今回はまさきとしかさんの『祝福の子供』を紹介します。
まさきとしかさん、今年に入って見つけたお気に入り作家さんです。(もう今年も終わりそうですね)
『あの日、君は何をした』『彼女が最後に見たものは』が衝撃的すぎて、他の作品も読みたいとずっと思っていて。(ちなみにこちら4冊目)
※ちなみにこちら、単行本の『ゆりかごに聞く』を改題したものです。
そのうち再読して、この2冊たちもブログで感想書けたらなと思っております。(意気込み)
母親の狂気を描いたらまじですごいまさきとしかさん。こちらはどんなお話なのかな~♪
目次
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あらすじ
新聞社に勤める主人公は離婚し、我が子とは定期的に会う生活を送っていた。
ある日、21年前に死んだはずの父の遺体が発見されたという警察からの連絡が入った。
さらに父の遺品から、最近起きた猟奇的事件の記事の切り抜きが見つかる。
父だと思っていたあの二十年前の遺体は誰だったのか。
父はなぜ今まで死んだことになっていたのか。
父が切り抜きしていた事件と何か関係性はあるのか。
父の謎を探っていくと、今まで疑ってもいなかった事実に行き当たる。その先にある真実はなんなのか。
感想
21年前から死直前までの空白の時間を生きた父。それを知る人から少しずつ語られる父の交友関係。
その繋がりの先はどんどん知ってはいけないような世界に入っていく。(こういうの好きなんだよなあ)
父が切り抜きしていた一見関係なさそうな事件との繋がりも、じりじりと見えてくる。
そこから判明したのは、まさかの自分自身の本当の身元。
自分の存在を全く疑っていなかったのに。ここにきて、想像もしなかった自分の正体を知ってしまう。残酷。
自分のことなのに、自分の本当の正体がわからなくなる。
たしかにこんな真実、知らない方が良かったのかもしれません。
本当の生みの親はあの人で、母は自分を〇〇しただなんて。
重い重い真実。大人になったとしても、こんな真実は受け入れられないです。
だからこそ、両親は必至で隠そうとした。この真実を墓場まで持っていこうとしたのですね。
でも、父の遺品から出てきた事件の切り抜きが引き金となって、新聞社の彼女は「知りたい」という欲望に駆られてしまったのです。運命のいたずらだなあ。
いやでも、こんな謎に包まれた状況、放っとけないですよ。私でも放っとけない。
もう調べろと言いているようなもんじゃない、お父さんよ!(責任転嫁)
父がなぜ自らを死んだことにして、別人の人生を歩むことを選んだのか。
そこも最大のミステリー。
(詳しくはネタバレ区域で!)
父の謎に迫ろうとする彼女と同時進行で、元恋人の家族人生も危うい動きを見せるものだから、思考や好奇心が忙しいったらありゃしない。
どろどろ過ぎる世界だ。
まずこの一連の犯人と動機ですね。
もう全然、犯人候補に入っていなかった人が犯人なんですよ。(よくある)
犯人フラグが立った時、鳥肌が立ちました。ただでさえ寒いのに。
心臓もバクバクでした。
まじか。え、こわっ。え、ちょ、やばいよ。まじで、すぐそこに隠れてたりしない? 狙われてない? 単独行動危ないって……!(落ち着け)
でもね、私の予想した展開にならなくて、そっちかぁ! って気持ちでした。
切ない。悲しい。愛おしい。
このドロドロでハラハラドキドキ、ゾクゾクなホラークライマックスが、こんな着地をするとは。見事に裏切られて感激です。
ちゃんと全ての人物に繋がりがあった。その張り巡らされた人間関係もおもしろかったです。楽しかったです。気持ち良かったです。感動しました。
※ここから先はネタバレ区域に突入です。
さて、父がなぜ自らを死んだことにして、別人の人生を歩むことを選んだのかという謎について。
父親なりの愛だったのです。
真実を知ってしまった父が、その真実を受け入れられない。でも愛していたい。
これからも妻子を愛し続けるために、これから家族が黒木の脅しによる火の粉に苦しまないように、あえて別人となって生きることを選び、陰で見守ることを選んだのです。
父が一番かっこいいわ。
元恋人の妻子への疑惑は、逆でした。
浮気も、子どもが自分と血が繋がっていないという疑念も。
そんなものはなかったというオチでした。
浮気もしていないし、この子は自分の子。
奥さん、何もやましいことしていないのに、あんなことを言われて、あんな態度を取られて傷ついただろうな……。
これから彼はどうするのかな。奥さん帰ってくるのかな……。
最後に
まさきさんの作品で「親とは」「子どもとは」と、毎回考えさせられます。
いろんな形の親子の関係、感情を描くのが本当にお見事だなと再実感しました◎