本好きの秘密基地

読んだ本への思いをありったけ書いていきます。読みたい本探し、本の感想を共有したい、おすすめ本がある(いつでも募集中だよ)。そんなアナタの場所でもあります。コメント欄で意見などを待っています。(誹謗中傷NG)

青が散る/宮本輝

今回は宮本輝さんの青が散るを紹介します。

宮本さんの本を読んで、他作品も読みたいなと調べているところに発見しました。

タイトルに惹かれてしまいました

結構前の作品で、同じくだいぶ昔にドラマ化もされているらしいです。

どんなお話なのでしょうか!

 

目次

 

あらすじ

新設の大学に入学をした主人公は、熱心な勧誘を受けてテニス部に入部した。

いちから作り上げた部活動に励み、いろんな人と出会い、恋をし、将来への不安と葛藤を募らせる。

焦燥を含めて青春を謳歌する、彼らの青が散るまでの物語

 

感想

青い。余すことなく青い。

弾けるようなキラキラしたものから、焦燥や葛藤まで全部。

そして最後は切なく、余韻を残すように青が散った

ゆるゆるとした日々や、そんなやりとりの中にも、若者特有の熱量や衝動、モラトリアム期間の葛藤、恋など、楽しくもあり苦しくもある青春が盛りだくさんな一冊です。

心の揺れが激しい大学生活。

そして時代背景の影響で、なんだかノスタルジックな雰囲気が漂います

私自身はその時代を知らないし、大学生活も送ったことがないので、大共感みたいなものはないのですが、これが大学生の日常かと思うと、知らないのにエモくなります

モラトリアム期間の葛藤は、時代背景や環境が違っても同じなのだなと思いました。(そりゃそうだ)

ああ、私も20代前半は目に見えない敵と闘うような、漠然とした未来への不安と闘っていたな……と懐かしい気持ちになりましたし、ここにもまた青さを感じました。

 

登場人物がとにかくみんな個性的で、おもしろくて、愛おしいくらいです

誰一人として、影の薄いモブキャラが存在しない。

みんな可愛げがあって、人間くさくて、キラキラしている。

登場人物が結構多いのですが、ひとりひとり丁寧に描かれていて、宮本さんすごい

 

そんな大学生たちの中でいろんな人間ドラマが起きるのです。

部活や恋、友情、各々の心の闘い。

エネルギッシュで、迷いがあるのにまっすぐで。

特にそれぞれが恋に狂う様は、リアルで、行方も毎回気になります

大体この時期の恋って実らないじゃないですか。(もちろん実る人もいるけれど)

恋に破れて、何かを失って、でも大事な何かを得る。

若いうちだから経験できる失敗。その失敗を教訓にして大人になる。

まっすぐに恋に溺れている間は可愛らしくもあり、その自由奔放さや猪突猛進さに危うさもある

でも彼ら彼女らは、傷ついただけで終わらずに、ちゃんと前を向いて進んでいく。

読み終わった時には、みんなが立派に成長したように見えて、でも切ない

今後の彼ら彼女らが気になります。

まだ続きがあるのではないかと思わされるし、勝手に想像してしまったりもする

私としては、解説の森絵都さんと同じように、主人公とヒロインはまた印象的な再会を果たすんだろうなと考えます。

細かく想像するなら、30歳くらいにお互い独身のまま。

そんで結婚する。(妄想が止まらない)

< スポンサーリンク >    

大学生のお話なのですが、若い彼らに無縁そうな「死」も描かれています

その部分が、彼らの「何のために生きているのか」という葛藤をより一層強く際立たせているように思います。

青くキラキラ輝いているようで、まあまあダークな面も持ち合わせているお話なのです。

彼らの大学4年間は、波が激しくて、深いのです。

きっと年老いた時にも、ずっと記憶の片隅に居座っていることでしょう。

 

「若者は自由でなくてはいけないが、もうひとつ、潔癖でなくてはいけない。自由と潔癖こそ、青春の特権ではないか」

(下)本文P134より

汚れのない、素直でまっすぐな青い心。純粋さを保った心。

大人になれば良くも悪くも汚れてしまう。

青くさい心を持っていられるのは、青くさいことを言っていられるのは若いうちだけだ。

それこそが、周りに眩しさを魅せる。

ませすぎて心が汚れた若者より、素直な若者の方が素敵だし、青春をしっかり謳歌しているなと眩しく見えますからね

 

宮本さんのすごいなと思うところは、人物の描き方ももちろんそうなのですが(さっき書いたね)情景描写が美しすぎるところです。

その情景描写だけで絵になる。酔える。

特にそれぞれの場面の幕引きに描かれる情景描写がすごくきれいで、その度に見惚れて、お話の余韻を残します

ロマンチックなのです。

 

ここまで来て、このお話のメインを全く語っていませんが(おいおい)

テニスの試合もかなり白熱シーンがありますので、テニス経験者はもっと楽しめるかと思います。

 

最後に

特に下巻から、彼ら彼女らの心の荒波がすごくて惹きつけられました

現役大学生に響く作品であり、かつて大学生であった大人たちにも響くであろうと思います◎

< スポンサーリンク >