本好きの秘密基地

読んだ本への思いをありったけ書いていきます。読みたい本探し、本の感想を共有したい、おすすめ本がある(いつでも募集中だよ)。そんなアナタの場所でもあります。コメント欄で意見などを待っています。(誹謗中傷NG)

BUTTER/柚木麻子

今回は柚木麻子さんの『BUTTER』を紹介します。

第157回直木賞候補作です。

かなり話題になっていて、書店ではよく平積みされており、目に入る。

内容も興味深くて、ずっとずっと気になって、それなのに1年くらい積読しておりました。

食欲そそられる装丁も魅力的です。

 

目次

 

あらすじ

結婚詐欺とその末複数の男性を殺害した容疑で逮捕された梶井真奈子。通称カジマナ

結婚詐欺師の「若くて容姿端麗」というイメージとは異なった彼女はなぜ、複数の男性を夢中にさせることができたのか。

週刊記者の里佳は、執念深く彼女と面会を繰り返し、里佳までもその魅力に飲み込まれていく。

実際に起こった首都圏連続不審死事件(木嶋佳苗事件)をモデルにした、世論の束縛を考えさせられるお話。

 

感想

バターの塊のようにどっしりとした重量感のあるお話に、私は思いの外、読み終えるのに時間を要しました。

甘いものや油分で胸やけを起こした時のような、あの感覚が、度々訪れる。(私はね)

それでも最後まで読み終えたのは、どっしりこってりしていても、最後までとても興味をそそられ続ける内容だったからです。

その先が知りたい、一体どうなってしまうの……という、怖いもの見たさや好奇心がずっとずっとあるのです。

この物語の行く末を、どうか見届けたいという思いに駆られるのです。

そしていつの間にか、私までカジマナに魅力を感じていて、飲み込まれそうになっていました(き、気をつけろ……!)

主人公も、被害者も、こうやってカジマナに落ちていったんだなと共感できるほどに。

カジマナも魔性の女だし、このお話自体も魔性

うっ……! とか思いながらも、やめられない止まらない

全体像としては、そんな感じの本作です。

 

実際に起きた事件がモデルとなっているのですが、このお話の主軸となっている部分は事件ではないのです

女性に対する世論のイメージを問題視しています

先入観、凝り固まった固定概念やイメージ像によって、女性はこうでなくてはならないという強迫じみたしがらみがある

それが当然のように、この世の中にはびこっている。

窮屈さを感じさせている。

そのしがらみを無視するかのように、好きなように生きてきたカジマナが幸せに生きているように映る

世の中の固定概念を無視して、自由に振る舞っても愛される彼女が、不思議で羨ましくて、嫉妬する

だから皆が彼女に関心を持つのではなかろうか。

という、社会問題的な面がメインなのかなと感じました。

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もうひとつ、考察し甲斐があるテーマがあります。

それが女の友情と信頼関係です。

カジマナは「友達はいらない。私が欲しいのは崇拝者だけ」(ニュアンスです)と言い放ちました。(ちょっとかっこいいと思ってしまった)

それとは逆に、主人公と親友は確固たる友情と信頼で結ばれています

柚木さんの他作品でも「女の友情」はよくテーマになっていて、このお話でもディープなまでに描かれていました

女の友情って、信頼がベースにあるので、簡単に築き上げられるものではないのです。

それを改めて痛感しました。

「自分が望むように相手が動いてくれるのが人間関係だと思っているみたいだけど、そういうものじゃないです。予測不可能だし、思い通りにはならないし、どんどん変化していくものなの」

本文P435より

当たり前のことではあるのですが、本当に人間関係って思い通りにならないですよね。

皆、自我があるのだから。

良好な関係を築いても、疎遠になったり、トラブルが起きれば変化する

そういう部分はバターに似ています

カジマナだって、こうは言っても女友達が欲しいに決まっている

面倒だと言われることが多い女の友情ですが、同性の友人じゃないと分かち合えない、受け止めてもらえないことって意外にも多いのです

恋人がいても、家族がいても、カジマナのように崇拝者がいても、彼らでは埋められない孤独はあって、それを埋めてくれるのは信頼できる同性の友達なのです

今さらっと、「崇拝者」を親しい間柄と並べてしまったけれど、そもそも崇拝者って、一方的な感じだし、いつお互い裏切られてもおかしくないスリルある関係ですよね……( ゚Д゚)(家族たちと一緒にするのは違いましたが、お話上お許しを……!)

 

このお話の見どころとしては、さらにもうひとつ!

いろんな食べ物の描写が出てきて、美味しそうで、食欲がそそられます

なんて美味しそうに描写するんだ……!

バター醤油ご飯なんて、半信半疑ながらも、一番すぐ作れるお手軽ごはんなので、じつは読書期間に何度か食べました

お、おいしいわ。

七面鳥はさすがに作れないし、買うことも日本ではできないので諦めですが。

酪農家さんにお邪魔する場面があるのですが、そこでバターや牛乳をつくる過程や乳牛のことを知れて勉強になるし、乳製品を積極的に消費したくもなりました

ちなみに偶然にも、読書期間中にエシレバターのクッキーをいただいたのですよ!

リンクしていて感激しました。(お写真のクッキーがそれです)

エシレバター、お話に登場しますので皆様も機会があれば是非に。

 

最後に

私までカジマナに飲み込まれそうになりました……笑

最後が意外にも光が差すので、ドロドロ嫌いの方でも大丈夫そうです◎

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