今回は宮部みゆきさんの『あんじゅう 三島屋変調百物語事続』を紹介します。
『おそろし』を読んでから宮部さんの百物語にハマりましたので、続編のこちらを!
今回はどんな百物語が待ち受けているのでしょうか……!
目次
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あらすじ
百物語のようにお話をを聞き集める三島屋シリーズ第2弾。
感想
今回の物語のテーマは子ども(第四話は除外)、その場所や時代の言い伝えという感じです。
なので、前作と比べると身の毛がよだちません。マイルドです。
私は圧倒的に『第三話 暗獣』が好きです。比較的長めの物語ですが、感情が揺さぶられます。もうぐらんぐらんです。
この物語だけでもいいからアニメ化してほしいです。もれなく泣く。
『第一話 逃げ水』
ある事件を機に何かに憑かれた少年。少年の周りからは水が逃げていくという奇妙な物語です。
この少年が純粋無垢で、素直で、子どもの心はきれいだなあと改めて感心しました。
三島屋にいる少年との絆の深まりも、山のヌシさまとの関係性も。お互いがお互いを純粋に思いやって、信頼し合っていて、心が温まります。
大人にはない子ども特有の純粋さがあったからこそ、山のヌシさまも心を許せたんだろうな。守りたくなったんだろうな。
人間と人間でないもの。でもその2人の間には、そんな垣根も超えて平等な、人間の子ども同士の友情のようなものが漂っているのも、すっごく温かい。優しい。
子どものこういう純粋で邪気のない心が愛しいのと同時に、そうはなれなくなってしまう大人の心の歯痒さも感じます。
子どもっていいな~!
『第二話 藪から千本』
双子姉妹の運命的奇妙物話。
唐突に針が刺さるという奇妙な物語なので「藪から棒に」にかけて「藪から千本」。ネーミングセンス抜群じゃん。
昔は双子が不吉がられていたことは他の物語でもよく出てきます。この物語もそんな感じです。
仲良しな双子だけれど、迷信を信じる祖母に忌み嫌われて、祖母の最期の言葉が呪いのように彼女たちを束縛する。生きるためには、あることにこだわって生活しなければならない。でないと、呪いが発動する的な。(呪術回戦ではありません)
釘崎野薔薇の術式的な。(しかし呪術回戦ではありません)
しかし、とある作戦にダメもとで挑んだら……! という感じです。
しかも結果的には、この物語は祖母の呪いに怯えた家族の〇〇でしたというオチが、今作の中では異例な形でした。(まだ六話目)
「痘痕も靨(あばたもえくぼ)」という言葉は聞いたことがありますが、恥ずかしながら意味を知りませんでした。「あばた」ってこのことなのか。勉強になりました。
あばた面が忌み嫌われる、逆にあばた面の人は魔を除ける力を持っていて崇拝されるということも知って賢くなりました!
『第三話 暗獣』
めちゃくちゃかわいい。けれどめちゃくちゃ切なくて悲しい。
この物語は怖さ少なめです。ほぼないに等しい。(個人差があります)
暗獣なるものが登場するまでの前置きが長くて、途中で心が折れそうでしたが、登場してからはあっという間に終わってしまいました。それくらい読み応えのある内容。
ペットのような、幼子のような生き物。
会話はできないけれど、返事をしたり、歌を覚えて歌ったり、感情表現が豊か。
自分の身を犠牲にしてまで人を助けようとした場面はもう、泣きそう。
お互い想い合っている、好いている、求めているのに、一緒にいられない。
思い出を共有し合ってきたのに、一緒に生きられない。
一緒にいたくても、生きるためには、生かすためには、離れなければならない。
究極の選択。苦し過ぎるよ……。
暗獣の最期にも感動しました。
懐かれたら、こういうのって苦しいんだよな。
『第四話 吼える仏』
仏は吼えないでしょって思いましたが、吼えてました。(タイトルにあるんだから当然)
恨み妬みという類のエネルギーは、他のどんなエネルギーよりもパワフル。怖ろしい。そして化けやすい。
呪いだったり、祟りだったり。
この物語に関しては、どっちもどっちかなっていう見解です。
里のしきたりも、それに歯向かった若者も。どっちも仕方ないようで、どっちも落ち度はある。気がする。
最後に
前作とは雰囲気の違う百物語たち。怖いものが苦手な人でも、今作は読めるのではと思います。
まだまだ続く百物語の聞き集め。次の『泣き童子』も楽しみです◎