今回は内山純さんの『みちびきの変奏曲』を紹介します。
表紙の女の子がかわいくて、タイトルがきれいで。
内山さんは以前『土曜はカフェ・チボリで』を読んだことがありまして、日常のほっこりミステリーのイメージがあります。
今回もほっこりな謎解きなのでしょうか!
目次
あらすじ
通り魔に襲われて亡くなった女性の最期に出くわした主人公。
彼女は亡くなる直前に「きらきら星」を弾く手の動きを繰り返していた。
彼女が最期に伝えたかったこととは何だったのか。
感想
あらすじの通り、最初は重くて悲しい雰囲気なのですが、全章とも最後はほっこりします。
主人公が順番に被害者の知り合いを訪ねていく。
その人たちはそれぞれ悩みを抱えていて、主人公や被害者を通して、気持ちを改めたり、気づきを得たりします。
それと並行してリレーのように、変奏曲のように、少しづつ繋がって明らかになる被害者の人柄と残しされたメッセージ。
彼女の残した「きらきら星」の意味を探るミステリーであり、彼女を知る人たちの日々のモヤモヤを晴らす優しい連作短編でもあります。
登場人物のモヤモヤは、生きづらさを感じている人にとって共感できるもので
みちびき出された考え方は、そんな生きづさを軽減してくれます。
そういう捉え方があるのか。
そう受け止めれば良いのか。
そういう勘違いを起こしている可能性があるのか。
性格にコンプレックスを抱えている人、人間関係が上手くいかないなと悩んでいる人にヒントをくれる。
ちなみに私が素敵な捉え方だなと思った考えは
「私に色がないということは『誰のことも受け止められる』ことだ」
本文P41より
という考えです。
主張ができない、個性が薄い。
それは何にでも染まれることができて、素直に受け止めることができるということ。
相手に共感できる、感受性が豊かであるということ。
自分の意見がない人は責められがちですが、こんな素敵な要素があるということを改めて気づかせてくれました。
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主人公が根気よく人々を訪ねて、全貌が見えて、彼女のメッセージもほぼ判明。
そこにまさかの衝撃展開が起こります。
ほっこり続きだったので、完全に油断しました。
そうかそうか。それでそんなに彼女の残したメッセージに執着していたのか。
ただの好奇心だけではなかったのか。
主人公の本当の気持ちや、彼女との関係性が想像よりも重みのあるもので、じわっと胸が熱くなりました。
人は誰でも誰かのきらきら星になれる。
本文P241より
なんて素敵な言葉なんでしょう。
このお話を読んだ後だからか、余計に説得力があります。
どんな人でも、本人は気づいていないだけで、夜を照らすきらきら星のように誰かを導いている。
生きている意味はある。
このお話の中では、主人公が一番星並みにキラキラと導いていたように感じます。
章ごとにサブタイトルのようなものがあるのですが、それがまた秀逸です。
タイトルに「変奏曲」と付いているだけあって、章ごとのサブタイトルが音楽記号の意味のようになっているんです。
アンダンテで言う「歩くように」みたいな。
この遊び心が、しゃれている。
読む際はその部分も目に留めてみてください。さらに楽しめると思います。
最後に
重くて不穏なお話かと思ったら、読後は感動的でほっこりするという意外性。
対人関係や生きる意味に悩む人に、手に取っていただけたら◎
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