煌夜祭ってなに? どんなお祭りなの? 煌びやかな夜のお祭り?
という好奇心から手に取ったこの本。
さらっとあらすじを見ると冬至の日のお話ということで、せっかくなら冬至に読もうと楽しみに積読していた一冊です。
ついに冬至が来ました!
普段なら、寒すぎるこの時期なんて待ち遠しくもないのですが、この本のおかげで今年はちょっぴり楽しみでした。
(余談だけれど、冬の夜空は好きです)
目次
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あらすじ
舞台は死の海に浮かぶ十八諸島。
冬至の夜に、お屋敷の庭で「語り部」という人たちが集い、島々を巡って聞き集めた「魔物の物語」を夜通し語り明かす「煌夜祭」が開かれる。
なぜ魔物がうまれるのか。なぜ魔物は人を食べるのか。
「語り部」が集めた人と魔物の物語が、今年の冬至も語られ始める。
感想
異国の童話のような、おとぎ話の魅力が満載。
ファンタジーや童話が好きな人、必見です!
私も小中学生の時に『ハリー・ポッター』シリーズや『ダレン・シャン』シリーズを大好きで読みまくっていて、その時のワクワクした気持ちを久しぶりに思い出していました。(うお、この感じ、懐かしい……!)
語られる物語ひとつひとつは、単体としてもちろん引き込まれるほどおもしろかったのですが、じつは繋がっているという構成もすごいです。別のお話かと思いきや、同じ時代の同じ人物たち。
そして、語りが進行していくに連れて、少しずつ謎も解けていく。
最初はすべて独立した物語だと思っていたので、同じ人物が出てきたとき「え、この人誰だったっけ」と焦りました。
さらに私の苦手な横文字の名前&人物多め。混乱です。途中からメモを取っていたけれど、それでも迷子になったりしました。
物語がおもしろいので、そこに集中したいけれど、でもこの人物ってもしかして……? の連続で、ページを戻すもどかしさとも格闘していました。
そういうわけで、格闘して完成したパズルを記事の最後に置いていく予定です。ネタバレになっちゃうので、知らないまま読みたい方は、お手数ですが、その部分は目を閉じてください!(難儀な要求)
その前にまず、物語単体の感想をちらっと。
※今回は一話に対する感想をコンパクトにしたので、目次に載せません。
第一話 『ニセカワセミ』
煌夜祭がなぜ行われるのかを説明するには打ってつけの、トップバッターに相応しい物語です。
ニセカワセミの愛と勇気ある最後に、童話独特の切なさが漂います。
そして後々わかることですが、あの魔物はあの人だったので(ネタバレ区域に書いてます)ちょっと胸熱。
第二話 『かしこいリィナ』
驚異的なかしこさに感服です。よく思いついたな……! という策ばかり。
そして最後はかっこよくも儚い。と思いきや!
リィナの正体に驚愕。そういうことだったのね( ゚Д゚)ってなります。
目まぐるしかったけれど、おもしろかったです。
第三話 『魔物の告白』
魔物に生まれてしまったがために、苦しくて切ない人生を送る主人公。
認めてもらえない。好きな人に触れられない。血に逆らえない。
でも最後は、ちょっと感動的でした。
この物語から魔物の謎、これから続く物語との繋がりが出てき始めます。
第四話 『七番目の子はムジカダケ』
一番童話っぽい物語でした。
子どもは7人までしか育てられない。8人目より7人目は劣っている主人公は捨てられてしまう。
大人を恨む主人公が必死で守ろうとしたものの、正体は私の予想通り〇〇だったことがちょっと切ないのと、でも最後は温かい締め方で、ほっこりしました。
第五話 『王位継承戦争』
さてさて、ここからどんどん繋がっていきます。今まで語られた物語がどんどん回収されていきます。混乱しますので、メモの用意をして読むことをおすすめします。(もっと前からメモの用意は要った)
第三話で出てきた戦争、第四話の数年後の物語です。
男尊女卑、貧富の差、後継ぎ争い。人間の醜い部分が集結した戦争。
第二次世界大戦の日本を彷彿させる描写(特攻隊的な)。
最後には新選組を彷彿させる描写。(←これは私個人の感じ方かも)
どんな世界線でも、戦争の形は変わらないです。
第六話 『呪い』
第三話の戦後です。
自分の役割を全うするために、その役割と運命が呪いのように主人公を狂わせていきます。
どうしたらいいのか途方に暮れて……なんと、思わぬところに物語が着地します。
え、君が彼!? そうだったの!? となります。たまげたよ。
そうなるともうひとりも怪しい。もうひとりの正体は……?
という好奇心を満足させるべく、第七話へ。
第七話 『すべてのことには意味がある』
もうひとりの正体はもちろん、なんと若干忘れかけていた第二話の伏線回収が……!
第二話の彼女、幻的に終わったのかと思っていたのに! 完全に盲点!
予期せぬファンサに戸惑いながらも興奮しました。
語りによって、お互い正体を明かした二人の語り部。
それだけで既にお腹が満たされるような満足感なのに、素敵感動展開はまだまだ続きます。(お母さんの「腹八分目までにしなさい」という掟を破らねばならない状況だ)
仮面を継承したり、じつは二人は過去(第四話)に約束を交わしていたあの二人だったり……!(詳しくはネタバレ領域にて)
遍歴というエピローグでは、二人が記憶の中を旅するような描写。
今までの登場人物と、その裏側が次々出てきて嬉しい気持ち。
最後にムジカ(名前出しちゃった)がお願いをしたこと。それをしっかり果たした彼。
ここも最後、グッときました。愛だな……。
人物解析、魔物の謎まとめ(ネタバレ区域)
※ここから先はネタバレ区域に入ります。
こちらを見てから読んでも十分楽しめますが、まっさらで、自分の力で人物解析をしたい方は、すっ飛ばしていってください!
□ナイティンゲイル(小夜啼鳥の仮面の若い語り部)
『魔物の告白』の主人公ガヤン。魔物。
戦後はターレン島主に。最後にはトーテンコフを引き継ぎ、この先ずっと語り部として活動していく。
『七番目の子はムジカダケ』で、ムジカが助けようとした「姫」と呼ばれる美しい男の子。
□トーテンコフ(頭蓋骨の仮面の先に来た語り部)
『七番目の子はムジカダケ』の主人公ムジカ。
『王位継承戦争』では、エナドの養子になりクォルンに改名。
一人称は「俺」と名乗る女性。(男女差別があった時代背景を問題視する彼女らしい一人称だなと思います)
□ターレンの魔女(奇妙な色合いの仮面)
『魔物の告白』『七番目の子はムジカダケ』に登場する魔女。魔物。
『ニセカワセミ』に登場する魔物。
□魔物の謎
魔物は戦争や飢饉などの世が乱れる時代に島主の家系に誕生する。
魔物はその時代の記憶(歴史や知恵)を、人を食べて吸収し、永く生きて、新しい世の人たちに語り継ぐ。
それが魔物の存在意義で、人を食べる、不死身の理由。
ということが、最後まで読むと少しずつ判明していきます。
魔物は語り部になるために生まれてくるのですね。
最後に
久しぶりに異世界ファンタジーを読む時のワクワクドキドキを味わいました。
大人から子どもまで楽しめる、おもしろいお話でした◎