今回は青山美智子さんの『ただいま神様当番』を紹介します。
青山さんといえば、感動やほっこりするお話。もうそこは絶対的信頼を置いています。
更に今回は「やっかいな神様」がお話のメインのようで、コメディっぽさも期待しちゃう。
更に更に、個人的に嬉しいことがもうひとつ。
青山さんの本の表紙を度々担当されている、あのミニチュアライフの田中達也さんとの対談まで収録されているのです!
さて、今作はどんな気づきを与えてくれるのでしょうか。
目次
あらすじ
バス停[坂下]の落とし物を持って帰った人は翌日、神様の願いを叶える「神様当番」に任命される。
神様の願いは、その人自身の願いであり、課題でもある。
やっかいな神様に振り回されながら成長していく人たちの連作短編。
感想
神様がめちゃんこお茶目でかわいいです。
実際に神様当番になったら厄介だし、ちょっとウザいけれど……笑
姿かたちはちっこいおじいちゃん。しかもジャージ。
中身は3歳児。
神様に翻弄される皆さんも、てんやわんやで大変そうだけれど、おもしろいです。
もちろん青山さんなので、おもしろいだけではない。
ハッとさせられたり、目頭が熱くなったり、キュンキュンしたり、ほっこりしたり。
神様が導いた先には、いろんな感情と、人生の気づきが待ち構えています。
どれも大事なことで、でも普段は意識を向けないから気づけないこと。
神様は、直接的にアドバイスをするのではなくて、本人に体験させて、それを通じて自力で気づかせるスタンス。
というか、神様=彼らの本心なのです。
神様の願い事を叶えさせるために動いたつもりが、じつは自分のための行動。
神様が姿を消したと気づいたときには、幸せな気持ちと同時に、自分を変えてくれた神様に感謝への気持ちが溢れる。
ちょっと寂しい気持ちにもなるけれど。それは余韻というやつだ。
登場人物が別のお話で登場したり、繋がったりするおもしろい構成も健在です。
このような構成って地味にテンションがあがります。
前作『猫のお告げは樹の下で』に登場したアレも再び登場します。
これも嬉しい設定です。
私は『二番 松坂千帆(小学生)』のお話が意外にも響きました。
小学生のお話なので、深くないだろうなと見くびっておりました。(ひどい偏見)
それなのに最後、感動して目頭が熱くなっておりました。
では順番に、それぞれの感想と並べて名言(響いた言葉)もつらつらと。
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『一番 水原咲良(OL)』
私も受け身体質な部分があるので、共感したし勉強になったし、ハッとしました。
私を楽しませるのは私。
順番なんて、もう待たない。
自分から世界に参加していこう。腕を伸ばして、この手でしっかりとつかんで。
本文P68より
いつかはきっと……を待つのではなくて、チャンスも良縁も時には自分で掴みに行く。
じっとしていたら、つまらない。
自分を楽しませるために、アクションを起こすのだ! (決意)
苦手な人への対処法も、ためになりました。
その人を全否定しても、自分がつまらなくなるだけ。
適当に受け流したり、その人をおもしろおかしく変換する方が楽しいですね。
『二番 松坂千帆(小学生)』
このお話は不意を衝かれました。
私も弟がいるので、姉という立場なので、大共感。
弟へのイラ立ちや、他の年下くんたちとの比較や理想も、よくありました。
そして、ぶつかり合いながらも、お互いを思いやっていたことも。
大人になった今だってそう。
思うところはたくさんあるけれど、無条件に助けたい。見放せない。
姉弟ってすごいなって、自分たちのことも含めて感じました。
「怖いものなんてない人より、本当は怖いのに立ち向かっていく人の方が、何倍も強いよ。それを勇気って言うんだと思う」
本文P102より
弟くんは強い。勇者だ。
最後に弟くんが強きものに立ち向かおうと頑張っている姿には目頭が熱くなりました。
なんて健気なの……!
『三番 新島直樹(高校生)』
「思い通りにならない恋にすったもんだするって、究極のリア充だよ。きれいなことしかない世界なんて不自然なんだから」
本文P190より
嗚呼、青春。キュンキュンが止まりませんでした!
最後の方なんか、こっちが恥ずかしくなっちゃうくらいロマンチックなお言葉が……!
そこに至るまで、主人公も彼女も、自分を表すコンプレックスと闘っていました。
みんなある。自分の隠したいところ。見栄を張りたい気持ち。
不完全な僕たちこそ、きっと完全体なんだ。
本文P196より
完璧じゃなくても、不完全でいい。この不完全な姿が、本当の自分(完全体)なんだ。
不完全な部分すら、愛しい。
素敵なお話でした。
『四番 リチャード・ブランソン(大学非常勤講師)』
リチャードの外人特有の純粋さが可愛くもあり、おもしろいです。
神様当番に対する反応、神様を認識するまでの経緯がコミカルで吹き出しちゃう。
神様もリチャードも可愛くて微笑ましいお話でした。
「怒っているとか悲しいとか、そういう気持ちは一番しっかり伝えなくちゃだめだよ。その後にちゃんと笑うためにもね」
本文P229より
気持ちを押し殺して延々とモヤモヤするよりも、しっかり伝えた方がお互いにスッキリした気持ちでいられる。
私もネガティブ感情は本人に伝えられないタイプなので、できる限り意識していこうと思いました。
『五番 福永武志(零細企業社長)』
さすが五番。傲慢で頑固な感じがラスボスに相応しい。
さて神様、そんな彼をどう導くのか。
本心では人に親切でありたいと思うけれど、余裕がなかったり、プライドが邪魔したりして、ぷんぷくちゃんになってしまう。
「みんなが彼女を愛して、彼女はそれ以上にみんなを愛するんです。そのエネルギーが循環している。ネネさんは応援の持つ莫大な力を知っているんです。ひとりで叶えられる夢など、何ひとつないってことも」
本文P285より
偶然出会った、無償の愛を目の当たりにして気づく。
自分は周囲を蔑ろにしていることと、周囲から一方的に愛をもらっていたことを。
周囲の支えがどれだけ有難いことか気づいた彼は、人として少し偉く(成長)なられました。
対談では、過去作や今作の裏話や、表紙の作品の方の裏話なども語られていて、すこぶるおもしろかったです。
過去作を再読したくなります。
最後に
どのお話もハッとさせられる、心の教科書のようなお話たちでした◎
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