今回は寺地はるなさんの『今日のハチミツ、あしたの私』を紹介します。
書店やSNSでよく見かけるし、表紙デザインは美味しそうだし、タイトルも詩的。
なんだか美味しそうな、温かいお話かなという先入観のもと、表紙とおそろいのおやつをお供に読みました♪
目次
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あらすじ
恋人との結婚を機に、恋人の故郷である知らない土地で暮らすことを決意した主人公。
しかし親へあいさつをしに行くものの、結婚は許されなかった。
彼の父に見直してもらうために、支払いを滞納している蜂蜜園から滞納分を回収してくることを宣言する。それを機に養蜂の手伝いをすることに。
学生時代に、食べることの大切さを教えてくれた女性と、彼女がくれたハチミツを心の支えに、知らない土地で様々な人と出会い、居場所を見つけていく、ハチミツに魅了された彼女の物語。
感想
読了したての今、無性にハチミツを欲している。
できれば、とびきり美味しいハチミツを。
ハチミツや蜜蜂の知識が織り込まれていて、読んでいておもしろいです。
ハチミツすごい。蜜蜂もすごい魅力的。
ハチミツは体に良いよっていう抽象的な雰囲気でしか知らなかったけれど、こんなに良いこと尽くめとは……!
「蜂蜜をもうひと匙足せば、たぶんあなたの明日は今日より良くなるから」
本文P13より
この魔法みたいな言葉、好き。
元気がない時は、もうひと匙。ハチミツは幸せな気持ちにしてくれる万能調味料でもあるわけですね。
蜜蜂が一生のうちに集めることのできるハチミツはスプーン1杯分なのだそうです。蜜蜂が一生をかけて集めてくれるハチミツの貴重さ、ずしんと感じます。
他にも、天敵のスズメバチとの戦い方などを知って、蜜蜂の健気さ、愛おしさが、読むたびに増します。
ハチミツを使った料理がいろいろ登場するのですが、どれも美味しそうな描写で、食欲をそそられます。ああ、ハチミツを摂取したい……!
ハチミツのことだけでなく、食べることの大切さも教えてくれます。
「食べものが身体をつくるのはあたりまえだけど、それだけじゃなくて。誰かと一緒にごはん食べて楽しかったとかおいしかったとか、そういう記憶ってずっと残るから、食べてもなくならないよ。記憶が残るなら、それはごはんも残るってことだよ」
本文P150より
この言葉を目にした時、食事をちゃんとしようと思いました。(ちゃんと食べてるけれど)
時間や状況によっては適当に済ませたりせざるを得ない時もあるけれど、無理ない程度に、食事を丁寧にしてみたり、誰かと楽しく食べる時間を作ったりしたいな、大事だなと思いました。
食べ物のことばかりではありませんよ!
今まで寂しくて辛い思いをしてきた主人公が、恋人の側にいるために知らない土地に移って、それなのに恋人の実家から追い返されて、実質ひとりぼっち。(恋人しっかりしろ)
そんな状況から、自分の力で、行動力で、いろんな人との縁を大事に繋いで、居場所を作っていく。かっこよかったです。
いくつになっても、知らない場所でも、自分の居場所はつくることができる。
素敵な出会いだって、どこにでもある。
それを証明されたようで、勇気が湧いてきました。
蜂蜜園の黒江さんみたいな人、いるよな~としみじみ思いました。
外見や第一印象が最悪で、周囲から疎まれちゃうの。私もそういう人、仲良くできないなって早い段階から諦めちゃいます。
でも、根気よく接していると素敵な人柄だったりするんですよね。不器用なだけなんですよね。わかってるんですけどね。
蜂蜜園を放ったらかしにしていた理由が、すごく切ないです。
「『泣いた赤鬼』の青鬼みたいな人」という表現。すごくしっくりきました。しっくりきすぎて、切なくて苦しい。
いくら守りたいものがあるからって自分を犠牲にしないでおくれよお!泣
恋人も頼りないですが、素敵なところもあるんです。
だから、主人公が恋人を見放さなかった気持ちもわかります。
彼なりのけじめのつけ方も、かっこいい。
最後にありきたりなハッピーエンド展開になるかしら……と思っていましたが、そこは現実的でちょっとスカッとする展開だったので、気持ちがすっきりです!
最後に
いろんなところで見かけるのも納得な、素敵なお話でほっこりしました。
読み終えたらハチミツが欲しくなること間違いなしの、満足感たっぷり作品でした◎