今回は井上真偽さんの『聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた』を紹介します。
だいぶ前に紹介した『恋と禁忌の述語論理』の1編、『その可能性はすでに考えた』の続編をついに読む時が来ました!(安定の積読状態でした)
今作も表紙デザインが美しい! 妖艶な雰囲気の漂うデザイン。作品にぴったり。
だけじゃない。
2017年本格ミステリ・ベスト10で堂々たる第1位👏
その他のミステリランキングにもたくさんランクインしている大作です。
今作はどんな謎が巻き起こるのでしょうか……!
目次
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あらすじ
地域の習わしによる結婚式での「盃の回し飲み」で、7人のうち3人が毒死する飛び石殺人が起きた。
一体どんな手口で飛び石殺人が起きたのか。犯人は誰なのか。
多くの推理が出てくる中、その地域で祀られている「カズミ様」の仕業ではないかという人智を超えた奇蹟と推理するものも出てくる。
はたしてこの事件は人為的なものか、奇蹟によるものなのか。
感想
続々と出てくる推理と事実に振り回されて、目が回りました……!
私が理解する前に新たな推理が出てきたり、否定されたりするから途中からフリーズしておりました。
でもちゃんと、気を取り直して頭をなんとか追いつかせました。(がんばったえらい)
こんなことを言っていると、難しいお話でしたって伝わっちゃうかもしれませんが、お手上げ状態になる寸前で衝撃展開がやってくるので、結局本を閉じずに見入っちゃいます。思わず「え!?」と声に出すぐらい。(出ました、本当に)
そして登場人物のキャラが濃いので、そこも最後まで楽しく読めた秘訣です。
前作に引き続きの方々なんですが、もう、今回もすごいことになっちゃってる。
みんな個性が強くておもしろい。
↓彼らについては過去の記事でも触れているので是非に!
簡単にこのお話の雰囲気を説明すると高度な推理バトルです。
もっと言うと、罪の擦り付け合いによって立てられた推理のバトルです。
推理をただ並べるだけではなく、その推理が成立しないことも論破する。
推理、論破、推理、論破……。頭の回転が遅く、語られることを全て鵜呑みにする私はもう目が回る。
それと同時に衝撃的なカミングアウトにハラハラドキドキのスリル。それをも覆す推理。さらにその推理も真相ではないという展開。
最後の最後まで真相がわからないのです。
どれも真相っぽいのに。言われてみれば不可能なのです。
でもこれだけ推理バトルを繰り広げていたら、今わかっている証言も事実も忘れるって!(開き直り)
前作でも述べましたが、次々と推理を反証して、人為的可能性を排除していく新感覚ミステリーです。こういう形のミステリーもあるのです。
祀られている「カズミ様」という存在もアクセントになっていて、おもしろさが増します。こういうスピリチュアルな感じ、個人的に好き。
しかもこの「カズミ様」、ただものじゃない。祀られているから、それはそうなんだけれど一風変わった経緯で祀られています。祀られているのに、拝むのは不謹慎と思われていたり、この周辺だけ色の違う花が咲いたり。
この要素だけでも、私は十分惹きつけられました。
※ここからネタバレ案件ですのでご注意ください。
第一部、最後の一文。
今作で一番のびっくり発言。絶対それはないという根拠なしの自信があったのに。だって、あなた、立場的に容疑者候補除外でしょうよ!
と思いながらもこの後の展開が気になりワクワクしておりました。
第二部はもう初っ端から嫌な予感しかしない。
私は呼び出された彼女をその場で葬るための葬儀会場の用意なのかなと思ったのですが
まさかのそっち!?
……たしかに人間とは限らないよね。ちょっとした伏線回収にもなっていて、ただただ驚きでした。
エリオの衝撃告白もゾワゾワしました。この告白で全てが腑に落ちました。
第三部
腑に落ちたのに! ここまで来たら奇蹟かと思ったのに!
でも素敵な真実。よかった、愛があって。
最後に
前作に引き続き濃いキャラ、そして前回よりも推理論と反証シーンが多くて、てんやわんやでしたが、ラストシーンが素敵できれいな終わり方でした◎