今回は島本理生さんの『わたしたちは銀のフォークと薬を手にして』を紹介します。
私のお気に入り作家さんのひとり。
島本さん作品の中でも人気ランキング上位に入ると噂のこちらを、ついに読みました! (ずっと積読していた)
目次
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あらすじ
愛する人が重い持病を抱えている。結婚願望はあるのに相手が見つからない。結婚に執着がない。結婚生活に嫌気がさす。
いろんな悩みを抱えた恋する女たちの恋愛奮闘記。
感想
安心と信頼の島本理生さん。今作も文章が最初から最後までずっときれい。
言葉が全部きれいだから、一言一句噛みしめて、ゆっくりと浸りながら読みました。
なんでこんなきれいな表現を思いつけるのだろう。印象的な言葉がたくさんで、何度も読み返したくなる。
内容も、大人の恋愛なので絶妙にリアル。
私が今まで言葉として表現できなかった感情が、いくつも言葉で表現されていて、これだ! と共感し、嬉しくなりました。
島本さんが言葉にしてくれたことで昇華され、すっきりする。
恋愛で苦しむ全ての女性の代弁者。
言葉にできない感情の答えは、ここにあります。
恋愛で苦しんでいる人や、傷ついている人、悩んでいる人におすすめしたい。
もちろん男性にも。
世の女性たちの本当の気持ちがここにあるので、男性も勉強になると思います。
きれいな文章を楽しむだけでも有り!
いろんなタイプ、立場の女性が出てくる。
どの人も苦しんで、悩んでいる。
でも最後はそれぞれその人なりの決心をして、前に進もうと頑張っている。強い。
恋愛で苦しんだ女性は強いのである。かっこいいのである。
主軸となっている恋人たちの話。
彼の持病が発覚した時、私まで動揺しました。今までにない新しい展開と恋愛においてこの持病はかなりの壁。
主人公はこれからどう決心するのか。彼はどうするつもりなのか。
そしてその病気について、私は少ししか理解していないのだと気づく。
この大きな壁を乗り越えた先に二人で生きる幸せがありますようにと強く思いました。
持病のことを打ち明けられた主人公が、衝撃や動揺はしていたものの、それも受け止めて一緒に生きていきたいと決心した時、愛の力はすごいなと改めて感じました。
愛があれば何でもできる。
元気があれば何でもできるみたいな。(1・2・3ダァー!)
怖いものはたくさんある。だけど怖かったからこそ救われることもある。
本文P124より
彼女が言うと説得力がある。希望に満ちたこの言葉を、苦しい時に思い出せるようにしておこう。
主人公の友人、こちらも違う意味でたいへん悩んでいる。多分この人の気持ちに共感する人多いんじゃないかなっていうくらい身近で、リアルな恋愛の悩み。
薄々分かっていた。年収じゃない。顔でもない。いや、外見はちょっと大事だけど、それよりも必要なもの。
それはなに一つ特別じゃないわたしと向き合ってくれる、関心と愛情。
本文P154より
それだ! ほんとそれ。
感動しました。そうなんだよ。なんだかんだ言って、そこなんだよ。
この言葉を読んで気づかされたので、読まなかったらずっとわからないままだろうなと思う。ほんとうにこの作品を読んでよかったと思う瞬間でした。
なに一つ特別じゃないわたしだって一生懸命がんばっていて、世界の本当に端っこで一ミリくらいは役に立ってる。
そのことを大事に扱っていないのはわたし自身だった。十万円で赤の他人がなにもかも変えてくれることを期待するくらいに。
本文P155より
悩める全ての人類に届けたいこの名言。私も皆さんもちゃんと頑張っている。自分を粗末に扱ってはいけないよ。大事にしてね。
ここから胸打たれた感動名言が続きます。(もう書き始めていたけれど)
さりげないけど濃厚な99点のキスだった。残りの1点はあえて見ないふりした。
本文191より
もう島本さんの紡ぐ言葉に惚れ惚れしちゃう! そんな一文。
三十歳になった途端に自分を堅く水気のない豆腐のように感じていたのも事実だった。中途半端に崩れやすいまま形が定まってしまったような。
本文P224より
この比喩、すごい。すとんと胸に落ちました。
さすが心理描写のスナイパーだわ。(勝手に異名つけちゃう)
一人でだって生きられる。だけど二人が出会ったことで、お互いやまわりまで変えるほどの波がどこまでも広がって打ち寄せていくのだ。
本文P298より
ひとりでも大丈夫だけれどあえて二人で生きる理由。二人でいた方が影響し合って、いろんな景色を見ることができて、いろんな考え方があると知ることができる。その方が人生がおもしろくなるもんね。
最後に
大人の恋愛を通して、他人と生きるうえで大切なことを、きれいな文章に触れながら考えることができました。そして好きな人、大切な人と一緒に旅や食事をしたくなる。そんな素敵な物語でした◎