今回は島本理生さんの『週末は彼女たちのもの』を紹介します。
久しぶりの島本理生さん!
今作はショートストーリーなので、隙間時間や併読に持ってこい。読みやすそうです。
今週末はクリスマスイブ。街がキラキラ最高潮な中で、島本さんの上質な恋愛小説を読むなんて、至福。
目次
あらすじ
様々な立場で恋愛に悩む大人たちの、それぞれの視点の連作短編集。
感想
これまで島本理生作品を何冊か読んできましたが、この一冊には島本理生さんの洗練された言葉とその鋭利さが凝縮されています。
核心をつきながらも上品な言葉たちに、うっとりしちゃう。
島本理生作品を初めて読むという方には特におすすめしたい一冊です。
島本理生さんの良さが、この一冊で伝わると思います。魅力がぎゅっと詰まっています。
ファンから見ても、短いお話の中にグッとくる言葉や展開がたくさんなので、満足感があるのでは。
LUMINEの広告として描かれたお話たちというだけあって、キラキラでおしゃれな雰囲気が漂っています。
けれど内容はリアルで複雑な大人たちの恋愛模様で、悲しい苦しいもあれば、キュンとするものもあります。
上手くいかなくて、もどかしくて、たまに修羅場で、でも今後を期待できるような温かい展開。
はっきりとしたオチがなくとも、これから何かが始まる予感を忍ばせて締めくくるところが、また良き。
恋する誰もが、立派にたくましく生きていると思わせてくれます。
そして、登場人物たちの心情に共感したり、今まで言葉で言い表せなかった気持ちを形にしてくれたりというのも読みごたえポイントです。(ここが島本理生作品の醍醐味)
登場人物についてちょこっと、物申したいので、聞いてくれ。
吉原、スマートに女を振り回す感じがちょいちょい腹立つ!笑
婚約延期という、どっちつかずで、何を考えているのかわからない感じが、キープみたいでとにかくずるいと思うのです。
それなのに、こんなに腹立つ男なのに、キュンとなっちゃう言動の数々を繰り出してくるから、私はキュンキュンしながらも、彼を認めたくない気持ちもあって、勝手に悔しい思いをしておりました。
「前髪はないほうがいいな。額だけは好みですよ」
本文P62より
あなた、婚約者という存在がいながら別の女に、な、なんてことを……!
不覚にもキュンとしてしまうのだから、複雑な心境です。
名言集
ここからは、私個人がグッときたり、心に残った言葉たちをご紹介です。
< スポンサーリンク >
間違っていないほうが大事なものを失うことは、世界にままある。
本文P11『スポットライト』より
そうなのよね。明らかに相手に落ち度があっても、正しいこちらがダメージを受けるという、理不尽な世界の仕組みね。
世界にままあるっていう表現が、またいい。
「私にとってのかっこよさは、奈緒みたいになんでも包み込む優しさを持っていることだから」
本文P26『小さな紳士』より
かっこいい人の定義って人それぞれありますが、言われてみて、包み込む優しさの強さやかっこよさってたしかに魅力的。
ダブルベッドや大きな冷蔵庫は持てなくても、大事にされた記憶なら宇宙にだって持っていける。
本文P43『Your Days』より
形のない大切なものは、忘れない限り側に置いておける。
私にもあるし、これから子どもにも、そんな記憶を持っていてもらえるように与えたいと思いました。
もしかしたら形の出来上がった大人の女には、似合わないものこそ必要かもしれない。
本文P51『Color』より
完璧になりすぎてもつまらないですよね。たまにはスパイスとして、普段選ばないものを選んで、新鮮な気持ちを味わうのも大事です。
「写真を撮ることに集中すると、それ以外の記憶がぼやけるから。記録しなくていいから、好きなように記憶したい」
本文P55『ショート・トリップ』より
わかる!この気持ちはすっごくわかる!!
いうなれば彼女はクイズ番組の一等のハワイ旅行である。
本文P95『忘れ物』より
高嶺の花をそう喩えるか。秀逸です。
女性の話を聞くなら、本気でアドバイスを求められているとき以外、適当でもいいから同意するしかない。
本文P116『変身』より
樹くん、女心わかってる~!笑
「さっきタクシーを拾ってくれた背中を見て、分かったから。向かい合ったときだけじゃなくて後ろ姿もぜんぶ、私は君のことが好き」
本文P155『クリスマスはあなたと』より
ストレートで、丁寧で、キュンとしちゃう。
「実際には、寸前から離婚までの距離は百キロくらいあるからな」
本文P160『午前0時のクリスマスツリー』より
もうすぐ別れるからって言ってから、ちっとも別れない。全然すぐじゃない。信用ならないワード上位ですよね。
本当のことはいつだって、一番言葉にするのが難しい。
本文P162『午前0時のクリスマスツリー』より
特に自分にとって重大なことは、言葉にする勇気がなかなか出ませんよね。
最後に
手軽に読める量なのに、満足感たっぷりな内容と、素敵な言葉たち。
是非ともこの一冊で島本理生作品に沼ってくださいまし◎