今回は辻村深月さんの『傲慢と善良』を紹介します。
去年の発売時からとにかく話題になっていたこちら。
評価もかなり高いですね。
かなり遅ればせながら、ついに私も読むことにしました!
辻村さんは何冊か読んでいるのですが、作品の幅が広くてすごいなと。
さすが人気作家さん。
「婚活小説」とも評されるこちら、かなり響くものがありそうです。
目次
あらすじ
婚約者が失踪した。
彼女にはストーカーがいたと聞いていた彼は、ストーカーに誘拐されたのではと疑うが、警察の判断は「事件性が低い」。
彼女のあらゆる手がかりを探るため、彼女の過去を探偵のように探っていく。
その間に、婚活のヘビーさや婚活者が陥りやすい思考なども浮き彫りになっていく。
彼女はなぜ姿を消したのか。
感想
図星を何度くらったことか。
恋愛対象に相手を見ようとする時、私にもこの考えに心当たりがあり過ぎる……。
無意識のうちに、私も傲慢だったのだと思い知らされました。
交際相手や結婚相手を求めている時に、なかなか相手が見つからないと嘆く。
「理想が高いんだよ」と言われたこともあるし、言ったこともある。
言われた時には、自分はそんなに理想高くないはずって思っちゃう。
別に3高じゃなくてもいいのにって笑
でもたしかに、作中にもあったように、相手に対して
ここは良いのに、この部分が残念だな。惜しいな。
って、その人の全てを知る前に、勝手に無しだと決めつけちゃう。
勝手に点数とかをつけてしまっているってことです。
そう指摘されるとたしかにこれはかなり傲慢で、おこがましい。
当時の自分が恥ずかしくなって、読んでいて気まずい気持ちになります。
そう思わされた言葉がこちら。
「皆さん、謙虚だし、自己評価が低い一方で、自己愛の方はとても強いんです。傷つきたくない、変わりたくない。ーー高望みするわけじゃなくて、ただ、ささやかな幸せが掴みたいだけなのに、なぜ、と。親に言われるがまま婚活したのであっても、恋愛の好みだけは従順になれない」
本文P133より
ちなみに恋愛や結婚の目線だけでなくても、同じことを考えがちでは。
例えば友だちとか。
そう考えると婚活だけでなく、どの世代もどの立場も、人を見る時に傲慢な見方をしているのでしょう。
なるほど。たしかに心に突き刺さる。
ハッとさせられるとかの意味でなく、痛感するみたいな感じでした。
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結婚相談所のおばさんが語る婚活論(?)は、殺傷力が高いのですが、ど正論なのです。
ど正論だから、殺傷力が高い。
もうやめてって思うくらいグサグサに突き刺してきます。
わかったから。もう、私が悪かったです。降参です…….!
ってなるくらい容赦なくて強い。
そして、今まで説明できなかった謎の感覚にも答えをくれて、すっきり。
それが「相手に対してピンとこない」という感覚。
「ピンとこない、の正体は、その人が、自分につけている値段です」
「無意識に自分はいくら、何点とつけた点数に見合う相手が来なければ、人は"ピンとこない"と言います。ーー私の価値はこんなに低くない。もっと高い相手でなければ、私の値段とは釣り合わない」
本文P137より
そういうカラクリだったのか!
理想が高いんじゃなくて、自己愛レベルが高かったのか。
特に善良な人こそ。
全てが無意識。でも、こうして言われてみると、人々は(自分含め)つくづく傲慢。
「現代の結婚がうまくいかない理由は、『傲慢さと善良さ』にあるような気がするんです」
本文P134より
一言で言うと、そういうことなのですね。
人を値踏みする傲慢さ。
周囲の言うことを聞いて良い子でいた分、自分の意志がブレて、一方そんな自分への愛は強くなってしまったのだ。
架くんの女友達について、ちょっと黙っていられないので吐き出させてください。
一体どういうおつもり?
意地悪にも程があるわよ、あなたたち!
当事者にそんなこと言える?
彼女たちのおかげで真相が見えて、結果的には良かったけれど、タブー中のタブーを犯してますわよ。
嫌だな。もしも夫に、こんな女友達がいたら、嫌だな。きついな……泣
冒頭から不穏な雰囲気で始まり、真相もヒヤヒヤで絶望感が満ちている。
だからバッドエンドの予感しかしなかったけれど、意外にも素敵なラスト。
この流れで、この締め方に持っていけるとは。
これだけのことを経験して、学んで、自覚した彼らはきっと、これから末長く幸せになるのでしょうな。なってくれよな。
最後に
婚活小説と評されていますが、人と関わっていかねばならない全人類対象の人間の心のお話で、気づきと学びを得ました◎