今回は赤川次郎さんの『マリオネットの罠』を紹介します。
赤川次郎さんは誰もが知るレジェンド的存在で、それ故に「いつか読む」を繰り返して、やっと読む気になりました。はじめまして。
赤川次郎さんといえば三毛猫ホームズシリーズなのですが、ここはあえて(私の知る限り)知名度が低めの一冊をチョイスしました。(本音は、装丁に惹かれただけです)
目次
あらすじ
あるお金持ちの館に幽閉された娘には、家族が必死に隠すほどのある秘密があった。
街中で起こる連続殺人と、そのお金持ち一家の闇は繋がっていた。
華麗に次々と起こる連続殺人と一家の裏事情が、絶え間なく驚きの展開を見せるサスペンスミステリー。
感想
冒頭から最後まで絶え間なく事件が起きていて、退屈させない勢いで駆け抜けるお話でした。
終始漂う不穏な空気、洋館、不規則な連続殺人、一家のもう一つの闇。
この設定だけで、ミステリー好きとしてはワクワクしちゃいます。
しかもバタバタと余すことなく(?)殺人が起きる展開には、恐怖の中に高揚も隠し切れないほど感じて、自分の心の麻痺具合も怖ろしいです……笑
ターゲットが不規則なので、この連続殺人はいつまで続くのかというゴールの見えない感じも、スリル感を高める要因なのかな。
展開が二転三転していく点も、このお話のおもしろポイントです。
死亡していたと思っていたら生きていたり。
と思ったら、死亡していたり。(!?)
すべて単独犯だと思っていたら、なんと終盤にとんでもない展開が待ち受けていたり。
普通に彼女の連続殺人犯行劇としてだけでも、かなり感情を揺さぶられる濃い物語になっているのに、そこで終わらないから衝撃がズドンと来るのです。
彼女の一連の犯行劇だけでも読み応えばっちりなのに、その上を行く真相。
でもこの真相がないと、たしかに残された伏線も回収できないし、タイトルの意味も回収できない。
ということは
この衝撃展開(真相)はやっぱり必要です。
つまり何を言いたいのかというと
彼女の一連の事件が終息したからといって、第四章までで納得しないでいただきたい。
終章こそが本物であり、このお話の一番の盛り上がりなのです。
最後まで気を抜いてはなりません。(気を抜いた人です)
気を抜くとね、もう
え!? は!? なんたること!!!
の渦に飲み込まれて、裏切られた心地になります。(最高です)
はじめての赤川次郎さんだったのですが、読みやすいですね。
さすがは流行作家さん。
ちなみにこのお話、赤川次郎さんの初長編らしいのですが、そうとは思えないくらい完璧な構成でした。すごいです。
これから赤川次郎さんの他作品を読んでいきたい所存ですが、既にこの『マリオネットの罠』は、この先もずっと私の中の赤川作品上位に君臨し続ける予感がしております。
本作しか知らないのに、そう思うのです。
それくらい印象的で、目が覚めるような展開と構成で、完全に私好みなのです。
※ネタバレ区域※
ここからはちょっとだけ、このお話を読んでいて感じたことを書きたいのですが、ネタバレ要素を含む言葉が出てくるので気をつけてください!
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医者と自殺志願者少女のシーンは特に印象的で、読後の今でも心に残っています。
悲し過ぎる。切なすぎる。
彼の存在で、生きる希望を芽生えさせた矢先にこの事件。
さらには自分まで消されて、死後、濡れ衣を着せられる。
しかも愛した人を殺害したという罪を。
胸が苦しくて、この時は雅子を恨みましたね。(もっと早い段階から恨めよ)
みどりが人体実験させられ、亡くなるシーンは、一番残酷でさすがに軽く悲鳴が出ました。これもつらかったです。
なんといっても、最後の真相が暴かれるシーンはノンストップで読んじゃいました。
最近ではよくある真犯人ですが、それでもやっぱり衝撃的です。
雅子は、まんまと彼の「マリオネットの罠」にはまってしまった。
自分が彼のマリオネットと化してしまった自覚はあったのかどうか
罠にかかったポイントは、恋が先か復讐心が先か
そこも考察し甲斐がありますが、恋に落ちたのは事実です。
雅子の切ない最後も、夫の罪を知らされる前の天真爛漫な妻の姿も
どちらも痛々しいほどに切ない。
修一は頭もきれるが、女たらしでもあるのかしら。
最後に
はじめての赤川次郎さん。
1冊目にして良作に出会ってしまいました◎
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