本好きの秘密基地

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同志少女よ、敵を撃て/逢坂冬馬 ※後半からネタバレ注意

今回は、逢坂冬馬さんの『同志少女よ、敵を撃て』を紹介します。

今年の第11回アガサ・クリスティー2022年本屋大賞受賞の話題作です。

私は本屋大賞発表直後に読み始めました。

 

目次

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あらすじ

第二次世界大戦独ソ戦が舞台で、当時活躍した女性狙撃手たちの物語です。

 

完全に戦争ものじゃないですか。私の苦手とするジャンルでして。

本屋大賞に選ばれなければ手に取らなかったはずです。そう、選ばれたからこそ「好き嫌いは良くないよな……。すごいっぽいし読んでみるか……」と重い腰をあげたという経緯であります。

 

簡潔な感想

本屋大賞に選ばれてくれてありがとう! おかげで素晴らしい作品と出会えました!

好き嫌いという、しょうもない篩い(ふるい)にかけて、作品に出会えない悲劇を回避できて感動しております!!

逢坂冬馬さん、この世に、この戦争の恐ろしさを忘れかけた世の中に、この作品を生み出してくれてありがとうございます(嬉泣)

 

社会科を、特に第二次世界大戦あたりの歴史を苦手としていた私は、基礎知識が欠けており、読むのに大分苦戦しておりました。

用語の意味がわからない、聞いたことあるけどなんだっけ、そこどこ、なんで、何それどういう事……のオンパレードで、読む手を止めては調べ、また読み進めてはつまづき……。最初は、無事理解して読み終えることができるか不安で、私と作品の戦況は不穏な状態でした。

 

が、しかし! (まだ感想続けますよ!)読み進めていくうちに、作品の世界にのめりこんでいました。

登場人物それぞれが個性豊かで魅力的なのです。愛着も沸きます。

そして人間ドラマが最高なんです。

更に、戦争を経験した事のない私たちには想像できない、当時の人々の心境や葛藤、絶望や悲しみ、苦しみ、垣間見える希望や喜び……

当時の人はこんな気持ちで生きてきたんだな。私たちの当たり前は、彼ら彼女らにとっては当たり前ではないし、彼ら彼女らの当たり前は、私たちにとっては理解し難い部分がある。

 

戦争は人を狂わせる。人間が人間じゃなくなる。

戦争からは絶望、復讐しか生まれず、失うものの方が圧倒的に多い。

わかっているつもりでも、戦争の醜さがリアルに伝わりました。体験談よりも、ずっしりと。

 

同志少女よ敵を撃て。彼女らの本当の敵とは何なのか。

この部分を読後に考えると、この読書体験の充実感みたいなものがグッと高まります。

(私個人としての見解は、記事の最後に書きましたので是非に◎)

あと、戦争の事を調べたり、作品で知ったりするので、読む前の自分よりめちゃくちゃ賢くなった気分になり、自尊心が高まります。(※個人差があります)

 

さて、

これから読むよ! という方のために、お役立ち用語講座!

私が作中でわからず困った用語などをまとめますので、良かったら参考にして読み進めてみてください。(先輩面失礼します)

 

赤軍

 当時のソ連軍の事。正式名称「労農赤軍」。

 

パルチザン

 敵の侵略に抵抗するためにできた非正規の軍隊の人たち。地元の軍隊みたいな。

 ※レジスタンスに似ているけれど、レジスタンスは民間、パルチザンは軍人。

 

フリッツ

 この作品でいうとドイツ兵。

 

コサック

 作中で説明がありますが、簡単に言うとウクライナあたりの遊牧民の軍事集団。

 

コルホーズ

 ソ連の政策による集団農場。

 主な農具等は共同だけど、家屋や菜園、家畜等は私有が認められていた。

 獲れた作物は自家用に、または売る事ができた。

 しかし!実態は、国家が上手い事、農産物を強奪する為の仕組みたったのだ……

(詳しいやり口(言い方悪っ)は、長くなるので割愛)

 結果的に、農民たちは村や農場に縛り付けられて奴隷状態に……

 

NKVD

 内務省みたいなもの。秘密警察(政治警察)や諜報機関等いろんな業務をしている。

 

再読してまたわからない用語が出てきたら、再度こちらに更新します!

ちょっとギブアップ……(投げ出しちゃう)

 

詳細な感想、考察

※ここからはネタバレ含む感想なのでお気を付けください!

 

 

と言っても、この作品の素晴らしさ、伝えたい事は、既に上の方で余すことなく書いたので。

この場面が心に残ったよって感じの、細かい部分を書いていきます。

 

まずね、バロン。

まあまあ序盤の場面なんですけれど。一番つらかったです……

その後、登場人物バタバタ居なくなるんですけれど、居なくなる皆、つらい場面なんですけれど。

バロンは、最初に居なくなる仲間っていう事もあったし、敵味方のわからない純粋無垢で、くだらないと言ったら語弊かもしれないけれど、まあ、くだらない人間の殺し合いに巻き込まれただけで犠牲になってしまって。更に、今まで一緒に居た仲間に射殺される。バロンもつらいし、撃てと命令された主人公たちもつらい。つらすぎます……

 

一番生き残りそうだったアヤはその後すぐ戦死するし、しかも一瞬で。あっけなく。

でもここでわかるんですよね。無我夢中になると隙が埋れる。視野が狭くなる。

それは狙撃手だけに限らず言えることですよね。

 

戦死した登場人物の名場面に思った事、1人ずつ書いていきたいけれど長くなるので、割愛します。(二度目の割愛宣言)

でもこれは書かせてください。オリガの場面、つら過ぎてしんどかったけど、かっこよかった……!

 

イリーナは終始かっこいい。(急に簡潔)

 

セラフィマ、最初は現代の女の子みたいな感じだったのに、終盤はいろいろ乗り越えて、めっちゃかっこよく敵を欺いたり倒したりしていて惚れる。

ミハイルを撃ったのはびっくりでした。幼なじみの、村の生き残りである彼を。

 

セラフィマは女性を守る為に戦う。セラフィマの敵とは、フリッツはもちろん、真の敵は女性を襲う者。

いくら幼なじみでも、結婚するかもしれなかった人でも、敵は敵。

切ないけれど、かっこいいセラフィマ……!

 

冒頭でも触れましたが、彼女らの本当の敵。

登場人物それぞれが敵国だけではない真の敵がいる。

同志少女よ、(あなたが思う、それぞれの)敵を撃て

単純じゃなかったんですね、このタイトル!

 

最後に

作品の凄みが強すぎて長くなってしまいましたが、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

これは全人類に読んで欲しい傑作です。