今回は今村夏子さんの『むらさきのスカートの女』を紹介します。
第161回芥川賞を受賞した作品で、出版されて少し経った今でも話題の作品です。
私もずっと気になっていた作品。『こちらあみ子』がすごかったから、今村夏子さんの作品が気になるお年頃(?)です。
表紙やタイトルから不穏な雰囲気を感じますが、どんな作品なのでしょうか!
目次
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あらすじ
近所にいる「むらさきのスカートの女」と呼ばれている人と友達になりたい「わたし」。お近づきになるために、彼女が自分の職場で働くように誘導し、彼女を観察するお話。
感想
帯に何も起こらないのに面白いとTikTokで話題沸騰!とあったので、むらさきのスカートの女の観察(ストーカー)日記が淡々と書かれているのかなと思っていたのですが、全然大事件起こっているじゃないか!
おもしろいのは認める。めちゃくちゃおもしろかった。
でも、起こってるよ! そのせいで一気読みだよ!!
むらさきのスカートの女、短期間で変貌したので、まずその変貌劇がおもしろポイントのひとつ。
まさかあの大事件も「わたし」の誘導だったりするのかしら? なんだかその後の用意が周到過ぎましたよね? これも誘導したの??
もしそうだとしたらお近づきの手段が狂っている。相手が動揺しているところに、救いの手を差し伸べる計画だとしても、他にもあったでしょうよ……。
執着こわっ!
結局計画通りには行かなかったけれど。
でもまさか、最初の観察経過では地味で平凡なイメージだったむらさきのスカートの女が、こんなことになるとは想像もしていなかったので、びっくり展開でした。だからこそおもしろかった。
友達になりたいから観察するというのは、相手を知って話題を作ったり、お近づきになれるタイミングを図る方法としては誰しも使う手段だし、納得はできますが、近くにいる時に少し観察する程度じゃないですか、そういうのって。
家を特定したり、彼女が何をしているかを毎日観察してメモをつけて把握するのは、どうみても探偵級ストーカーだし、こわい。彼女と友達になりたい欲が暴走した結果でしょうが、執着し過ぎていて怖い。行き過ぎたやり方ですね。
みなさんも友達になりたい時は、ほどほどにね。(ここまでする人はいないか)
『ピクニック』でも感じたことが、この作品にもありました。
『ピクニック』とは違う角度ですが、女社会の怖さを感じます。
気に入らない人や標的を見つけると、噂をして楽しんだり、無視、根拠のない決めつけで責める。煽る。学生時代から変わらず、社会に出ても陰湿な嫌がらせは存在する。
だから女同士はめんどくさい!
そういえば「わたし」、周りの人に存在を気付かれていない雰囲気というか、そんな描写があるけれど、もしかして意図的なのかな。周りから無視されてるのかな。ぞんざいな扱いを受けているのは、なんとなく読み取れます。孤独な雰囲気。
ちなみに転売していた犯人、「わたし」なんじゃないかなと感じます。バザーで小銭稼ぎをしているって言っていたし。
むらさきのスカートの女が消息を絶ち、今までの彼女の立場になって居場所を守っている、彼女が帰ってくるのを待っている「黄色いカーディガンの女」爆誕。(前から存在していたけれど)
きっと今度は違う「わたし」が黄色いカーディガンの女を観察するみたいなループが生まれるのかな。そうだったらおもしろいな。
ちなみに立場を守って待っていても、むらさきのスカートの女は帰ってこないと思いますよ、黄色いカーディガンの女!!
芥川賞受賞記念エッセイ
こちら読み応えあります。おもしろい。
本作の誕生秘話や、今村さんの作家生活の中で感じること、エピソード。
特に作家としての感情は普段想像ができないので、こういう時はこんな心境になるんだな~と、同じ立場で考えたら少し気持ちがわかる部分もあって、親近感が湧きました。(作家じゃないのにわかった気になっちゃうの)
今村さんのネガティブな性格にも、全部じゃないけれどちょっと共感しちゃう。
最後に
短めのお話でしたが、想像していたよりも衝撃作でとても楽しめました。
今村さんの描く独特な世界観がクセになります◎