本好きの秘密基地

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サイタ×サイタ/森博嗣 ※ネタバレ要素あり

今回は森博嗣さんの『サイタ×サイタ』を紹介します。

殺人の動機は一身上の都合だ。

たまったもんじゃない動機ですが、そこがまたお話への好奇心とおもしろさを引き立てます。

可愛らしい表紙の雰囲気ですが、どんな事件が起きるのでしょうか。

今気づいたんだけれど、表紙はウサギの頭からチューリップが咲いているのですが、帯で隠れるとチューリップの花と葉に見える……!

これは仕掛けられたものなのかしら。2度楽しめる表紙、おもしろい!

 

目次

 

あらすじ

依頼人不明、調査理由も不明の素行調査を引き受けた小川と真鍋。

並行して世間では連続爆発事件が騒がれ、そして関係者周囲に殺人事件も発生。

調査対象者、爆弾魔、殺人者。

これらは繋がっているのだろうか。

Xシリーズ第5弾の幕開けです。

 

感想

匿名の素行調査依頼。

世間を騒がせる連続爆発事件。

そして調査中に出くわした殺人事件。

最初はこの3つの事件は別物に見えます。繋がっているとは思えません。

しかしどれも、お話が進むにつれて近辺で、同じタイミングで発生している

これはただの偶然とは思えないほどに、重なっていて引っかかる

依頼者は誰で、目的は何なのか。

爆弾魔チューリップの正体と狙いは何なのか。

彼女らはなぜ、誰に殺されたのか。

そしてこれらはどう繋がるのか。いや、繋がりはあるのか。

謎だらけで、得体の知れないことだらけ。

スリルと不気味さだけがどんどん加速していく

はやく正体と動機を見せてくれ!

もうお手上げ状態でした。先が気になって読む手が止まらないです。

 

小川と真鍋コンビが終盤に核心に迫る時が一番心臓バクバクでした

いやその前からいろいろハプニングが刺激強めでドキドキでしたが。

やばいって。やめとけって。こわいって!(絶叫)

でも、そこからの二人の脱走劇がちょっとコントみたいでおもしろかったです

特に真鍋ね。さすがですね、彼は。

おもしろい対応と機転。もう伝説です。

同時にかっこよかったです。

おもしろさとかっこよさを魅せますミスター・マナベ

この脱走劇、シリーズ史上最高のシーンでした。(まだ一冊残っているよ)

 

今回のお話はとてもスリリングで、緊迫感も凄かったのですが、それでも小川と真鍋のやりとりや空気感は常時ゆるゆるで、笑ったり和ませてくれたりしました

どんな時でも冷静なんだろうな。すごいな。

普通パニックとかビビったりする場面でもゆるゆる会話なんだよ

肝が据わっているな。

ユーモアが世界を救うね。

最後の真鍋と永田のやりとりには、またちょっと違う意味で癒されました。

二人とも、かわいいな~。

お顔がニヤニヤしちゃうな~!

 

爆弾魔だったり、ストーカーだったり、殺人犯だったり。

今回は一般に異常者と呼ばれるような存在がこのお話の中心にいるのですが、鷹知のお言葉にハッとさせられて、まったくその通りだなと考えを改めたくなったので、ここに紹介。

「異常な人間だけが、そんな行動を取る、とみんな思っているけれど、そうじゃない。みんな普通の人間だ。普通の人間というのが、もうだいぶ変なんだよ。変だからこそ、変じゃないように、理屈とか道徳とか、そういうものを考えて、それになるべく添った思考や行動を選択しようと努力をしている」

本文P194より

根本はみんな変人です。

だって他人が今何考えているかなんてわからないじゃない

それを大抵の人は本能的に理屈や道徳でカバーしようとする。

言われてみればその通りだなって思いました。すっごく説得力ある言葉ですね。

 

※ネタバレ区域※

ここから先は全ての事件と人間関係の整理をしていき、犯人の心理も考察するので、未読の方はご注意ください!

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<素行調査の依頼者とその目的>

依頼者はまさかの本人(佐曾利)でした。

どうりで全然、尾行がバレなかったわけだ!

目的はおそらく、自分がとんでもないことをやらかさないように誰かに見張っていてほしかったのかなという感じです。

結局一線を越えてしまったので意味がなくなり、「依頼者はもういないから中止だ」と告げたのでは。

そもそも、その前から一線越えていたけれどね。

<爆弾魔チューリップの正体と動機>

正体はやはり佐曾利

二年前の元同僚宅放火事件を起こした坂下(本人)に爆弾の作り方を教えてもらったのでは説があります。

動機は黙秘しており、謎です。

野田に受け入れてもらえず、何もかもうまくいかず、なんでわかってくれないんだとヤケクソになって魔が差し、それを世間に向けて発散させていたのか

それとも野田に対する警告だったのか。

どちらにしても、佐曾利はにっちもさっちもいかず、誰かに自分の存在感をアピールしたかったのかなと思います(個人的意見)

<三人の女性殺人事件>

妹(野田)を心配するあまり、彼女の悪い仲間を排除したくて犯行に及んだのではという説が有力です。

ちなみに悪い仲間というのは売春仲間かしら。

そして知人を立て続けに殺された野田は恐怖で精神的に追い込まれ、自殺未遂

死にぞこなった彼女を楽にさせるために、佐曾利は手を下したのでしょう。

これが真実ならば、切ない兄妹愛です。

 

どれも動機があやふやなのは、佐曾利が動機を黙秘しているからです。

ここがこのお話の最大のポイントでもあると思います。

動機まで全てを白状するのはミステリー小説の中ではよくあることですが、そこを不明にすることでその人の考えていることなんて所詮他人にはわからないというリアリティを持たせています

つまりどんな犯行も結局は犯人の一身上の都合なのです。(帯の言葉や……!)

動機は必要かどうか。

このことについても、作中で軽く議論があり、なるほどそういう意見もあるのかと勉強になりました。(詳しくはこの本を読んでみてください☆)

動機がはっきりすれば皆スッキリするけれど、果たしてそれは知るべきことなのか。

私としては好奇心で知りたいと思ってしまうのですが、そう言われると知らない方が模倣犯とか現れる確率が……。

そうよね。

難しいです。(思考放棄)

 

最後に

ミステリーとしても緊迫感すごくて楽しかったのですが、人間心理についても考えさせられる深いお話でした◎

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