私事ですが、図書館デビューしました!👏
村上春樹作品はいつか読みたいと思っていて、有名どころの『ノルウェーの森』を探していたのですが、こちらがなんともそそられる見た目だったので、一冊目はこの子です。
ホラーは苦手なのだけれど、怪談とかには興味がある。
タイトルといい、表紙デザインといい、そんな雰囲気が漂っていて、一目でお持ち帰りを決めました一冊です!
目次
あらすじ
日常の中にある偶然や奇跡的な瞬間、見過ごしているだけで実は存在するであろう出来事にフォーカスした不思議な短編5篇。
感想
こういう何とも言えない、不思議な世界観すごく好きです。
全部おもしろかったです。全部印象的でした。
お話によって不思議レベルは大から小まで。
強いて言うならば、読み進めるとだんだん不思議レベルが上がっていく順番。
そうです。『品川猿』が不思議レベルマックスでした。
なんでもあり的な世界なので、理屈なんてない。
だから設定が飛躍していて、クスッとしてしまいます。
では順番に個人的感想を書いていきます!
『偶然の旅人』
偶然が重なる。シンパシーを感じる。
私も何度かあります、そういう経験。そんな時、感動しちゃいます。喜んじゃいます。
あ! それさっき、ちょうど私が〇〇したやつ! ってはしゃいじゃいます。
このお話は私の経験したこのある偶然とは格が違う。レベルが違う。
もっとすごい、すごすぎて鳥肌立ちそうな偶然の繋がり。虫の知らせみたいな。
全然関係のない出来事が、勢いやきっかけになって、長い間凍結状態だった姉弟仲を進展させてくれた。素敵なお話でした。
「偶然の一致というのは、ひょっとして実はとてもありふれた現象なんじゃないだろうかって。(省略)僕らの方に強く求める気持ちがあれば、それはたぶん僕らの視界の中に、ひとつのメッセージとして浮かび上がってくるんです」
本文P47より
偶然は常に漂っていて、何かを機に目に見えるものになる。その見えたものだけに反応して「偶然だ」「不思議だ」と私たちは思うという説。
おもしろい考えだし、あり得そう。気付いていないだけで、そこかしこに偶然が転がっているのか。
村上さんのジャズの神様説も捨て難いです……。
ジャズの神様が偶然を引き起こしたというのも、ロマンティックよね。
『ハナレイ・ベイ』
主人公の女性が凛々しくてかっこいいです。
息子を亡くした地を憎まず、遠ざけず、受け入れようと、毎年ハナレイ湾に滞在する行動力も、滞在地での振る舞いも。
他人である若者2人には視えて、母親である自分には視えない。
姿を現さないのか、若者にしか視えないのか。
でも確かなのは、今でもそこに息子は居るということ。いつか彼女にも、息子の姿を視れるといいな。
息子を失っても、逞しく生きる彼女が魅力的でした。
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『どこであれそれが見つかりそうな場所で』
来た来た! 不思議で奇妙系!!(これを待っていた)
夫は20日間、きっとこの世ではないどこかに居たってことよね?
主人公はその世界の存在を知っていて、その入り口を探しているんですよね? ね?
どんな世界なんだろう。どうして夫はその世界へ導かれたんだろう。
最後のセリフから察するに、戻ってこられない可能性もあるってことでしょうね。ちょっとこわい。でも気になる。
調査中に出会う人たちも、個性豊かでおもしろかったです。
ちょっと難しいことを言っても、ちゃんと解釈してコミュニケーションする主人公をすごいとも思いました。(特におじいちゃん)
『日々移動する腎臓のかたちをした石』
タイトルが謎。そこがいいのです。おもしろいのです。
ちなみに主人公が書いた短編のタイトルです。
腎臓みたいな石が毎日、元の場所から移動しているというお話を書いていました。
この物語自体も普通におもしろかったです。
腎臓石は、女医が恋人の中に埋め込んだ通報者的存在。そして女医がどんどん腎臓石に引き込まれていくような描写には、腎臓石の魔力みたいなものを感じて少しゾッとします。
さて、このお話の現実世界に戻ります。
「男が一生に出会う中で、本当に意味を持つ女は三人しかいない」
本文P141より
という父の言葉に影響を受け、運命の女性を探す日々。
私は父の言葉を、あながち間違いじゃないのかもと思います。なんとなく。根拠はないのですが、無言の説得力があるなと思いました。
運命の女性像に執着するあまり、視野が狭くなっていた主人公は、ある女性との出会いをきっかけとして最終的に、大事なのは三人とかいう数をカウントしていくことではなくて、唯一無二な存在の一人を、その彼女の全てを受け入れることが大事なんだと気づくのです。深い気づきをして成長したオチにほっこりします。
「職業というのは本来は愛の行為であるべきなんだ。便宜的な結婚みたいなものじゃなくて」
本文P153より
この名言をこぼした主人公に瞬殺されました。かっこいい。
その職業を誇り、愛する行為。
この気持ちを忘れてはならないと今、胸に留めました。
『品川猿』
ミステリーっぽい雰囲気が前半に漂って、先が気になるわくわく感。
犯人とのご対面直前で、もしや……と展開に感づき、ドキドキ。
名前忘れの原因と犯人は、そのもしやが当たって嬉しいのだけれど、
まさか言葉が話せるとは……!
犯人が話すことで、なんだか日本昔話を見ているような感覚になり、犯人に愛着すら湧きました。ほっこりしました。癒されました。
名前を盗んだ動機もふわっとしていて、そのゆるさが一層ほっこりさせるのです。
この名前盗難事件は、群を抜いて一番東京奇譚でした。
「それ(嫉妬)は肉体における腫瘍みたいに、私たちの知らないところで勝手に生まれて、理屈なんかは抜きで、おかまいなくどんどん広がっていきます」
本文P209より
嫉妬を心の腫瘍と喩えるの、しっくり来て感動しました。
最後に
独特な世界観のお話が好きな私にはどストライクな短編集でした。
そして思ったよりも読みやすかったです◎
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