今回は深木章子さんの『猫には推理がよく似合う』を紹介します。
前作と同じく素敵な表紙ですね!
そしてタイトルも、とても好み。(猫好きです)
たしかに三毛猫ホームズとか、猫が推理小説で扱われることって多いですね。
さてこちらは、どんな感じで猫が絡んでくるのでしょうか。
目次
あらすじ
弁護士事務所で飼育されているスコティはミステリー好きな言葉を発する猫。
主人公と推理合戦を繰り広げていく。
そんな中、事件が現実に起きてしまった。
事件の真相は一体なんなのか。
感想
第二章からの展開が予想外で、嬉しいびっくり箱でした。
そして、第一作・二作とは雰囲気が違って、アニメのような軽快な雰囲気。(第一章まではね)
正直、猫が喋ると言うファンタジーな設定と展開が、個人的にはキツイな……と思ってしまい、第一章はひたすら架空の事件についての猫スコティと主人公の推理合戦が延々と続いていて、読む意味を感じなくなってきてしまい、挫折しかけました。
でも第二章で、思いもよらぬ事実が突きつけれるのです。
え、なになに、今までのって、そういうことだったの!?
もう何が現実に起きていたことで、何が妄想だったのかと、頭をフル回転して考えてしまいました。
まさか第二章に来て現実に引き戻されるとは。
そこからはもう一気読みでした。
現実となってしまった事件の真相ももちろん知りたいし、どこまでが現実なのかも知りたいし。
ミステリーとして難儀だったのは、容疑者候補が多いことです。
みーんな怪しいじゃん。
動機も、行動も、誰でもあり得るじゃん。
でもアリバイとかと照らし合わせると、容疑者候補がいなくなっちゃってという堂々巡り。
こんなに怪しい人ばかりなのに、結果犯人は意外な人物。
なるほど、だからわからないわけだ。
怪しくない人ほど疑うべきなのかもしれませんね。
一応、睦木怜シリーズと聞いていたのですが、全然登場する気配がなくて、勘違いだったかしらと思っていたら、おもしろくなってきた第二章で颯爽と現れて大活躍。
現場は弁護士事務所だものね。繋がりあるはずよね。
今回も華麗に推理を披露する睦木さん。
知っているキャラだからか、なんだか安心感がありました。
※ネタバレ区域※
ここからは、このお話の種明かしが披露されちゃうので、未読の方は気をつけてくださいね!
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ミステリー好きなおしゃべり猫スコティと主人公の椿さん。
どちらもミステリーをこよなく愛するので、スコティ作のミステリーについてハイレベルな推理合戦が飛び交っていました。
そして、現実に事件が起きてしまう。
犯人の姿を見ていないのに、自分が勝手にライバル視している先生の姪だと決めつける椿さんの危うさに、なんか違和感。
その違和感は、ある事実が啓示されることで解消されます。
なんと
今までの全ては椿の妄想だった
ということです。
スコティが喋るのも、澤さんが自分に好意を抱いていることも、ライバル視している先生の姪が殴ってきたということも、すべて彼女の妄想だったのです。
つまりこれはファンタジーな設定ではありませんでしたということにもなります。
彼女の都合のいいように、ときに潜在意識で錯覚したことが、彼女の妄想の中で起きていたのですね。
でも、じゃあ現実に起きた事件は自作自演だったのかというと、そうではない。
犯人はいるのです。
それは睦木さん以外、誰も疑いを感じなかった人物。
びっくりですよ。一番無害そうじゃないの。
でも動機や犯行の様子を聞いていくと、ああ、やはり彼なのか……と認めざるを得ないんだな、これが。
スコティとの関係は妄想だったけれど、最後のシーンでスコティこと「ひょう太」が、椿さんののことを気にかけているような素振りを見せたので、実際にも、妄想の中ほどではないにしろ、信頼関係とか友情みたいなものはあったのかもしれませんね。
切ないな。
そして、その姿(素振り)を想像すると、かわいいな……!
最後に
今までとは違う作風と思いきや、どんでん返しの衝撃度は今まで通りにハイクオリティな、猫による猫のための猫ミステリーでした◎