『十角館の殺人』からかなり間が空いてしまった。数年ぶりです。
好評の館シリーズ、やっと2作目に取りかかります!
目次
あらすじ
またも中村青司の設計した館で事件が起きた。
不気味な仮面をつけた体の不自由な主、若すぎる美しい妻、そして選ばれた客人たち。
一年前の不穏な3つの事件、今年もまたなぞるように何かが起きる。
招かれざる客の島田が一年前の事件と現在の事件を推理した先に見えた、水車館とその一家に秘められた謎とは。
館シリーズ第2作目。
感想
雰囲気がたまらん……!
事件の起きる館特有の、優雅で妖艶な雰囲気が最高でした。
もうそれだけで、ミステリー好きはわくわくしちゃいますね。
冒頭から刺激的すぎる不穏な出来事が3つ並べられ、不気味な幕開けで、何が起こってどう辿り着くのか気になりました。
犯人ももちろん検討つかない。
そして意外。
なんと前作『十角館の殺人』に登場する建築家の中村青司繋がりもあって、読んだことある人にとっては嬉しい仕掛けです。
十角館がすごすぎて、あのお話を越える驚きはないにしても、十分に驚いたし、王道ミステリーはやっぱりおもしろいと実感しました。
館の住人である紀一と由里絵は特にミステリアスで興味を惹く人物です。
主人である紀一は、仮面を常にかぶっていて、身体が不自由。
何か大きな秘密を抱えていそうな雰囲気です。
由里絵はラプンツェルを彷彿とさせる美女で、紀一の妻にしては若過ぎて、なぜ2人は夫婦となったのかと怪しく感じます。
他の人たちも個性的ですが、とにかくこの2人は際立って気になる人物でした。
過去の事件と、その一年後の現在を交互にして進行していくところも、ジワジワと迫ってくる感じがあり、わくわくとドキドキをたくさん味わうことができました。
これ以上語ろうとすると、うっかりネタバレに触れてしまいそうなので、さっそくですが……
※ネタバレ区域※
ここからは過去の事件、現在の事件の謎と真相をまとめていきますので、未読の方はご注意ください!
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1986年の事件
♢脅迫状と開かずの間
これらは由里絵の仕業でした。
出て行きたかったのは由里絵本人で、この脅迫を真に受けてくれれば、主人は自分も連れてこの館を出て行こうとしてくれると思ったようです。
その気配がないので、ダメ押しで開かずの間となっていた書斎の扉を開け放し、紀一が復活したと思い込ませ、怯えさせ、脱出を促そうとしたようです。
♢三田村の事件
車椅子から転げ落ちて、彼が手を貸してくれた際に、薬指の違和感に気づかれたと察し、始末しようとしていた。
更に由里絵を誘惑したことにも憤り、その場で殺害。
♢野沢の事件
三田村殺害後に、車椅子生活であるはずの自分が普通に歩き飛び出してきたのを見られ、口封じの為に始末した。
1985年の事件
♢根岸の事件
藤沼紀一と入れ替わるにも、根岸は紀一の介助など身の回りの世話をしていたため、バレる可能性がかなり高かった。
そのため、今後の入れ替わり生活の邪魔となる根岸を始末することにした。
何の疑いもなく塔の部屋で正木と会話し、背を向けた隙に殴り、意識を失わせ、バルコニーから投げ出した。
♢古川の事件
紀一と入れ替わるにも、紀一の身体は事故の損傷が激しく特徴的で、血液型も違うため、死体から入れ替わりがバレるおそれがあった。
そこで、当日滞在する人の中から、正木本人と近い身体を持つ古川を身代わりに選んだ。
殺害後、運ぶ手間や焼却炉に入れることを考え、遺体をバラバラにし、黒いビニールにいくつかに分けて入れ、窓から外に落とす。
部屋の臭いを誤魔化すため、お香を焚いておいた。
古川の遺体を焼却炉で燃やし、それを正木の遺体だと思わせるために、自ら左手の薬指を切り落とし、焼却炉のそばに置いておいた。
古川は絵を盗んで失踪したと思わせるために、由里絵に協力してもらい、ひとつの絵を外して隠してもらった。
そして古川が外にいたことも口裏を合わせて、紀一を騙し通した。
♢紀一の行方
古川を追いかけたふりをして戻った正木は、ダメだったというでたらめを紀一に説明し、隙を見て紀一を撲殺。
しかし紀一にはまだ息があり、正木が焼却炉へ行った隙に、隠し部屋である地下へ移動し、そこで力尽きる。
野沢が「変なにおいがする」と言っていたのは、遺体の腐臭であった。
♢幻の遺作
その絵にはまさに水車館が描かれており、その中に、硬直した青白い足、黒髪の憂いを帯びた美女、紀一の仮面が描かれ、隅には灰色の血を流した薬指のない手が描かれていた。
つまり一成は、この現状を予言していた。
そしてそれをなぞるように紀一は水車館を建て、そこに由里絵と自らを封じ込めた。
最後に
前作とは違った、館の妖艶さや一家の謎などのおもしろさを堪能できる、これまたすごい仕掛けのお話でした◎