私の好きなバンド、おいしくるメロンパンの『桜の樹の下には』という曲が、この短編集に収録されている『桜の樹の下には』にインスパイアされて作詞したと知り、いつか読んでみたいと思っていました。それから数年の時を経て、やっと読みました!
ちなみに『檸檬』が代表作であり、処女作だそうです。(有名らしいが知らなかった)
目次
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あらすじ
31歳の若さで亡くなった梶井基次郎さんの代表作である『檸檬』『城のある町にて』『桜の樹の下には』など14編からなる短編集。
感想
久しぶりに純文学を読んだので、最初は難しい言葉もあって苦戦しましたが、だんだんそれにも慣れてきて、テンポよくスラスラと読むことができました!
短編集なのですが、全ての話にまとまりがあって(共通点や雰囲気)この一冊がひとつの立派な作品に仕上がっている印象を受けました。
この短編集の雰囲気は病鬱と不眠、それに対抗するための刺激と興奮を探し、味わう日常。重くて苦しい題材ですが、描写が詩的できれい。噛みしめるように読みました。
しっくりくる描写には「こんな表現があるのか!」と感動するし、意味はわからないけれど、なんか好き! という描写もありました。日本語っておもしろいなとも思いました。
どの話にも肺結核、不眠、身内の死が設定にあって、最初の内は「この人も肺を患っていて不眠なのかよ!」と思っていましたが、だんだんお決まり設定がおもしろくなり、「今度はどんな患者さんの話かしら?」と楽しんでいました。(内容的に楽しむのは不謹慎だけれど)
でも、この作品は気持ちが沈んでいる時は避けた方がいいかなと、個人的には思います。メンタル万全の時に読むことをおすすめします。でないと、おそらく陰鬱の波に飲み込まれます。たぶん。
あと、純文学は日本語だけというイメージが強いのですが、横文字が多め。
梶井さん、この時代で横文字たくさん知っていて、ギャップがすごいです。(偏見だったらごめんなさい)
全部の物語に感想を書いていくと膨大な内容になってしまうので、お気に入りの物語の感想を手短に書いていこうと思います!(手短にできるかしら)
『檸檬』
表題作であり代表作であるこの物語。一番好き。
めちゃくちゃ有名な物語らしいですが、じつは私、初読です。教科書に載っていたらしいですが、私の通っていた学校は専門学校みたいなものだったので、そこまで授業が進まず……笑
本でタワー作って、仕上げに自分の心を幸福にしてくれた檸檬を添えて出来あがった作品。ここだけでも、なかなかすごい事しているなと思っておもしろかったのですが、さらにそれをそのままにして去っちゃう!
しかも檸檬を爆弾に見立てて、丸善を爆破するテロリストになった気分で立ち去るという!
たしかに憂鬱な毎日を送っている病人からしたら、この妄想は刺激的でおもしろく、楽しいよな。妄想する分には問題ないし。自分がものすごいことをしでかした気分は、妄想であれ、痛快だろうな。
短い物語なのに、濃い物語でした。檸檬みたいに爽快。
『城のある町にて』
短編だけれど6話からなる物語。
登場人物が多めで、どの人も個性が強いなと思いました。
そのため6話全部おもしろかったです。ある日常の断片に過ぎないのですが、印象に残る濃いめの日常。主人公の感性もなかなかおもしろかったです。
『Kの昇天』
この物語もなかなかおもしろい!
ある人の手紙の内容。K君が月世界へ行ったという幻想的で不思議な証言。
実際はたぶん自殺なんでしょうが、動機はきっと月へ昇りたかったからなんだろうな。
この手紙の書き手が言っていることが本当ならばね。
着眼点がおもしろい作品です。
『冬の日』
この物語は特に描写がきれいでした。他の物語もそうだけれど、特に。陰鬱なのに、きれい。
友達の折田との関係性が素敵でした。というか、折田の人間性が素敵。かっこいい。
病人である主人公を邪険にせず、気遣いが上手。好き。
『桜の樹の下には』
来た! 私の大本命!!
出だしからインパクトすごくて笑っちゃいました。
桜が美しく咲きほこるには訳がある。こんなにも妖艶に美しく咲きほこるのは、桜の樹の下に……。
発想がすごい。違うでしょと冷静に思いながらも、なるほどと感心しちゃう。想像力が爆発している。(褒めています)
彼は自分の考えついた原因を確信して、考えつく前のモヤモヤや不安はすっきりして、無事お花見が楽しめるようになったらしいです。おもしろい。
『ある崖の上の感情』
彼の趣味は、言ってしまえば変態だし、現代だったら警察沙汰になり兼ねない。
だけど、気持ちわかる。私も人間観察好きな人だから。
でもさすがに、そこまではしない!笑
冷静に振り返ったら、ちょっとこわい。
『のんきな患者』
またまたでました、肺が悪い主人公!
母や附添婦が根拠なく「これ食べれば良くなるよ」と、通りすがりの人が「こうすれば良くなるよ」と寄ってたかって主人公に気味の悪いものを口に入れさせようと、信仰させようとする。
この様子がおもしろくもあり、現代でも似たようなものがあるなと思ったり。
迷信、宗教、マルチ商法……。
昔からこういうのは絶えないのだな。
『瀬山の話』
なんと『檸檬』が出てきた! 言い回しとかは違ったけれど。
『檸檬』って瀬山が主人公だったのか。思わぬところで繋がりました。
解説でありましたが、この『瀬山の話』に出てくる『檸檬』は3回目の書き直し原稿らしく、作品としての『檸檬』は4回目の書き直しで完成型らしいです。
瀬山は不思議で壮大な想像力の持ち主でした。『檸檬』からも溢れていたけれど。
イマジネーションがすごい。(横文字にしただけ)
最後に
きれいで繊細な、芸術的な文章を書く梶井基次郎さん。
この表現力に何度も感動しました◎