今回は永井するみさんの『ダブル』を紹介します。
永井さんといえばインパクト強めの狂気を感じさせるお話で、どれもおもしろいのですが、狂気を超える狂気とな!?
いつにも増して期待しちゃう帯のお言葉。
楽しみです……!
目次
あらすじ
葛西周辺で起きた、一見共通項のない別々に見える3つの事件。
不可解な事件たちを調べていくうちに、どれにもある人物が繋がっていく。
一連の犯人と思われる人物の視点と、事件の真相を追う記者の視点が交差し、そこから見えてくる真相とは。
感想
狂気を超える狂気って、そういうことだったのか……!
そっちか。そっちだったのか。騙された。考えもしなかったよ。
言葉通り、今まで狂気を感じた人を更に超えていく狂気。
まさか、あの人も関わっていたとは。
構成がすばらしいです。
こわいよね~。こんなことで簡単に人は排除されちゃうんだもんね。
でも、こういうのドキドキさせられて、些細な動機だからこそ謎が強くなって、意表を突かれて、たまらないのよね。
見たところ厚めでボリューミーな内容だなと思っていたのですが、ぐんぐん読み進められてしまうから、意外にもあっという間に読了しました。
どのように二人は交差していくのか。
次は何が起きるのか。
最初の被害者なぜ、そして一連の犯行はどのようにして行われたのか。
気になる気になる。
少しも飽きさせる隙を与えない。
だから全然萎えない。
そして読める展開だったとしてもドキドキしてしまう。
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このお話、なんといっても設定が秀逸だと思うのです。
この設定だからこそ、事件がややこしく、証拠や自白させることが難解。
実際に犯行に及んだのかはさておき(ネタバレになっちゃうからね)
妊婦さんが犯行を犯すとは考えられないじゃないですか。
身重な状態で、連続殺人なんて。
さらに可愛らしくておっとりした雰囲気ときている。
そんな彼女に対して記者がどのようにして疑いを感じるに至るのか。
そしてどのように証拠を集め、身重な相手を無理なく追い詰めるのか。
追われる妊婦さんは、疑いの目をどうはぐらかし、回避していくのか。
真実までの道のりは、この三つがとにかく見どころなのです。
どちらの視点もドキドキです。
被害者の私物収集癖も狂気を増幅させて、不気味さ増し増し。
真実が明かされる時は、思っていた方向とは違って衝撃的でした。
さすがに紅茶を出されるくだりは「記者! 飲んではダメだ! それには絶対何か混入されているぞ!」とすぐに感づきましたが、その後口封じのために監禁でもされるのかしらと甘い予想をしておりましたら。
真実が自らの口から語られ始め、これはヤバいフラグ。
え、あなた、庇いに来たんじゃなくて?
あなたも、いや、あなたが……!? (読んでのお楽しみ)
そこからは更なる狂気が充満です。
読んでいて、とにかく焦ります。(私が焦っても意味がないのに)
さすが連続殺人犯。立場も臨機応変に利用してすり抜けてしまうんだから。
捕まえられないことがじれったい。
その後、捕まってくれたことを祈りたいです。
最後に
久しぶりに触れた永井するみさんの作品。
狂気を孕むミステリーの極上さに、やはり好き度が増すばかりです◎