今回は乙一さんの『銃とチョコレート』を紹介します。
今日はバレンタインデーですね。
というわけで、チョコレートな一冊をチョイス。
乙一さんって「切なさの魔術師」と言われているんですね。かっこいい異名ね。
目次
あらすじ
お金持ちの所有する宝物を次々と盗み出す怪盗ゴディバ。
ゴディバの手がかりとなりそうな謎の地図を、たまたま発見した少年リンツ。
憧れの探偵ロイズと共にゴディバを捕まえようと奮闘するが、予想外の事態に追い込まれ、いじめっ子ドゥバイヨルと旅をすることに。
怪盗ゴディバの正体は誰なのか。
リンツたちは無事に旅を終えることはできるのか。
感想
漢字が少なめで、児童書のような雰囲気から正直、軽んじていた。
でもね、意外にもダークで刺激的で、迫力もあって
お、おもしろいではないか……!
となりました。
登場人物のキャラ良し。伏線回収もばっちり。終わり方も気持ち良い。
たいへんに楽しかったです。
伏線回収される度に、そうだったの!? そういう意味か! と驚きでした。
冒頭の優しそうな雰囲気に油断していたのもあるかもしれませんが、読後の満足感が強かったです。
登場人物について、まず書いていきます。
タイトルの通りといいますか、登場人物の名前が皆チョコレートやチョコレートブランドの名前です。おもしろい。
おもしろいのは名前だけではありません。
キャラ設定もおもしろいのです。
何度も裏切られます。(嬉しいことに)
味方と思っていた人が敵、または、敵が味方に。
優しい人と思っていたら、性悪。
従順と思っていたら、裏切り。
無知そうで、重大な秘密を知っていたり。
本性を途中からさらけ出して、ころころ変わる人物像に何度も驚かされて、それが楽しかったです。
続きまして、お話の印象。
名探偵に憧れる少年のお話で、漢字が少なめなのもあって、児童書のような印象を感じるのですが、そんな甘い話ではなかったのです。
ビター、いやダーク。ハイカカオです。
どうだろう。カカオ85%くらい?
児童書として読むにはハードで容赦ないシーンが多めです。
謎や伏線のレベルも本格的なので、読みは当たらず驚きの数々。
終わり方もきれいで、感動的でした。
さくっと読めるけれど、しっかりとしたミステリーなので、気軽におすすめできる一冊だなと思います。
※ネタバレ区域※
怪盗ゴディバの正体や、見事な伏線回収の驚きと感動を書きたいので、未読の方はこの先注意です!
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怪盗ゴディバの正体、今まで登場した誰かだろうなと考えます。
ミステリーって大体そうだから。
でもまさかこんなにも近しい人だったなんて!
しかも複数犯だったなんて!
あまり目立たず、平凡で冴えない大人たちと思っていたから、彼らが怪盗だったと知って見る目が変わります。かっこいい。(単純)
リンツが地図を手に入れる過程も、偶然ではなくて計画的に誘導されたことだったというのだから、父ちゃんすごいよ本当に。
そして怪盗の名前がゴディバだと信じて疑わなかったけれど、本当の名は「GODDIVA」(神の歌姫)。
それが指すものは、おそらく祖母。
子守唄を幼い父に唄ってくれていた祖母を由来とした名前だったのでしょう。
素敵だな。
じつは母メリーは、父のこともロイズの企みもお見通しで、あの時のパンに毒を忍ばせていたという真実にもびっくりです。
だから死んだ魚が浮んでいたのか……!
家族写真を隠したのも、ロイズが素敵な紳士だから後ろめたくて隠したのかと思っていましたが、父のために隠したと知って、おっとりしていそうで、じつは強かでしっかりした女性だったんだなと、これまた印象が変わりました。
最後に
児童書のような雰囲気に軽んじることなかれ。
チョコレートたちが繰り広げるダークだけれど痛快なお話でした◎