今回は宮部みゆきさんの『泣き童子 三島屋変調百物語参之続』を紹介します。
こちらのシリーズものもマイペースに、ゆるゆると読んでおります。
1冊目より話の雰囲気に馴染めてきて、登場人物や設定にも愛着が湧いているので、読みやすくなってきました。
今回も百物語、開幕でーす!
目次
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あらすじ
百物語のようにお話を聞き集める三島屋シリーズ第3弾。
感想
今回は1話だけ過激派がありましたが、全体的にはゾッとするけれど愛がある怪談不思議話でした。
恋仲、親子愛、友情、他者への情。
どのお話も、それが垣間見えて、ただ怖いだけじゃない。
ホラーだけはしんどい。いや、しんどい越えて情緒が危ない。(私は基本ホラーNGです)
そんな私にも読める、怖いのに魅力的で絶妙な百物語を書いてくれる宮部さん。好き。
『第一話 魂取の池』
タイトル(池の名前)から、魂を吸い取っちゃう池が登場するのかしらとゾッとしましたが、違いました。
命は取らない池でした。良かったマジで。(怯えるなら読むなよ)
それでも池が起こす祟りみたいな現象は、大事なものを奪うような陰湿な嫌がらせのようなもので、穏やかではないです。
とにかく、怪異の力ならではの強烈な嫌がらせでした。
夫との別れたさに、わざと祟りに遭いに行く時は、怪異の対象(材料)が検討つかなかったので、そういう時って何も起こらないのかな? と思っていたら、予想外のものを奪っていきました。あ、それも対象なのねって思うのと同時に、欲と執念はおそろしいなと思いました。
都市伝説みたいな、ライトな怪談でした。
『第二話 くりから御殿』
悲しかったし切なかったし、最後の優しく熱い友情には涙腺が緩みました。
私だったら、あんな予知夢みたいなものを見る度、すごく苦しいと思います。
もう彼らは生きていないと知ってしまうから。
でも行方不明のままの方がずっと苦しいんですかね。幸い、私には周囲を災害などで失った経験がないので、亡骸を突きつけられる方が苦しいなんて思っちゃいます。
生き残りは、生き残ってしまったことに申し訳なさ、後ろめたさを感じる。でも犠牲者は恨んでなんかない。生きてほしいと思っている。
昔の人々も、感じる事は現代人と変わらないです。
病の死の縁を彷徨った語り手が聞いた、かつての亡き親友たちの言葉「いっぺんお帰り」。
この言葉に籠った本当の意図を、語り手が正しく認識できた瞬間の感動と切なさは、経験ない私でもすごく沁みました。
『第三話 泣き童子』
最後の展開には、ひえ~って小さく悲鳴をあげちゃいました。
「泣き童子」のお話も、まあまあゾクリとする部分があるのですが、語り終えた後の情景が物々しい雰囲気で。それにつられて、私の気持ちもざわっとしました。おお、こわっ。
泣き童子は幼子の形をした、罪を咎め責める、人間ではない者だったんでしょうね。
泣かれる側は、罪を常に責められ続けて気が狂ってしまう。
そういう意味では、罪人の立場からしたら、おそろしや。
「泣き童子」というお話自体は不可思議話で、語り終えた時の、最後の三島屋の雰囲気にドキッとするお話でした。
『第四話 小雪舞う日の怪談語り』
いつもとは違う、おちかが聞き手側で進行するお話が4つ。
ちょっとゾワリとするお話、母子の愛を再確認するお話、千里眼のお話、親子愛のお話……。
どれもおもしろい怪談話でした。ゾワゾワするのに、たまに感動しそうな部分もある。
怪談語りを開く屋敷に向かう道中、奇妙なことが起こるのですが、それも帰りにしっかり伏線回収されました。
それは、読みは外れましたがすごく温かい奇妙な出来事でした。
今までたくさんの怪談話を聞いて、免疫のあるおちかだからこそ、この温かい怪異を正しい形で受け止められたのだろうなと思います。
私だったら、ただ怖ろしくて、そんな温かい展開の可能性を考えられないです。
『第五話 まぐる笛』
いっちばん怖かった……( ゚Д゚)
油断していました。今までずっと、ちょっと怖いか、不思議なだけか、感動かの怪談が続いていたから、怖すぎました。
お昼に読んでおいて良かった~。夜だったらうなされるよ~。(大袈裟)
でもすごく濃い内容でしたし、語り手のお母さまの神がかった勇敢な姿に感激です!
『第六話 節気顔』
ちょっと物騒な場面はありましたが(会談だもの当然)、素敵なお話でした。
「私は商人です」と名乗る怪しい人。あれ、この人どっかで登場していたような……。
あ、『おそろし』のラストに出てきた謎めいた人!?
正解でした。おちかもピンと来たようでした。
どうやらこの人物、このシリーズのキーパーソン的存在になりそうな予感。
これからも、度々出てくる予感。
あなたのその顔をお借りします。
なんか営業のキャッチフレーズみたい。(ばっちり妖の営業)
他人の空似って、滅多にないけれど、ありますよね。
これから亡き知り合いに激似の人を見つけたら、この話を思い出して、ほっこりしそうです。
悪いことばっかりしていたおじさん。けれど残りの人生、いいことしたね、おじさん。
最後は恨まれずに、弟のもとで人生終えられて、よかった。感動したよ、私は!
最後に
怪談にホラーの逆である愛と感動を共存させる技、あっぱれでございます◎