本好きの秘密基地

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こちらあみ子/今村夏子 ※後半ちょっとネタバレ注意

今回は、今村夏子さんの『こちらあみ子』を紹介します。

 

以前からよく目にしたり、耳にしたりしていた作品で気になっていました。

映画『花束みたいな恋をした』の作中にも度々さらっと出てきていました。

そこでは

 

『こちらあみ子』も良いけど『ピクニック』が最高!」

 

「きっとその人は『ピクニック』を読んでも何も感じないんだろうね」

 

という会話が出てくるので(※ニュアンスです)、しきりに出てくる『ピクニック』がどんな話で、どう最高なのか気になりました。

 

目次

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あらすじ

独特な世界が繰り広げられる日常物語の3編です。

 

簡潔な感想

結果を先に申し上げますと、個人的には3つの話のうち『こちらあみ子』が優勝でした。他も良かったけれど、一番印象に残るお話でした。

『ピクニック』じゃないのかよ! と思った方、思わせぶりごめんなさい!!

 

 

詳細な感想、考察

※ここから先はネタバレを含みます。知りたくない方は、一旦この小説を読んで、また戻ってきてください!

 

 

まず、どの話にも共通する事ですが、不思議ワールドでした。独特な世界観と言うのでしょうか。クセになる、おもしろい、なんとも不思議な世界観。好きです、こういうの。

そして、こちらも共通するのですが、続きがあると思いきや、なんと話が終わる。

そう、さも「まだまだ話は中盤ですよ~」と思わせておいての「え、終わりだよ?」という罠。(いい意味です)

一種の恋愛テクニックみたいな手法ですね。まんまとはまりました。

『こちらあみ子』

ジブリ映画になってくれることを強く希望します。この独特な世界観、ジブリっぽい。

読んでいる間、頭の中で自然とジブリ映画『こちらあみ子』が放映されました。

 

偏見な言い方ですが、あみ子は普通の子とは違うなと思いました。

そもそも普通って何? って怒らっれちゃうかもしれませんが。要は個性が強い子と言いたいのです。

常識とか、他人の気持ちとか、空気、誰にどう思われるとか。そんなもの、あみ子の中にはなくて、自分の気が赴くままに生活をする。思った事は躊躇せず口にする。何をされても傷つかない。(強っ)

 

そういう生き方をする人って、周りから、世間から疎まれるじゃないですか。疎まれたら、孤独な上に叩かれて生きづらいじゃないですか。

だから私やその他大勢は、この世間で生きやすくする為に、常識に沿って、相手の気持ちを考えて行動する。

でも、たまに窮屈に感じるんですよね。疲れたりしますよね。

 

だんだん、あみ子が羨ましくなります。孤独だけど、自由に振る舞えるところに。

それと同時に、解説のお二方も書いていましたが、世間から逸脱する勇気をくれます

こんな風に生きるのもアリかなって。

でも、やっぱり孤独は嫌だし、疎まれたくない。この世界で生きづらくなるから現状維持なんですけどね。勇気だけもらって、今まで通り生きていきます。(堂々巡り)

 

個人的に、あみ子好きです。クセ強いけど。

 

「自由の象徴じゃのう。ま、いじめの象徴でもあるけどの」

 

というセリフ。ハッとさせられました。自由人=いじめられっ子

自由に生きるには、もれなくいじめられる世界。

 

ちなみに、このセリフを言った男の子。最後まで自由人あみ子を、その他大勢と平等な接し方をしていて、人として好きです。推せる。

 

あみ子が、のりくんを好きになったきっかけも素敵でした。

 

短編なのに長々と語れてしまうあたり、これはすごい作品だと改めて思います。

 

 

『ピクニック』

さてさて、お待たせしました。冒頭で触れたこの作品の時間です。

こちらは、『こちらあみ子』とはまた違った不思議なお話でした。1話目がインパクト大だったためか、比べると少しマイルドな印象です。

へぇ、ふぅん、ほうほう

……え! どういう事?! どういう状況?!

……うんうん。ん? あれ、終了? 続きは? どうなったの?

という調子でした。あれよあれよという間に終わっていました。

『こちらあみ子』では力説していたのに、雑ですいません。でも本当に何とも言えない読後感だったのです。

 

ある人物の、とある日常を覗き見たような感覚でした。

 

後々、話の流れを思い起こして整理してみたところ、話の本質に気付きました。多分。

読んでいる最中に度々、話の本質を見抜くための伏線というか、フラグというか、ヒントが出てきていました。しかし、私は少し引っかかると思いながらも、軽く流して読み進めてしまいました。今思えば、そこで気づけよ! とツッコみたくなります。

私が思うに

彼女は虚言癖があり、それを盛り上げて、後に引けなくさせた

という話かなと思っています。

奥が深い……。

 

 

『チズさん』

1話目で語りすぎたので、ちょっと巻きでいきます。(チズさんに失礼)

 

この話はすごく短かったです。ショートショートかな。この話こそ、続きを紛失したのかと疑いたくなる終わり方でした。今村夏子さん、もっとチズさんの話を聞かせておくれ! という感じでした。急に終わってしまってびっくりでした。他作品もそうだけれど特にこちらは。

 

ほんの少しの話なのに、お決まりの不思議ワールドに取り残されて、こちらもインパクト大です。一瞬で引き込まれて一瞬で措いていかれます。

こんな読書体験は初めてでした。

 

最後に

こんなに長く感想を書くことになるとは思いもしませんでした。

今村夏子さん、おそるべし。今後も期待が高まります◎