ついに始まりました!
ブログ「郵便局のおじさんは9時40分ごろやってくる」のニードルと共に始動
第1回 本好きのタイマン
今回は私が課題図書を決めさせてもらいました。
彩坂美月さんの『向日葵を手折る』です。
表紙とタイトルの印象で決めるという、いつも通りの直感で決めたのですが、ページ数のことを考えておらず、初回からボリューミーな作品を選んでしまい申し訳ない気持ち。
でもニードルは2時間で読み終わったらしいので、さすがすぎる。(私は苦戦)
目次
あらすじ
父の死を機に、母の故郷の自然溢れる集落に引っ越してきた小学生の主人公。
そこで出会う個性豊かな同級生、度々起こる不穏な事件、向日葵男の噂。
思春期の彼女たちの感情変化や成長、並行して起こる謎めいた不穏な事件たちの行方を描いた青春ミステリー。
感想
表紙やタイトルから想像していたのは瑞々しくて可愛らしい雰囲気でしたが、なんと真逆でした。
ダークで、生々しくて、残酷で、緊張感が常にある。
さらにエネルギッシュで迫力もあるので、物語の衝動が読みながら伝わってきました。
何度か鳥肌が立ったり、胸がザワザワしたりしました。
学生間の人間関係もそうだし、事件の真相や経緯も闇が深すぎて、苦しくて、思春期の子供の葛藤も痛々しい。
ああ、こうやって、知らないところで何かが暴走して、事件が起きていくのか。
本の第一印象とのギャップにも打ちのめされましたが、内容の全てが濃くて容赦なくて、私、今すごいものを読んだぞ……という意味でも打ちのめされました。
ラストはモヤモヤを残さず、さらに感動的で素敵だったので、今までの雰囲気を打ち消すかのような心ホカホカな読後感でした!
登場人物が強烈組と平穏組の二つに別れます。
強烈組はなんと言っても隼人。
小学生時代の彼はまじで怖ろしかったです。即やばいやつ認定しました。
いたずらの度を越していて、過激な言動ばかり。
でも最後まで読んでわかるのですが、彼は本当は良い子なのです。
何度も怜が「本当は良い奴だ」と庇うので、どこがよ!? と思っていました。でも本当に良い奴でした。
怜よ。もっと具体的な良い奴エピソード交えて説得してほしかったよ。
まあ後々、誤解が解けたからいいけどさ……。
雛子も内に強烈な感情を秘めていて、彼女の今までの発言の意味がわかってハッとし、思春期特有の歪んでしまった愛情が妙にリアルでゾクゾクしました。
平穏組代表は怜です。
ずっと穏やかで優しくて、これは惚れてしまう。
真逆な印象の隼人と親友であることが不思議ですが、彼らの抱えていた闇を知れば、二人はそっくりで、親友としてお互いを支えて信頼していたのも納得です。
彼らの絆と信頼は相当に強いものだと、経緯を知れば単純明快です。
思春期真っ只中な彼らの心と身体の成長も見応えがあります。
いつの間にか少年少女の間にできる壁と距離感。
女子間の暗黙の了解。空気の読み方。
相手に対する自分の感情の変化。
親が発する大人の事情に対する居心地の悪さ。
ああ、なんかわかるな。この歳って周りや自分の感情の変化に違和感とか戸惑いを感じて、ソワソワすることばかりだよな。
きれいごとはどこにもなくて、なんなら思春期のダークな部分を切り抜いて描かれていて、だから鼻につくことなく読み進めていけました。
集落という小さな集合体だからこその問題や違和感も描かれています。
県外から来た人は、いつまで経ってもよそ者で、立場が弱い。
受け入れられているように見えて、所々差別的振る舞いが見られる。
元々集落にいる人は身内同然だから、悪いことにも目をつむる。
そんな事実が浮き彫りになって、集落の人々は世話焼きで親切という印象の半面、冷酷な差別視はどこよりも明白で、やっぱりどんな土地でも何か欠点があるのだなと思わされました。
そしてこの風習が事件を大きくしてしまったということも皮肉めいている。
ちょっとお話が逸れますが
舞台が集落ということもあり、郷土料理や山菜料理がたくさん登場して、それがどれも美味しそうで食欲をそそります。
人間関係についてちょっとマイナスな点を書きましたが、料理が美味しくて、みんなで助け合っていける素敵な村です。
※ネタバレ区域※
ここからは事件の真相が一文だけチラッとしますので、未読の方は注意をお願いします!
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第八章から解決篇がスタートです。
かなり前の伏線も全部見事に回収していき、なるほど! の連続でした。
春美が襲われた顛末。
怜や春美が度々負っていた痣や怪我の真相。
小学生だった彼らの不穏な会話。
小学生の時、向日葵が全て手折られていた理由。
ハナの傷跡や臆病な性格の原因。
みのりが襲われた時に見た黄色の正体。
向日葵男の存在の有無。
挙げたらきりがないのですが、これらの謎が全てきっちり解かれて、事前にちゃんとヒントも散らばっていて
そういうことだったのか……( ゚Д゚)←本当にこんな顔したと思う
すべては自分たちを苦しめた彼と、自分たちを見捨てた村への命がけの復讐。
重みのある苦しくて悲しい真相。
子供ながらに、いや、子供とは思えないほどの奮闘ぶり。
彼らの苦労はどう表現すれば足りるだろうか。どんな言葉を使っても足りない気がする。底知れない。
みのりの物語。
隼人の物語。
怜の物語。
どれも力強くて濃い物語です。
彼らがこれから再び合流して物語の続きを歩んでくれることを、それが明るい素敵な物語であることを切に願います。
こんなドロドロ壮絶な経験を子供時代に生き抜いたからこそ、これから先は幸せになってくれ!
最後に
ボリューミーで挫折しかけましたが(自分が決めたくせにね)、ニードルと共に読んだから完読まで辿り着けて、そこにある衝撃と感動を得ることもできました。感謝!
そしてお疲れさま!笑
みなさんもダークな青春と衝撃的な真実に目がギラギラになってください◎
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