれど、読後の爽快感はすごかったです。全部、数理論理学とやらで推理をひっくり返して、しまいには……

若干モヤモヤを残した終わり方でしたが、今までにない不思議な読書経験でした。

『その可能性はすでに考えた』も楽しみです◎