本好きの秘密基地

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カザアナ/森絵都

今回は森絵都さんの『カザアナ』を紹介します。

1年ちょっと本棚で出番を待っていてくれました。(さっさと読め)

表紙が素敵で即決で購入。

森絵都さんといえば『カラフル』が名作ですね。

何度読んでも感動して、大切なものを気づかせてくれるお話。

森絵都さんは温かいお話を描くイメージがあるので、この本で心を温めてもらおうかという目論みです。

 

目次

 

あらすじ

監視社会となり、観光大国を目指すにあたり、規定がとても厳しくなってしまった近未来の日本のお話

ある日、中学生の里宇の前に不思議な庭師たちが現れる。

彼らはそれぞれ、石、虫、空と心を通わせることができるという奇妙な力を持つ「カザアナ」と呼ばれる者たちだった

里宇の家族と共にカザアナたちは、自分たちの力を駆使し、この生活が窮屈になってしまった日本で、問題を解決していく古典×近未来×ファンタジーのエンタメ小説。

 

感想

森絵都さんって、こんなお話も描けるのか!

今までの森絵都さんのイメージとは少し違う雰囲気のドタバタ系ほっこりファンタジーで、さらに各章の冒頭に古典の語り(この古典がしっかり近未来に繋がるのよ)

新感覚だ。

古典の部分は難しいと感じる人もいると思うので賛否両論ありそうですが、私は歴史もの大好きなので、なんならメインのお話よりも好きでした

というのも、近未来が舞台(メイン)となると、設定が難しくて読みづらかった……というのが正直なところでして。

特に説明なしに、この世界の用語やルールがわんさか登場します(第三話あたりに説明がありましたが)

そこに戸惑っちゃう。まあ、読み進めていけば理解するのだけれど。

個人的にはスムーズに読みたいので、用語解説が欲しいです。

でも「ジャポい」は流行りそうだなと思いました。使ってみたい。(古風なって意味です)

 

一番おもしろかった要素は、登場人物が個性的な人ばかりなところです。

「カザアナ」と呼ばれる、神羅万象系超能力者はもちろんのこと、それ以外の一般人もキャラが濃いです。

第三話に登場する十文字さんは特に。登場人物の中で一番ツボでした。

亡きダディも、なかなかインパクトあるキャラ。

 

カザアナには

石を読み、その地にねむる記憶をあてる石読

虫の気を読み、みずからの気とかよわせる虫読

空を読み、雨風のうごきをあてる空読

鳥とかよいあう鳥読

その他に獣読、草読、月読、水読など

いろんな種類のカザアナがいて、お話を読みながら、私だったらどれになりたいかな~なんて考えたりするのも楽しかったです

 

『第一話 はじめに草をむしる』

近未来の設定がシビアで、生活するのに窮屈さを感じる。

だから鬱々としたり、嫌な汗をかいちゃうようなお話なのかしらと想像するも、へんてこりんな世界観にほっこりさせられ、意外にも愉快で緩いお話なのねと安心しました。

虫のコサックダンス、私も見てみたいです。

 

『第二話 自分のビートで踊る』

自分の趣味が強制的に排除されるなんて、絶望ですよね。

それに加えてあんな現場を目撃したら、そりゃ引きこもりたくもなります。日本に絶望します。

でも最後はコミカルな流れになって、またまたほっこり。

家庭教師AIのニノキンは、全て統計で語るので、中身というか生き物特有の熱みたいなものを感じないのですが

「いつも楽しそうに笑ってろ。人は悲しそうな人間には同情しても、友にはしようとしない」

本文P94より

この言葉は、なんだかハッとさせられました。たしかにな~って思っちゃう。

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『第三話 怪盗たちは夜を翔る』

先ほども書きましたが十文字さんが良いキャラしているのよ!

燃え尽きたというか、もう全てを諦めたおじいさんという印象から一変、意外と情熱的で、意外とストイック

でも真面目さはそのまんま。

人間だけが全てじゃない。虫や石、自然のもの全ても味方につく。

そんなことを十文字さんが身をもって教えてくれました。

 

『第四話 しょっぱい闇に灯る』

社会情勢、いや世界情勢がベースとなり、お話のスケールがどでかくなりました。

世界をどうこうするって、当たり前だけれど難しい。

アメリカ大統領と早久くんの関係性にほっこりしながらも、早久くんすごいなと思う。

反社会組織ヌートリアの全貌も、ここに来てやっとわかってきます。

ヌートリアのリーダーであるトノもキャラが濃くて、そこが緊迫感ではなく緩さを与えてくれます

 

『春のエピローグ』

早久くん、かわいいなあ!

ピュアというかなんというか。

このお年頃で、好きな子をまっすぐに愛して、心配して、それを無意識に出しちゃうなんて、なんて可愛らしい素直な子なんだ。

最後の最後に、こんなほっこりキュンキュンな展開が来るとは。

終わり方も、読んでいるコチラまでがニヤニヤハッピーになってしまう素敵な幕閉じでした。

 

最後に

カザアナという超能力者の設定が魅力的な、エンタメファンタジー

森絵都さんの作品の幅はどこまでも広がっていきそうです◎