今回は宮部みゆきさんの『おそろし 三島屋変調百物語事始』を紹介します。
宮部みゆきさんは有名ですが、今まで読んだことがありませんでした。いつかは読みたいと思っていました。(有名作家・作品だからこそ後回しにしちゃうね)
一応『ブレイブ・ストーリー』はアニメ映画の方で見た事があります。当時、友人が激ハマりして学校でも話題になっていました。懐かしい!
ホラーが苦手な私ですが、何故か百物語は興味あるんですよ。なんでだろう。
そういうわけで、帯の言葉にワクワクして、怖いもの見たさで。
ちなみにこのシリーズ、8作目が最近発売されました。じつはその最新刊を発見したのがきっかけです。(今まさに、最新刊読みたさを堪えているところ)
どんな百物語が待ち受けているのか……!
目次
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あらすじ
ある事件がきっかけで心を閉ざしてしまった女性が、叔父夫婦のところで暮らし、働くことになった。叔父夫婦の留守中に来た人から不思議な話を聞かされたことをきっかけに、叔父の提案で不思議な物語(変わり百物語)の聞き手をするという役割を任されることになった。不定期に訪れる語り手たちは、自分の身に起こった世にも奇妙なことを語って去っていく。
三島屋シリーズ第1弾。
感想
変わり百物語なので、どの物語も身の毛がよだつ物語ではあるのですが、そのおそろしさを上回るほどの哀しみ、切なさが詰まった物語でした。おそろしい出来事だけれど、その背景にある事情や、当事者の後悔や哀しみ、やりきれなさという気持ちの方が圧倒的に心に残ります。
つまり、おそろしい話というよりは切なくて哀しい物語たちでした。
おそろしい話といっても、夜うなされるような感じではありませんでした。ちょっとマイルドです、その辺は。(個人差があります)
ひとつひとつの物語が印象的で、おもしろいです。先が気にるやつ。
情景描写がファンタジーアニメ映画を見ている感覚になるほど鮮やかでわかりやすかったです。アニメ化してほしい。でも百物語だから、かなり長いアニメになるか。第何期までやるんだろう……。(アニメ化の噂は今のところありません)
今調べたら、2014年にドラマ化されていました!
見たい見たい見たい!!
ホラーは苦手だけれど百物語と聞くと好奇心を抑えられない私としては、おそろしいけれど怖すぎなくてちょうどよく、めちゃくちゃ楽しく読んでいました。
『曼珠沙華』
あまり縁起の良くない花ということは知っていましたが、私は好きです。見た目かっこいい花だし、秋だな~って思うし。
この物話ちゃんと鳥肌が立ったんですが、哀しい気持ちが圧倒的でした。
わかる。わかるけども! でも、お兄さんがかわいそうだよ……。とずっと思っています。今でも。
オチがまさかの展開でびっくりでしたが、納得もいく終わり方でした。呪縛から放たれたんだろうな。そう思ったら、ちょっと穏やかな気持ちになりました。
この物語だけが唯一、救いのある終わり方だったので一番好きです。すっきりとした読後感。
『凶宅』
百物語っぽさが強め。そして最後まで謎めいていて、不思議すぎる物語でした。
これもオチが予想だにしない展開で、そこがおもしろかったです。特に何も起きなかったんかーい! と拍子抜け。語りが終わったと思ったら、招かれたのは君じゃないのかーい!!(読めばわかります、多分)
よく考えればそうなんです。冷静に考えれば、特に何も起きないなんて百物語は存在しないんです。騙されたなあ、まんまと。
『邪恋』
主人公が心を閉ざしたきっかけとなった出来事が、この物語です。
苦しかった、切なかったあああああ!!
複雑な関係だったがゆえに起きた事件。松太郎に感情移入しちゃう。不憫でならない。
でも、松太郎はきっと主人公を恨んでいない。むしろ逆。
我慢して我慢して、折り合いをつけて堪えていたのに、良助にあんな態度を取られて、自分のことではなくて、おちか(主人公)のことを想うがゆえに事件を起こしてしまったんだと。こんなやつにおちかを任せるなんてできない、止めなけらばと思ったんだろうなと、私はそう思います。実際はどうか知らんけど。
そもそも先に喧嘩ふっかけてきたの、あっちだしね。
「朝から泣くと験が悪いとか、嫌がる人もいますけどね。あたしは気にしやしません。悲しいときは、朝だって晩だって悲しいんですから」
本文P189より
ちょっとお話が逸れますが、女中のこの言葉が優し過ぎて沁みました。
『魔鏡』
女の恨みは怖いね~と思う物語です。
現代でもタブーですが、禁断の恋だったために起きた事件。この事件だけでも濃厚だったのに、物語の核心はその後の事件という2段階。
何も知らないで気丈に振る舞っていただけなのに、巻き込まれてとんでもない目にあったお吉がまじでかわいそう。嫁いだ先が悪すぎた……。
一家全滅も、こんな闇と事件が起きてしまったら頷けます。
「鏡」とタイトルにあったので、てっきり元持ち主が鏡に映るというホラーを想像してビクビクしていましたが、違ってホッとしました。でも、違う意味でおそろしい。
『家鳴り』
今までの物語の総集編みたいな感じです。事件、物語のその後みたいな。
さらに言うと『凶宅』の続きです。
この物語は少し冒険ファンタジー味がありました。ハラハラドキドキでした。そんなことして大丈夫なの!? 臆病な私は、勇気ある主人公の行動にハラハラしまくりでした。
みんな勢ぞろいで、力を合わせてラスボスをやっつけようとする感じが、今までの物語と雰囲気が違って、これはこれでおもしろかったです。ちなみにラスボスみたいな立ち位置のやつは『千と千尋の神隠し』のカオナシを連想させられました。私は。
元の世界に帰る時の道しるべは粋でした。『魔鏡』でチラッと出てきたミカン。なるほどそう繋げてくるか! と感動したし、ニヤニヤもしました。
※これは変わり百物語であり、冒険ファンタジーではありません。
最後に
『家鳴り』で、まだまだこれからだよ感を出していたので、その煽りにウキウキワクワクしております。これからどんな百物語を聞けるのか!
このシリーズは是非とも読み続けたいです◎