今回は真梨幸子さんの『カウントダウン』を紹介します。
不気味な美しさを放つこの表紙。
そして真梨幸子さん。
読む前からもう既にゾクゾクします。
目次
あらすじ
癌と診断され、余命半年と宣告された主人公。
後悔なく死ぬために、やらなければならないことがある。
これまでの人生と向き合って思い出される苦い思い出や、周囲の人たちへ募る恨み妬み、そして汚点。
これらを一掃させ、有終の美を目指す。
理想の臨終に向かって、着々と終活を進めるが、急に事が急変する。
彼女の身に何が起こったのか。何を企んでいたのか。何を忘れていたのか。
終盤で怒涛の二転三転が巻き起こる終活ミステリー。
感想
おもしろすぎる……!
冒頭から最後まで、ずっとおもしろすぎる!!
特にchapter7.からの展開が物凄くて、目をギラギラさせながら一気読みしました。
ああ、未だに昂奮が冷めやらないぜ。
こんな短時間に二転三転が起きるなんて、頭に「……!?」が大渋滞ですよ。
ミステリー好きにはたまらないですよ。
真実がマトリョーシカ状態で、たまらない。
さりげなく敷かれた伏線もどんどん回収されて、そういうことだったのかと思うのと同時に、ぞわっとする。
Intraductionのホラーっぽい描写も、この場面だったのかと繋がってスッキリでした。
読者にも伏せられていた主人公の企みが、全て成功しているのも気持ちいいけれど、立派なイヤミス。(矛盾)
もちろんchaoter1.~6.までも、違う意味でおもしろかったです。
主人公のエッセイが各冒頭に載っているのですが、これがまた読み応えあっておもしろいのです。
鬼のパンツはなぜシマシマなのか。鬼退治のお供はなぜ猿、キジ、犬なのか。
「マンション」の本来の意味。
説得力のあるミニマリスト生活のすすめ。
などなど。
知らなかった知識や、考え方、固定概念への核心を突くこと。
読み物としてかなり充実した内容でした。
言葉選びもおもしろいのです。
例え方や、呼び名、自分へのツッコミもおもしろい。
余命宣告や終活という重い題材なのに、おかげでコミカルな雰囲気になって、読みやすいです。
私のお気に入りは「樹海女」です。
その人の存在があるだけで、調子を狂わされる。
響きも例え方も好き。
余命宣告の受け止め方や考えも、おもしろかったり、考えさせられたりします。
「闘うっていうことは、消費にほかならいの。しかも、人って、闘いに使うお金ならば糸目はつけないものよ。それが、身の丈以上の出費でもね。なんでだと思う? それは、使え、使えって、周囲が煽るからよ。そんなお金はありませんって闘うことをやめたら、『ケチだ』『根性なしだ』って罵られるだけ」
本文P94,95より
ああ、たしかにそうかもなと思いました。
楽にしてくれって思うけれど、周囲に「闘わないなんて意気地なし」と思われながら人生を終えるのは心外だ。
「つまりね、”闘病”というのは本人のためにするんじゃない。家族のためにするものなのよ。これ以上ないってぐらい戦って死ねば、家族も悔いがないでしょう? ~省略~でも、なにもしなかったら後悔が残ってしまう。気持ちもなかなか切り替えられない。しかも、世間にもとやかく言われるわ」
本文P279より
上記と同じようなしくみですね。自分だけでなく、遺した家族までもがモヤモヤしたままになって、周囲に何か言われる。
だったら、自分がどうあれ家族のために闘う姿を見せようと。
でもきついですよね。
※ネタバレ区域※
ここからは、興奮冷めやらぬ気持ちを鎮めるために、二転三転の驚きをぶつけていきたいと思います。よって、ネタバレがございますので注意してください!
< スポンサーリンク >
一番の失態を晒されたけれど、このままいろいろと片付けて、穏やかな顔で臨終。
という展開を想像していたけれど、真梨さんだもの、そんな生ぬるい終わり方はしないよね。
わかっていたけれど、コミカルな雰囲気で、そんな終わり方を予想したのです。
そしたらまさかの、余命を残して亡くなる展開!
絶対ここから、何かとんでもない真実出てくるやつじゃん……!(不謹慎にもワクワク)
私の脳内では、探偵ごっこをしていた彼女は自然と除外。
そこが罠でした。
カモフラージュだったのか。濡れ衣作戦だったのか。
それを見破ったお二人がすごい。
そして二転目。
なんとこの事件は、殺害された張本人が計画したものだったという衝撃的な真実。
そしてそれは妹への復讐であり、妹以外の家族を守るための計画という、言われてみて納得なからくり。
自殺ではなく他殺であることが、彼女にとっての有終の美。
その考えがまた、彼女のすごさを際立たせているように感じました。
まだまだ転ぶぞ、三転目。
妹から見たら、姉の方が自分勝手で非があるという主張。
それでちょっと混乱しました。果たしてどっちが本当のことを言っているのか。
さてさて本当の三転目は、こっちです。
一部の記憶を失っていた主人公の、その消えた記憶がとんでもなかった。
彼女は自己防衛だったかもしれないけれど、人を殺めてしまっていた。
しかもそれは、連絡を取りたいと思っていた行方不明の古い友人で
更にそれは担当編集者の母でもあったというゾクゾクする繋がり……!
覚えのないスーツケースの存在や、Intraductionの場面の真相。
どんどんどんどん繋がっていく気持ち良さが、最高でした。
極めつけは、妹に降りかかった天罰。
これは計画外の偶然だったのでしょうが、とてもガツンと来る終幕でした。
最後に
思っていたよりコミカルな文章で読みやすいぞと油断していたら、終盤に来る怒涛の二転三転の衝撃炸裂展開。
高評価なのも頷けます◎