さてさて、今回はブログ「郵便局のおじさんは9時40分ごろやってくる」のニードルとの読書会”第2回 本好きのタイマン”の回でございます👏
今回の選書係はニードル。
増田忠則さんの『悪意』です。
増田忠則さんのデビュー作で、この本に収録されている『マグノリア通り、曇り』が第35回小説推理新人賞を受賞しています。
書店で見かけて気になっていたものの、その日は諦め、そのまま忘れていました。(おい)
そこにニードルがこの本を選書!
ニードルのセンスに感動しました。
目次
あらすじ
様々な「悪意」が「悪夢」をもたらすスリリングな4篇の短編集。
感想
人々の軽い気持ちから湧く悪意が、結果的に取り返しのつかない最悪な事態として跳ね返ってくるという鋭い短編たちでした。
悪意って、出来心や魔が差したとか、遊び半分とか、そういう本当にちょっとした悪ノリや軽い考えで湧いてきちゃうのですよね。
もちろん怨念や復讐とかの重くて強烈なものもありますが、軽い単純で薄弱な悪意も存在し、それも同等に立派な悪意で、十分に人を傷つけ殺める力がある。
そんな大小さまざまな「悪意」の罪深さを、この4つのお話から感じました。
悪意って自分でコントロールできない反射のようなものだからゼロにはできないけれど、どんな悪意も行動に移してしまえばとんでもないことになってしまうということは常に忘れないでいたいです。
全話すごかったのですが、強いて言うなら『マグノリア通り、曇り』が印象に強く残っています。一番パンチの効いた刺激強め作品でした。
『マグノリア通り、曇り』
犯人が頭良すぎて、最後までハラハラドキドキでした。
何もかもが演出のための材料だなんて。なんて計算高い。
次は何をしでかそうとしているのか。
どんな切り札を出してくるのか。
私には想像できなくて事が起きてやっと理解し、その後に恐怖が襲ってくるというか、ゾッとします。
その時はおふざけの気持ちでだったり、興奮して調子に乗っちゃったりで、酷いヤジを飛ばしてしまう。たしかにそういう人は一定数います。
自分の発した言葉がどれほどの凶器となりうるのか。
この事実を具体的にわかりやすく伝えてくれるお話でした。
最後のオチが衝撃的だけれど、どこか潔く、犯人の覚悟がダイレクトに突き刺さりました。
『夜にめざめて』
「やっていない」という説明や証明って難しいですよね。
勝手に犯人だと騒がれるのって名誉棄損でもあるし、心身共に疲弊してキツイ。
無実の証拠はもちろんないし、そっちの勝手な自意識過剰による思い込みだし、とんでもなさすぎてイライラしましたわ……! (落ち着け)
最後の弟の独白シーンはびっくりでしたが、ちょっと納得です。
一瞬そうなんじゃないかなという考えが浮んだので、やっぱりか! と思いながらもゾッとしました。
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『復讐の花は枯れない』
もうタイトルが既に威圧感半端ないですね。
この復讐はすごい。
隙のない完璧な復讐で怖いけれど、ただただすごい。
まず精神的な追い込み方がえげつないです。
生きているのに献花を供えるという縁起でもない行為はハイクラスないじめですよ。いやそれ以上か。
さらにすごいのは、自分の手を汚さずに人を動かし復讐を完了する緻密な計画性よ。
上手く脅して全員に復讐執行。怖いけれどよくできていると感心してしまいます。
最後のトドメはあまりにも予想外で、声が出てしまうほどびっくり。
いじめは、いじめる人ももちろん悪いけれど、いじめられっ子を利用しようとする人も直接ではないにしろ同等に悪質です。
どんな理由であれ許されないし、同情の余地もないのです。
『階段室の女王』
主人公の葛藤がおもしろかったり、でもじれったくてイライラしたり。
ずっとアタフタしていて、この人大丈夫かよと思いながら読んでいたのですが、最後の変貌ぶりにぎょっとさせられました。
あれかな、思考とかストレスとかが極限に達しちゃったのかな。それともついに一線越えちゃって、すんってなったのかな。
さっきまでウジウジしていた人とは思えないです。
瀕死状態の人が自分の嫌いな人だったら助けるのか。無視するのか。
ちなみに私は単純に臆病なので、後で引きずって悩みたくないから誰だろうと助けを呼ぶ一択です。
これは人間の醜い部分が露わになる課題で、なかなかおもしろかったです。
主人公の逡巡が忙しそうで、そのモタモタしている間に起こるアクシデントがスリリングで刺激的でした。
最後に
ミステリーとしても楽しめて、終始スリリング。
それプラス悪意について一度振り返りたくなる読み応えのある短編集でした◎