本好きの秘密基地

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鬼の跫音/道尾秀介 ※ネタバレ要素あり

今回はブログ「郵便局のおじさんは9時40分ごろやってくる」のニードルとの読書会

"第4回 本好きのタイマン"

の回でございます👏

今回の選書係はニードル。

道尾秀介さんの『鬼の跫音』です。

道尾さん、気になっていたところなんですよ♪

単行本の表紙の方が好みだったので、図書館で探して参りました!

さてさて、道尾さんはどんな物語を繰り出すのかしら。

 

目次

 

あらすじ

6人のSが登場する、鬼になってしまった、鬼にならざるを得なかった人たちの、ゾッとするどんでん返しがたっぷりな6編。

 

感想

暗澹としていて妖艶な雰囲気も漂う。

絶対にゾッとする結末が待っているのだろうなと怯えながらも、その雰囲気と物語の行く末が気になって、ついつい読み切ってしまう。

おもしろかったです。

ひゃ~って悲鳴をあげたくなるけれど、結末が衝撃ありすぎて、結果的におもしろかったなと思える読後感の数々

怪談っぽいものもあれば、人間の持つ怖い部分が最後に顔を覗かせるものも。

どれもたまらなかったです。

 

6つのお話に共通して登場する「S」という人物

2つ目までは、同一人物で繋がった連作かなと思いましたが、どうやらそれぞれ別人のようです。

そして鴉もよく登場します

そういった全話に同じモチーフを登場させるという遊び心も、おもしろいところのひとつです。

 

深くて濃い短編たち。

ただゾッとするだけじゃないのです。

ただ衝撃を受けるだけじゃないのです。

考察しがいがあって、楽しくて、しばらく余韻に浸りたくなるのです。

そしてその考察した先に、またいろいろと考えさせられて、つくづくおもしろかったと感じます。

どれも。全部。すごい。

 

※ネタバレ区域※

ここから先は考察が入るのでネタバレが出てきますので、未読の方は読んでからですよ~!

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『鈴虫』

いきなり不穏サスペンス。

途中まで、自分のものにするためなら手段を選ばないってやつか……と、主人公のちょっぴり怖ろしい心理を見守っていたのですが

最後になってまさかの反転。

そ、そっち……!?(狼狽)

鈴虫のメスはオスを喰らう。

この事件もメス(杏子)がオス(S)を喰らっている

そして、主人公も罪を被ることで社会的に食われています

最後の主人公の独り言狂乱の意味は、鳴く鈴虫に対して

「自分が鈴虫みたいに喰らわれる運命なのはわかってる」

「騙されてるとわかってて、騙されてやっているんだ」

という訴えなのではないのかしらと思います。

いやあ、よくできてる……!

一話目にしてこんな、ものすごい構成のお話来られたら、そりゃもう他5つも期待しちゃう。

 

『犭(ケモノ)』

ミステリー好きにはたまらない内容でした。

Sが遺したメッセージの意味も、Sが起こした猟奇的事件というのも、全ての設定がそそられます。知りたい気持ちがウズウズです。

そのSの事件の背景はもちろん衝撃的でしたが、意外にも切なくて苦しいです。

Sよ、苦しかったよな。辛かったよな。

って、感傷的になってしまいました。

ただね、その後ですよ。

主人公の方ですよ。

はっきりとは書かれていませんが、察するに、主人公は家族をやっちゃってますよね

外出する時の描写、その時は気づかなかったけれど、最後まで読んでみると合点。

 

『よいぎつね』

タイトルからも勘づいていましたが、妖艶な怪談話のようなお話でした

そしてパラレルワールドのような。

主人公が埋めていたのは、米俵でつくった狐だったのかな(次のお話の冒頭で出てきます)

それともやっぱり、未来の自分を……?

娘は化け狐だったのかしら。

このお話は幻想的ゆえ、考察が難しいですな。

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『箱詰めの文字』

二転三転が凄すぎて、目が回るような感じなのですが、それが味なのよ。おもしろくしてるのよ!

細かいどんでん返し祭り。

まさか主人公が通り魔の犯人だったとはね……。

サラッと言ってるけど、びっくり仰天な事実やぞ。

結局は彼は、どうしたかったのか。

告発をするでなく、わざわざ弟と騙って、何がしたかったのか。

単純に、どうなるかという好奇心だったのでしょうか

 

『冬の鬼』

ある人の日記なのですが、まず日付が遡っていく(逆行)という進み方に、絶対何かありそうな予感。

2人の取った行動は尋常じゃないのですが、ゾッとするのですが、だけど純愛だなとも感じちゃう(すごいお話続きすぎて、感覚が麻痺しているのかしら)

個人的には、全話の中では美しいお話だなと感じました。

 

『悪意の顔』

THE 世にも奇妙な物語

こちらも怪談風味でございます。

ハッピーエンドの予感がしたのですが

そんなはずないよな。

この短編集の流れで、そんなはずないんだよ。

お決まりの、最後に畳みかけられちゃうやつ。

え、もしかして、Sが襲いかかられた時に返り討ちにしちゃった?

Sが、やっちゃって、埋めちゃった?

ドスンと重みのあるお話でした。

 

最後に

短編とは思えないほどに強いお話で、サクサク読めて、楽しかったです◎

ニードルの選書力、さすがです。