今回は鴨崎暖炉さんの『密室黄金時代の殺人』を紹介します。
第20回『このミステリーがすごい!』大賞・文庫グランプリを受賞した作品で、鴨崎さんのデビュー作です。
SNSで頻繁に見かけていたので気になっていましたが、しばらく寝かせておりました。(ただの積読)
内容はタイトルから大体わかるのですが、「密室黄金時代」とは……?
想像がつかないので早速読みましょう!
目次
あらすじ
密室はアリバイと同等の意味を持つという理論から、密室事件で浮上した犯人は無罪とされるようになった日本。その影響で密室事件が流行のように急増した「黄金密室時代」。
その最中、かつてミステリー作家の豪邸だった宿泊施設でも密室殺人事件が勃発する。
密室のトリック、どの現場にもメッセージのように残されるトランプ、そして犯人は誰なのか。
感想
勝手にキャッチコピーをつけさせてもらうならば
密室愛が止まらない。そんなお話です。
圧倒されました。お話が進むにつれて愛が加速して圧されました。
密室オタクの愛、すごい。
その名の通り、密室事件のオンパレード。1冊の小説にこんなにもバラエティの富んだ密室トリックが出てくるとは。
密室事件のトリックを考えたりすることが好きな人にはぜひ読んでほしいです。
だって一冊に複数の密室事件が出てくるんだよ。お得感。
私はトリックを見抜けない人種なので、黙々と読んでいました。難しかったです。
トリックはバラバラですが、現場には犯人が残したトランプのカードが一枚。
これは何を意味しているのか。数字に何かしら意図がありそう。
私は、密室トリックよりもこのトランプの意味に興味を惹かれました。
ちなみにこのトランプの意味、おもしろかったです。
わあ、本当だ! たしかに繋がる……!
ってなります。すっきりします。
「密室は不在照明(アリバイ)と似たような感じだから、犯人を特定する材料にはできないよ。だから無罪だよ」という定義と、それによって国民が密室事件し放題で治安が乱れちゃう日本という設定が、おもしろい発想だなと思います。
言われてみればそうだよな~と思うのと同時に、現在までそうならずに保ってくれている日本の裁判制度の現実に安堵しました。
密室の時点で、被害者以外は立ち入れないもんね。トリックを見破れてはじめて、密室ではなくなり、他者の介入が証明できるわけだから。
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このお話の特徴はこれだけではありません。
登場人物の名前がなかなかすごい。
ほぼ名前と職業や雰囲気が語呂合わせになっているのです。
絶対これ、もう確信犯じゃん。自分の名前で職業を選んで生きているんじゃないかって思うくらい。
メイドさんの迷路坂、支配人の詩葉井、密室探偵の探岡などなど。
蜜村漆璃なんか、読書中に何度も「密室は……? あ、蜜村か」ってなりました。さらっと間違える。
「密室」も「蜜村」も登場率が高いワードだから。漢字は違うけれど似ているし、彼女の名前を略したら「みっしつ」だし。
鴨崎さんの言葉遊び的ネーミングセンスに笑ったり、翻弄されたり。
おかげで、登場人物が多くても見失いませんでした。誰だっけ……ってならない。ありがとうございます助かりました、鴨崎さん。
館での連続密室事件は幕を閉じて終わり。
ではない。(気を抜くなかれ)
じつはこのメインだと思っていた事件は前座に過ぎなかったという衝撃展開が待っています。
思い出した。冒頭に出てきた正体不明の『わたし』。
これが誰なのか、そういえば判明していなかった……。
あらやだ、ほんと、私ったら4つの複雑密室事件に気を取られて忘れていたわ。
ここで真犯人がついに動き出すのであった。
今までも全然わからなかったのに、さすがラスボス。難解すぎて、推理することを投げました。鉄壁過ぎて降参でした。
で、トリックが明らかになった時の心境ですが
壮大だな……!
です。
密室への執着は、ここまでさせるのか。
真犯人も言われてみれば伏線が。些細なことだったので忘れ去ったところに、伏線が。
最後は青春感が眩しい爽やかな締め方でした。
最後に
密室事件大好きな方は必読です!
人がバタバタ亡くなりますが、鴨崎さんの作り出す軽快な雰囲気で「え、人死んでるよね?」と疑いたくなるような空気感ですので、重くないのも読みやすさのポイントだと思います◎
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