今回は椰月美智子さんの『純喫茶パオーン』を紹介します。
ずっとこのレトロ感がかわいい表紙、気になっていました。
ついに文庫化したので手に取ります。
不思議な事件と個性的な人々が引き寄せられる喫茶店。
どんな日常ほっこりミステリーが待ち受けているのでしょうか!
目次
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あらすじ
ぼくのおじいちゃん、おばあちゃんが経営している『純喫茶パオーン』。
そこでは個性的な人々と日常の不思議な事件が起きる。
感想
純喫茶パオーンに行ってみたいです。
ちなみに、小田原にある『ケルン』という喫茶店がモデルなのだそうです。行きたい。
店主のおじいちゃんがユーモアたっぷりで魅力的。おばあちゃんはしっかりもので、2人の老夫婦のバランスが漫才みたいです。
特におじいちゃんは個性的で、すごくおもしろくて好き。(私の推しです)
足が不自由なのに、帳面張力ギリギリのドリンクをこぼさず運ぶ特技とか、いろんな方言を混ぜこぜで喋るところとか、ギャグとか。こういう店主の喫茶店の常連になりたいです。
主人公のお父さんも、怖がりなくせに怪談好きというキャラで憎めない。
そして、作中に登場するミルクセーキとナポリタン。無性に食べたく、飲みたくなります。すっごく美味しそう。
ここ、純喫茶パオーンを舞台に日常ミステリーが密やかに展開されるのですが、どれも共感したり、ほっこりするのです。
日々に疲れている、癒しを求めている読者を、昔ながらの喫茶店特有のアットホーム感と、少しの日常ミステリーで和ませてくれる。そんなお話です。
『ライヤーミラー』
小学生の視点で進行していくので、どこか微笑ましい言葉が、ずらずらと並んでいてほっこりします。かわいいな~と思って読んでいました。
ちょっと賢くて、ませている。そんな主人公です。
サンタさんは存在するか問題と、大好きなゆりちゃんの恋の行方。
そして後半に怪しいお客さん。
ゆりちゃんが〇の子だったことにびっくりしました。
完全に先入観が邪魔しました。良くない良くない!
なるほど。だから憧れの先輩を取られることに、痛々しくも開き直ろうと、強く前向きに情緒を必死で保とうとしていたんだ。
強い。かっこいいぞ、ゆりちゃん!
ゆりちゃんが今後、その先輩を上回る素敵な人と巡り合えますように。ゆりちゃんのそのままを受け入れてくれる素敵な人に。
ちなみにサンタさんからもらったライヤーミラーという嘘を見破る鏡は、大活躍するものの、最後は……。
子どもの無邪気さにほっこりする短編でした。
『あまのじゃくだな、のっぺらぼう』
冒頭の「ニキビは大人になり始めたシンボル。アオハルのシンボル」と、ニキビ肌を自慢する圭一郎が単純で、大人の私から見ると可愛らしくてクスクスしていました。
ニキビはそんないいものじゃないぞ。でもそうやってポジティブに捉えられて、素敵だとも思います。(本題はそこじゃない)
純喫茶パオーンに、深夜シャッターやガラス戸を叩き鳴らすのっぺらぼうが現れるという心霊現象。そして、近所のクスノキ公園でも心霊現象が。
それの原因を調べるべく、中学生に成長した主人公が仲間と張り込みをして、犯人を捕まえるお話です。
犯人、意外でした。その可能性ちっとも考えなかったわ……。
でも、わかる。進級で学校が変わって離れると、こういう悩みや苦しみって生まれますよね。私自身も、この気持ちに経験あります。
でもなんか、やっぱり純喫茶パオーンは温かくて素敵な場所だなと改めて思いましたね。この空気感、羨ましいです。いいな~。
『パオーンは永遠に』
主人公、大学生になりました!(拍手)
純喫茶パオーンのマスター高齢化により、存続が危ぶまれる……。
後継ぎを育てている最中、純喫茶パオーン史上の大ピンチ事件が発生です!
でも、個性豊かないつものメンバーがコントのように軽快に解決。
切迫した空気感のはずなのに、コントみたいなカオス感が心の緊張をさせてくれない。(褒めてます)
主人公が受け取った不穏な暗号メッセージも、全然違うメッセージだったという。(そもそもメッセージでもなかった)
読んでいて何度、心の中でズッコケたことか……!
最後に
小説というより、絵本やアニメを見ているようなゆるゆるで和むお話でした。
昭和レトロな喫茶店に行きたくなります◎