今回は恩田陸さんの『麦の海に沈む果実』を紹介します。
何度も読みたいミステリーとして、どこかで紹介されているのを見ました。(ど忘れ)
読もうと思っていたら、理瀬シリーズの2弾目らしく、ならば1弾を読んでからにしようと楽しみにしていました。
そしてその第一弾『三月は深き紅の淵を』を先日読み終わったので、記憶が曖昧にならない内に、早速読みます!
目次
あらすじ
水野理瀬は、2月最後の日に陸の孤島にある学園へ転入することになった。
3月以外の転入生は破滅をもたらすという「三月の国」の言い伝え。
相次いで起きた生徒の失踪と謎の死。
不思議なことばかりが起こる謎めいたこの学園の秘密とは。
理瀬シリーズ第2弾の学園ファンタジーミステリー。
感想
舞台は日本なのに、浮世離れした不思議な異国のような雰囲気。
ハリー・ポッターの世界のような雰囲気を感じます。(魔法の国ではない)
あらすじを読んでいただけるとわかると思うのですが、ミステリアスな魅力と設定が満載です。
終盤まで事件が起こるばかりで、不穏でミステリアスな雰囲気がずっと漂っているのですが、第十五章から一気に展開が動いて気持ちがついていかない。びっくり。
今目の前で何が起きたんだ!? という、大事な部分を見逃した感。
このお話を読む時は特に第十五章を慎重に読んでいただきたいです。
さもなくば、私のように置いていかれます。
今まで動きがなかったからと言って、ぼーっとしていたらだめです。(私のこと)
いやでも、そんな急に真相が目の前に放たれてもびっくりする。(言い訳)
そんなこんなで、ウダウダと戯言を言っておりますが
真相はかなりすごかったです。
鳥肌がぶわっと。何度か立ちます。しかも立て続けに。
三月の国はどんな目的でつくられたのか。
なぜ三月以外の転入生は縁起が悪いとされているのか。
このあたりの謎は中盤に語られていて、私の中ではもう解決済みだったのですが
一連の失踪と殺人の犯人。
なぜそんなことが起きたのか。
理瀬の正体。
この3つの謎の正体は誰が予想できたであろうか。
今思えば、どれも伏線はしっかりありました。
今思えばね。
だから犯人は理瀬を〇〇していたのか!
だから何人かが理瀬に〇〇性を感じていたのか!
これがそもそも、伏線だったのか……!
読後は頭をフル回転させながら、状況整理に勤しんで、楽しんでいました。
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ハリー・ポッターの世界みたいと言ったように、世界観と登場人物が魅力的なこのお話。
イベントがたくさんあって、学園内は不思議がいっぱい。
言い伝えもミステリアス。
校長は女にも男にもなれて、考えや素顔は謎に包まれている。
生徒たちもみんなワケアリっぽくて、子供らしさが薄い。
そんな舞台で繰り広げられる人間ドラマは、不思議なことだらけで引き込まれます。
私は憂理が好きです。
ませているところは可愛くて、面倒見が良くて、真の友情を感じる。
理瀬に近づいたのには理由があったというのはドキッとしましたが……。(ネタバレになってしまったらごめんなさい)
黎二も良かったです。愛情を具現化したものが彼といっても過言ではない。(と思う)
第十四章のシーンはうっとりしたし、黎二の暗黒な過去の告白すらも美しく見えてしまう。
なんて愛情深い人なんだ。惚れてしまう……。
これは私が古い革のトランクを取り戻すまでの物語である。
本文P9より
という、なんともそそられる文章から始まるこのお話。
しかし、おもしろいことに、このお話は理瀬がトランクを奪還するために奮闘する物語ではなく、トランクがなくなってしまった理由が最後の最後に判明するというオチでした。
不思議の国に気を取られて、トランクのことは忘れていたけれど。
冒頭の文章もしっかり回収されて、そういえばトランク……! と思い出しました。
あれ? ということは、この不思議な国のお話はオマケみたいな感じ?
なんと贅沢なオマケ!
ちなみに『三月は深き紅の淵を』を読んでいなくても全然問題なく読めます。
先に読んでおくと「このシーン、既視感あるな」って思うだけです。
『三月は深き紅の淵を』の中に収録されている第四章(回転木馬)は、このお話のダイジェスト版みたいな感じです。
最後に
不思議な国を体験できる上に予測不能な真実。楽しかったです!
これがシリーズだなんて嬉しい。次の作品も早く読みたいです◎
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