本好きの秘密基地

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その可能性はすでに考えた/井上真偽 ※少しネタバレ要素に触れています

今回は、井上真偽さんの『その可能性はすでに考えた』を紹介します。

表紙イラストがアーティスティックで目を惹きます。よく見ると不気味だけれど。

読後にわかりますが、このイラストに作品の全てが詰まっています。

この作品は第16回本格ミステリ大賞候補作になり、更にいろいろなミステリのランキングにも入っているそうです。恩田陸さんなどの有名な方々も大絶賛だとか。

これだけすごい評判を目にすると読みたくなるのが人の性。(合ってる?)

一応、設定を理解しやすくするためにデビュー作も読んで準備万端。井上真偽さんの世界へ、いざ出陣!

※デビュー作を読んでいなくてもモーマンタイ(大丈夫)!(この作品に影響されて中国絡み)

 

目次

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あらすじ

奇蹟を信じるという前代未聞の探偵の元に、摩訶不思議な事件の真相解明を依頼しに来た女性。そのある事件での唯一の生き残りである少女には、首無し少年に抱えられて運ばれた記憶があった。果たしてこれは首無し聖人伝説のような奇蹟が起きたのか。それとも人の手による何かしらのトリックによるものなのか

論理で暴くのが一般的な『探偵』が、頭脳明晰な人物たちのあらゆる推理を反証(反論)して否定し、奇蹟を証明しようとする『規格外探偵』による新感覚ミステリー

 

感想

事件の回想ではグロ描写があって、夜はうなされて悪夢でも見るのではと思いましたが。(普通に爆睡していました)

そして推理トリックも少し難しかったのですが、めちゃくちゃおもしろかったです!

グロくても難しくても、バトル内容、設定とキャラが最高に良いから推せます!

この作品も登場人物のキャラ立ちがすごかったです。どの人も個性的でおもしろい。

特に探偵と助手みたいな立ち位置の金貸し中国人コンビ。この二人は、井上真偽さんのデビュー作『恋と禁忌の述語論理』の中編のひとつにもゲスト出演しているので、私の中ではこの個性的な二人はもうキャラ付けができていて冒頭はスラスラ読めました。もちろん、デビュー作を読んでいなくても楽しめるはず

 

 

y86chan.hatenablog.com

 

 

他の探偵に敵対する人たちも良いキャラしています。みんな。

探偵が反証するときに「その可能性はすでに考えた」という決め台詞を言うのですが、話が進むにつれ、その決め台詞にワクワクし、「待ってました!」と言いたくなります。

 

難しかったと思った部分

さて、まず何が難しかったかと言いますと、トリックの詳細です。

4~5つの推理が出てくるのですが、どれも想像するのが難しくて、私の頭では映像化できませんでした。(3つめと最後の推理は想像できたし、おもしろい推理だった)

雑学というか、理科の実験みたいな感じの手段を使うので、そもそも私に知識がないという問題です。作品内でその理科的しくみの説明はありましたが、それでも「一体何を言っているのか……」となる部分が多々ありました。賢い人はわかるのでしょうが。

もうひとつ私の頭に混乱を招いた原因は度々(いや結構)出てくる中国語です。読み方や日本語訳が一緒に載っているのですが、スラスラと読むのには、それが少し壁になりました。でも中国語の勉強にもなったし、中国の歴史も学べたし、結果的にはその点もおもしろさのひとつです!

読んでいる最中に中国の歴史が気になって調べたりして。またひとつ賢くなりました!

 

おもしろかったと思った部分

もちろん全部おもしろかったのですが特にここ!

登場人物が入れ替わり立ち替わり、その都度推理が披露されるのですが、その推理が真相だと錯覚するくらいすごい信憑性がある。それなのに、探偵が簡単に反証して推理の穴を述べる。

推理に「なるほど、本当だ」と思ったのに、探偵の反証に「本当だ! このトリックは無理がある!」と再度感動してしまいます。更に次の人が違う推理を披露して「なるほど、本当だ」、また反証して……の繰り返しで、完全に振り回されておりました

それが楽しかったです。何度も起こるどんでん返しです。

そして、どんでん返しは推理だけでは留まらず、登場人物の素性までも……!

特に後半がこんな感じにどんでん返しを繰り出してくるので、一気読みしちゃいました。最初はトリックのワケがわからずノロノロだったのに。

 

真相はわからないままですが、多分探偵が最後に推理した内容なんじゃないかなと思います。【幕間】という回想部分の会話からして、それが一番有力な推理だし、そうであってほしいと思うほど感動する推理内容でした。少年や教祖の気持ちにちょっと感動して胸が熱くなる感じでした。つまり後味悪くないやつです。

 

最後に

前半までは難しくてページが進まず先行きが怪しかったのですが、最後まで読んでみると新感覚なミステリーの爽快感やどんでん返し、感動が待っていました。読んで良かったです。

続編の『聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた』も積み本の中でスタンバっていますのでまだまだ楽しみが待っております◎