私の好きな女優さんである石田ゆり子さんの推薦文が帯に載っていたので迷わず手に取りました。石田ゆり子さんが何度も読んでいるというラブストーリー。
ニヤニヤしながら(怪しい人)早速読みました!
目次
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あらすじ
愛し合ったまま別れなければならなかった二人が偶然再開したことを機に、別れた当時のことや現在を綴った、1年弱に渡る文通。
感想
読んでいる間の率直な感想は一通が想像以上に長い。(全通ではないですが、ほぼ)
世界最高記録を叩き出したのではと思うほどの量。文中にも「厚い手紙、封筒」と表現されていますが、その分厚さは見たこともないほどだろうな。短編集か、それより分厚かったりして。
時代的に手紙、文通そのものが化石化しているのですが、この作品が出版された時代ですらも、この一通分の量はなかなかないのでは。
正直、そう感じながら読み進めておりました。
その分、ふたりの文通の内容だけで
ふたりは愛し合っているのになぜ別れなければならなかったのか
そのきっかけの真実、お互いに思っていたことはなんだったのか
現在はお互いどうしているのか
など、第三者である読み手にも自然な流れで理解できるように、事細かに綴ってくれています。
ふたりの波乱万丈さが細やかに綴られています。
男の方がね、とんでもないなと思いました。それでも愛し続けていて、現在も側で違う女性が愛してくれている。
文面からはとんでもない男にしか見えないけれど、その面以外で、それを上回るほどの魅力があるのかな。そういう男性っているもんね。(大人な女ぶる)
それに反して女は、嫉妬や恨み、愚痴という世の一般的女性によくある感情を素直に出すものの、一途で強く、気高い印象。
男の現在の恋人も強くてかっこいい。この人、一番好き。
男(彼氏)の元妻を好きって言えるの、まじかっこいい。
この作品のテーマ、キーワードとなっているのが生と死、そして業(さだめ)。
モーツァルトの音楽を通して、本当に生と死を彷徨って。お互いに生と死を考えて、向き合って生きておりました。
「生きていることと、死んでいることとは、もしかしたら同じことかもしれへん」
本文P81より
この言葉を引き金にずるずるとヒモずるに、今までお互いが隠してきた過去の真相や思いを綴りはじめ、急展開を見せていく。
この作品の大テーマに抜擢。おめでとうございます。(何が)
そしてもうひとつ、文中に何度も出てくる「業」という言葉。
こうなったのは自分の業のせいなのだ。というように不運や不幸を自分のさだめ、相手のさだめのせいで起きたと嘆いておりました。
が、しかし。この「業」の意味合いにも変化が出てき始めました。
文通を進めるに連れて「業」の使い方が前向きな、明るい雰囲気に変わりました。自分の業だから仕方ない、頑張るぞ! みたいな。
ふたりの過去がドロドロだっただけに、文通の空気は陰鬱で物騒な雰囲気を醸し出していましたが、最後の二通あたりからはお互いが現在と向き合い、それぞれ明るい未来を目指している雰囲気に変わっていました。
私は最後の女の一通が一番好きです。明るい未来をスタートさせる寸前のような清々しい雰囲気、そして素敵なお父さん……。
男は恋人を、女は息子を生きる糧、希望にして、各々これからも生きていく。
読後感はすっきりと心が晴れたような気分でした。
そして波乱万丈な中、離れていてもお互いを想い合う、そんな素敵なラブストーリーが、この長すぎる一通一通に綴られていました。
私も行ってみたいな~。常連になりたいな~。
『Jupiter』以外の曲も綴られていたので、今日はその曲『モーツァルトの三十九番シンフォニイ』を聴きながら、この作品の余韻に浸ろうと思います。(大人ぶる(2度目))
最後に
あの大女優、石田ゆり子さんの審美眼は、やはりすごい。男女の文通だけで感じる、大人だからこそ味のある波乱万丈ラブストーリーでした◎