本好きの秘密基地

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プリズム/貫井徳郎 ※若干ネタバレ要素あり

今回は貫井徳郎さんの『プリズム』を紹介します。

写真は新装版です!かわいい。

『慟哭』で好きになり、ちょこちょこマイペースに貫井さんの作品を読んでおります。

ちなみに4冊目(……まだ全然だった)

複数の視点で物語が進むというお話を書くイメージの貫井さん。今回はどんな物語なのかしら!

 

目次

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あらすじ

小学校の教師が突然亡くなった。状況証拠から他殺の可能性が浮上。犯人は誰なのか、動機はなんだったのか。被害者の周囲が思い思いに推理し、それぞれの答えを出していく

 

感想

複数視点(章ごとに)で各々推理していくところも普通におもしろいのですが、推理者全員答え(犯人)が違う。章ごとに犯人がころころ変わる。

流れを説明します。

一章目で犯人を特定。二章目はその犯人が違う視点で真犯人を特定。三章目はその真犯人が更にまた違う真真犯人を特定して……という追っかけっこのような構想

次の章を読んだときに「あなたが犯人じゃないのかい!」となるやつ。

(書いていて自分でも何言っているのかわからなくなってきたわ)

その推理の追っかけっこを見ていくと、真犯人に繋がる証拠や証言がだんだん増えてきて、より犯人像が近くなっていくのがドキドキでした。

個人的には三章で発覚した繋がりと四章の推理のオチが衝撃的でした。

一言で表すと、うまいこと犯人がグルグルしている。(読めばわかるはず)

 

どの章も最後は

自分たちの中で犯人を勝手に決めつけて終わる。

犯人(疑惑)に問い詰めても黙秘されて、誤解する。

という確実に真実を突き止めないまま、誤解したまま章が閉じられる。この終わらせ方も秀逸だなと思いました。でないとこのお話上、構成が成り立たないですから。

ちなみに章を追うごとに推理者のレベルが上がっていくので、同じ事件なのに空気感や状況の重みが違うように感じて、違う事件の推理ではないかと錯覚しそうで、そこもまた不思議な感覚です。

 

今までの貫井さんの作品も同じなのですが、人間っていろんな顔を持っているんだよなと改めて思います。悪いところなさそうに見えてじつは裏の顔が……みたいな。

つまり恨まれない人間はいないと気づかされるのです。今作も。(こわいこわい)

 

このお話は犯人や動機を推測して楽しむというより、いろんな立場(小学生から同僚、恋仲の人まで)の視点から見た推理を楽しむというちょっと新感覚なミステリーでした。まさにプリズム。多面的。

この視点からだとこんな推理が浮ぶのね~みたいな。(彼ら犯人まったく外してるけれどね)

一言で表すならひとつの事件に対する推理意見集みたいな本です。

一冊で何度も推理が楽しめちゃうお得感がございます。

ただし答えのない推理なので、人によってはモヤっとするかもしれません(私がそうです……)

コナンくんみたいに真実はひとつ! とは行かないやつです。

 

最後に

結果的には解決しなくてモヤモヤしておりますが、一事件にいろんな意見と推測が存在するという事実、そしてそれを楽しむ推理小説という新感覚を味わうことができました◎