森見さんのデビュー作であり、第15回日本ファンタジーノベル大賞を受賞した作品です。
私はもりみん(敬愛の意を込めてそう呼ばせていただきます)ファンと自覚をしていたのですが、デビュー作を読んでいなかったという不覚の自体。
代表作と最近の作品しか読んでおらず、それでファンと名乗れるものか!
というわけで、読みました。もりみんのデビュー作!!
目次
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あらすじ
恋をこじらせた京都大学生による友人や知人との日常、そこから生まれる妄想劇、いろんな意味でとんでもない計画の実行、元カノとのあれこれが詰まった手記。
感想
デビュー作からもう森見ワールドは全開でした!
もりみんの武器のひとつ。こじらせヘタレ大学生を魅力的におかしく、時にかっこよく描くこの感じがくせになります。大好き。
実際に登場人物たちみたいな人が周りにいたらしんどいけれど、危ないけれど。警察沙汰だけれど。
それでも、読んでいる間はそんなこと考えない。おもしろおかしくて、そんなこと考える隙もない。他人事だから、やばい(笑)と思うくらいで。
他作品もそうですが、登場人物みんな個性が強すぎて忘れられない。爪痕を残していく。ヒロインですらも。モブキャラすらも。ここには平均的な人は出てきません。
主人公語りで話は進んでいくのですが、ものの喩えが私のツボを突きまくります。
単純に「不安」ではなくて「芥川龍之介風の不安」と言うところとか。
松浦亜弥オフィシャルファンクラブが出てきたときは、懐かしさと絶妙なチョイスにしばらく笑いが止まりませんでした。油断していると、突然こうやって絶妙な言い回しやツッコミたくなる言葉が投下され、被爆します。
なにを好きこのんで、こんな男汁溢れる手記を熟読する必要があろう。読了したあかつきには、必ずや体臭が人一倍濃くなっているはずである。
本文P9より
始まりに、このように煽ってくる感じも好きです。余計に読みたい。
タイトルが『太陽の塔』なのに、その太陽の塔が出てこず、舞台も京都。いつどの流れで出てくるのかとウズウズしていたら、中盤から出てきました。なるほどそういう流れか、とニヤニヤしました。主人公にとって太陽の塔は思い入れ深いものだったからか。
このお話は登場人物の妄想劇で溢れていて、それがめちゃくちゃで奇想天外で(日常もそうだけれど)おもしろいです。想像力が豊か過ぎて、現実なのか妄想なのか夢なのか、私は振り回されました。楽しい。
主人公の自尊心も、凄すぎておもしろいです。
クリスマスイブを相当嫌う彼らが起こす「ええじゃないか騒動」。
どうなることやらとハラハラしていたら、予想を超えた展開。きっと彼らも予想外だっただろうな、この展開は。
ええじゃないか騒動中の描写がおもしろすぎてニヤニヤがとまりませんでした。(家で読んでいて良かった)
「ええじゃないか」の威力が凄すぎて、描写が「ええじゃないか」に何度も阻まられる感じがもう、情景が浮ぶし滑稽。(褒めています)
こんなにずっとおもしろおかしく流れてきたのに、ラストはちょっと感傷的。
じーんときました。終わり方が本当に良い!
めちゃくちゃ好きだったんだな、元カノのこと。
冒頭や、お話の途中で
何かしらの点で、彼らは根本的に間違っている。
なぜなら、私が間違っているはずがないからだ。
という持論が出てくるのですが、最後にこれのラスト一行が変わるんです。そう、持論が変わるわけです。かっこよかった。はじめて主人公がかっこよかった。
『四畳半神話大系』好きの方、絶対このお話も好きですよ!
構想が同じだし、あの「まなみ号」「猫ラーメン」「下鴨幽水荘」なども出てきます。
読後は『四畳半神話大系』を再読したくなっちゃう。
個人的に一番笑ったところは、女性に不慣れな高藪が言い寄られてパニックになった場面。
「ダメだ。三次元だぜ。立体的すぎる。生きてる。しかも動いてる」
「あたりまえだ。落ち着け。この先一生、二次元世界で生きるつもりか」
本文P178より
爆笑しました。しかもちょっとかわいい。
ぜひみなさんにも読んでもらいたいです。この時の切迫しておかしくなっている空気は読まないとわかりません!
最後に
デビュー作からすでに最高でした。他にも未読の作品があるので、そちらも楽しみです◎