今回は恩田陸さんの『黄昏の百合の骨』を紹介します。
3か月前に理瀬シリーズを2冊ダダっと読んでおもしろかったのですが、他の積読を片付けようとちょっと休憩(?)していました。
しかしシリーズ最新刊(『薔薇のなかの蛇』)がこの前文庫化したのを機に、あの世界を思い出し、続編が気になってソワソワなので読んじゃうぞ。
目次
あらすじ
高校生になった理瀬は「白百合荘」と呼ばれる祖母が暮らしていた洋館にやってくる。
そこは周囲から「魔女の家」とも呼ばれていた。
なぜそう呼ばれるのか、祖母が遺した暗い秘密は何なのかを探る中で、毒殺や失踪事件などの不穏な出来事が次々に起こる。
理瀬シリーズ4作目にあたる洋館ミステリー。
(このお話だけで読んでも問題なしです!)
感想
3作目の『黒と茶の幻想』はぶっとばしてしまいましたが、問題ないのでご安心を。(自分に言い聞かせているだけです)
今回のお話はシリーズという枠なしに、一冊の物語としても十分おもしろい内容でした。
もちろん読んでいく途中で前作の設定や人物がサラっと出てくるので、このお話から読んでいる人は「どういうこと?」「誰よそれ?」となる部分があり、さらに謎めいて感じると思います。
ですが、どうにもモヤモヤするならば読後に前作を読めば良いのです。うん。
なるほどそういう出来事があったのねと違う楽しみ方ができます。
要するに、このお話の重要な部分は前作と関係がない新しい設定なので、シリーズを読んでいなくてもメインのお話の筋には支障なしです!
今回のお話は、不思議で幻想的な雰囲気と浮世離れした世界観はそのままに、今まで以上に迫力がありました。
個人的には前作の『麦の海に沈む果実』よりもおもしろかったです。
曰くつきの洋館。
秘密の存在。
数々の不可解事件。
ミステリー好きの私としては、この要素がたまらない。
謎がどんどん吹き出しては、最終章までずっと霞のように漂っていて掴みどころがない。
読み進めるとわかってくるのではなく、謎は謎のまま、更なる謎が登場する。(正真正銘の謎だらけ)
謎が増えてしまって、正直その謎の存在を忘れることもあります。(おい)
あ、そういえばそれ、まだ謎じゃん。的な。(おい)
そのたくさんの謎が最終章で一気にさばかれていく時は目がギラギラです。
一字も見逃すまいという感じです。
あまりにもズルズルと芋づる式に繋がって明らかになっていくものだから、嬉しい悲鳴と高揚感。
人は普通の顔して何を考えているのか、行動しているのかわからないなと思って少し怖ろしくもなりました。
害のなさそうなふりして、とんでもねぇな!
ある人の意外な一面に面食らうのでした。
そういえば『麦の海に沈む果実』では主人公の理瀬の二面性が描かれていましたが、今回は登場人物の二面性が描かれています。
理瀬だけじゃなく、誰もが二面性を持っているのですね。
(↓ちなみに『麦の海』はこちら)
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「ジュピター」という謎の存在も
毒殺や失踪事件も
百合の花を絶えず飾る意味も
大体の謎と事情が明らかになり、犯人も特定したし、もうこれでお開きなムードだったので気を抜いてしまった。
まだ終わっていなかったのです。
ミスリードだったのか~。やられたな~。(嬉しい)
と思っていたらですね、あながちミスリードではなかったのかもしれないという。
あなた、やっぱり黒かよ!( ゚Д゚)
そしてテンポよくというか、嵐が去るようにというか、潔く今回の一連の騒ぎは本当の幕を閉じました。
迫力と怒涛の展開に鳥肌が立って、ポカンとしてしまいました。
私が理瀬だったら完全に命を取られていたであろう。
理瀬が聡明な子で良かった……!泣
そして今作も北見隆さんのイラストが目を惹きます。
『三月は深き紅の淵を』を読んで北見さんのイラストが好きになった私。
表紙、扉絵、さらに挿絵まで。贅沢だ。
最後に
理瀬シリーズの優雅な世界感に今回も魅了され、謎もおもしろかったです。
次作にも期待大◎
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